0日目
天使様から異世界作って、と言われた私はいくつかの問答の末、お役目を引き受けることになった。曰く、善性があっても企画能力、運営能力が足りずに任せた世界が頓挫する人が多かったところに、ほどほど企画立案、運営がうまそうな私が転がり込んで来たのだそうだ。なんだそれ。
とはいえ、楽しそうだとも思った。だって自分の采配でどんな世界にするかは決めていいらしい。ある程度の制約さえクリア出来ればそれでいいらしく、上から、今回の場合は天使様からだが、色々注文つけられたり企画を突っぱねられたり突然方針が変更されたりということはないらしい。
本当に、そこが一番重要だった。上司の気まぐれや取引先の思いつきで、九割がた出来上がっていた企画が白紙に戻されることを経験してきた身だ。最初の企画書提出の段階で守るべきことを守っていれば、あとは自由にやっていいっていう方針なのは、私にとって最高の条件だ。もちろん企画通りに進んでいるかの定期的な監査は入り、もし出来てない場合は修正が必要になるそうだけど、それは企画運営では当たり前なので問題ない。死ぬ前に任されたプロジェクトを達成できなかった分、ここでしっかりやってみたい。
天使様から渡された資料には守るべき条件がいくつか示してあった。
一つ、異世界を作成するにあたり、現地人をただのモブとして扱うことがないよう、転生者との差を大きく出しすぎないこと。転生の際にチートをつけるけど、それでも転生者一強にならないようバランスを考えるってことね。
二つ、あまり過酷すぎる世界にしないこと。最初からポスト・アポカリプス状態とかディストピア状態の世界なんてあまり転生したくないもんね。すぐに転生者が死んでしまいそうな環境もダメということで、よくある魔物が強すぎるとかも控えた方がいいらしい。
三つ、異世界作成後は基本的に現地人が自主的に世界を回すので、あまり運営側が神として口出ししなくても済むように初期設定をちゃんと練ること。確かに神がいちいち神託下して回すような世界だと面白くないよね。
というわけで出された以上三つの条件を守った上で世界を構築したらいいらしい。ちなみに企画提出期限は七日間、キリスト教の旧約聖書に倣い他の天使様もこの期間で作成しているらしい。極道納期じゃん。
とはいえ、七日間という限られた時間でどこまでやれるか楽しみでもある。さてやるぞ、と気合を入れて自分専用のデスクに向かった。
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