第2話「私の魔力はどんなもの?」
魔力測定がうまくいかなかった……それどころか、魔力を測ることができる至宝“大魔晶玉”を粉砕してしまった。
大変なことをしでかしてしまったけれど、私が罰されるということはなかった。
これは、私が王女だからということもあるのだけれど、それ以上にお父様と叔父様が各方面へと手回しをしてくれたためである。
しかしながら、大魔晶玉の代わりとなる魔晶を探すために国をあげて魔晶採掘を行うことになってしまったらしく、叔父様たち魔法省の方々は頭を抱えていた。
なにせ大魔晶玉は、五十年に一度あるかないかというくらい大きく美しい魔晶だったのだから……。
多くの人に苦労をかけてしまうと思うと、とても気が重い。
だから、朝食のテーブルへと向かう足取りも重くなる。
「おはようございます……」
「おはようラピス」
「えっ!おじさま!?」
叔父様はたしか、採掘候補地を検討するために魔法省で会議をしていると聞いていたのだけれど……。
お父様、お母様とともにテーブルについているではないか。
「ああ、ラキロ叔父さんだよ」
叔父様は、ひらひらと手を振りながら驚く私に応える。
「……たしか、たいせつなかいぎがあるって……」
「それなんだがね、もう大丈夫になったんだよ」
「そうなのですか?」
大丈夫になった……って、どういうこと?
まさか昨日の今日でもう、魔晶採掘の目処がたったの?
まだまだこの世界のことをあまり知らない私ですら、あの大魔晶玉が大変貴重なものだとはわかっている。
その代わりが簡単に見つかるなら、みんなあんなに慌てなかったと思うけど……。
「私も報告を受けて驚いたんだが……詳しくは兄上がお話してくださるよ」
「おとうさまが?」
お父様の方を見ると、嬉しそうに笑っている。
「実は、隣国で巨大な魔晶が採掘されたらしくてね。終戦から十五年が経過した記念の式典の際に、記念品としてうちに贈っていただけることになったんだ」
「りんごくが……ですか?」
「ああ、アグル殿と昨夜、魔道通信で話をしていたら、すぐに手配すると仰ってくださったんだよ」
アグル・スティーリア、隣国“スティーリア帝国”の皇帝。
王女としての教育はまだまだなのだけれど、隣国であるスティーリア帝国との関係はすでにお父様たちからちょくちょく聞いている。
彼は、十五年前に自身の父親である先帝を打倒し、二年も続いていたトルマリーヌ王国との戦争を当時王太子だったお父様とともに終結に導いたという。
お父様とはよき友であり、深い親交があるらしい。
私も様々な式典でお見かけしたが、白銀の髪と金の瞳がきらきらとしていてカッコいい人だった。
まあ、その時私はまだ赤ちゃんだったので本当に見ただけなのだが。
「よかったです……わたし、みんなにたいへんなおもいをさせてしまうって……」
「ラピス……なんて優しい子、安心していいのよ。みんな、あなたのせいだなんて思っていないわ」
「おかあさま……」
お母様は、私をぎゅっと抱きしめてくれた。
「ところでラキロ、ラピスに用があると言っていたが?」
「わたしに?」
「おっと、そうだった!昨日はラピスの魔力を測れないままになってしまったからね、私の方で簡易的に調べようと思ったんだよ」
「おじさまが、ですか?」
たしかに、私の魔力は“測定不能”という
しかし、叔父様が調べるとはどういうことなのだろう?
「私は魔法省長官を任されるくらいには優秀な魔導士だからね。魔法を見ればその人の魔力がある程度はわかるんだ」
「す、すごい……」
「魔導士として王国最高位に就いているのは、王弟だからというわけではないのさ。見直したかい?」
「み、みなおすなんて……わたしはおじさまがすごいひとだって、わかってますよ?」
「おお……!やはりラピスは聡明だね。とてもまだ三歳とは思えないくらいだ……いい意味でね」
今年で十七になります、前世と合わせてだけど。
「ということで、ラピス。今日は魔法省に来てほしいんだよ」
「……ちょっと待ってラキロ」
お母様が待ったをかけた。
その顔は、すこし強張っている。
「魔法省に、ですって?それってあの実験場のことかしら?」
「ええ、義姉上。その実験場ですよ。未知数の魔力を持つ者にはもってこいの場所ですから」
「じっけんじょう……ですか?」
「あんな危ない場所にラピスを連れていくなんて……では、私も共に行きます」
「義姉上も、ですか?まあ構いませんが……そちらの公務の方はよろしいので?」
「ええ、今日は………………大したものはありませんから!」
「え……サフィア?今日はたしか」
「トルキス?大した用はありませんよ?」
「あ、ハイ、ソウデスネ……」
お母様、絶対何か大した用事がある気がします。
お父様が昨日の大魔晶玉破壊事件の時くらい青くなってますよ。
「おかあさま、わたしだいじょうぶだよ?」
「ああラピス……あなたのその勇敢なところも優しいところもとても素敵。でも今回ばかりはひとりにはさせられないわ」
「私の職場なのですがずいぶんな言われようですな……まあ、確かに爆発くらいはしますけど」
「ばくはつ、するのですか」
「まあ、たまに?」
「だから心配なのです!絶対についていきますからね!」
「サフィア……できればなるべく早く戻ってきてね……」
そんなわけで、私たちは魔法省の一区画に設けられた魔法実験場へとやってきたのでした。
実験場と呼ばれているけど、的にする人形や動物の模型が置いてあって、まるで軍の訓練場のよう。
しかし、あちこちに見られる焦げ跡や地面の穴ボコに、行われた実験の壮絶さがうかがえる……。
「ここが我が魔法省の実験場だよ。いくらでもぶっ壊していいように多重対魔障壁が展開されているから、安心して魔法を放つことができるんだ」
叔父様……普段ここでぶっ壊れるような魔法が使われているってことですか。
「ラピス、やっぱり帰りましょうか」
「……いえ、わたしやってみます」
「本当に?……では、見守っていますよ」
「ああ義姉上、あなたにはまず見本を見せてやってほしいのですが」
「えっ?私が?」
「ええ、義姉上もとても優秀な魔導士ですし、それにラピスと近い魔力性質を持っているが可能性が高いでしょう?親子ですからね」
「ふーむ……一理ありますね。わかりました、手本を見せましょう」
魔力性質というものは、どうやら遺伝するものらしい。
本格的に教育が始まれば、こういうことも学んでいくのかな。
私の魔法の知識は前世のもので止まっているし……それもめちゃくちゃ特殊な部類だろうな。
そんなことを考えているうちに、お母様は実験場の真ん中辺りにある人型の的の前に移動していた。
「ではラピス、今から魔法を使いますよ」
「はい、しっかりみます」
「ええ。この母の勇姿、ばっちり見本にしてね」
思えば、この世界で魔法が使われるところを見るのは初めてかもしれない。
なんだかワクワクしてきたな。
異世界転生魔法少女ラピス・ラズリ N極S極 @magmagnet
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