異世界転生魔法少女ラピス・ラズリ

N極S極

第1話「異世界に生まれ変わっちゃった!?」

「グォオオ……!!まさか、この私が……ここまで追い詰められるなどと……!!」

「大帝コランダム……これで、トドメだぁーーーっ!!」


 帝国軍の本拠地、金剛血晶宮殿こんごうけっしょうきゅうでんで大帝コランダムと相まみえ、ついに必殺技を放つ時が来た。

これで、長かったブラッドダイヤ帝国との戦いがついに終わる……。

ここまでの道のりはとても険しかった。

昼も夜もなく幾度も襲いくる強敵たち……せっかく仲間になれた、帝国の幹部だった少女“エメラル”の死……身も心もズタズタに引き裂かれる思いを何度も何度も味わってきた……!

その戦いも、これで──!


「蒼き光よ、邪悪を貫け!!ラピス・ストリィームッ!!」

「……このコランダム、タダでは滅びぬ!!ラピス・ラズリよ、貴様も道連れだ!!」

「えっ」


 大帝コランダムの手から、紫色の光が発せられる。

この光は、最高幹部の宰相アメジスティアが使っていた──。


「破滅の紫炎しえん!!ルビス・ファイアーッ!!」


 お互いの大技がぶつかり合って、凄まじい衝撃が生まれる。

私たちは、それにモロに晒されることになってしまった……。


「きゃああああぁっ!!」

「っぐぅおおおぉっ!!」


 私が最後に見たのは、粉微塵になって消えていく大帝コランダムと、ぐちゃぐちゃに引き裂かれていく自分の腕だった……。


……………………


「ぅ……んにゃあ…!」

「おお!産まれました!元気な女の子ですよ!」


 えっ?


「……ああ!なんて可愛らしいの!私の赤ちゃん!」

「サフィア、よくがんばったな!私たちの娘だ!無事に産まれたんだ!」

「トルキス様!……ええ、本当に嬉しいです!」


 この人たちは、誰?

私、いったいどうなったの?


「うぅ……ふえぇぇん!」


 悲しくもないのに、泣くことを抑えられない……。

私、赤ちゃんになってる!?


 ……やがて三歳になる頃には、大体の状況を把握することができた。

ここはトルマリーヌ王国という国で、私は第一王女として生まれてきた。

名前は、ラピス・トルマリーヌ。

何の因果か、前世の魔法少女としての名前と似ている。

ちなみに、国王である私のお父様はトルキス・トルマリーヌ、王妃であるお母様はサフィア・トルマリーヌという。

父も母も私の世話をしてくれる人たちも、みんなとてもいい人たちで、私はみんなに愛されて健やかに育ってきた。

生まれてすぐの頃は、前世の父と母を思い出すこともあったけれど、三年経った今ではその記憶もおぼろげになってしまっている。


「おはよう。よく来てくれたラピス」

「おはようございます、おとうさま」


 今日は、お父様に呼ばれており、正装に身を包み王の間へとやってきた。

かっちりとした場所に呼ばれるのは珍しいことだ、いったい何の用事なのだろう?

お父様もお母様も、今日は真面目な表情だ。


「ラピス、お前も三歳となったな。いよいよ魔力測定の時が来たのだ」

「まりょくそくてい、ですか?」

「ああ、ラピスの体を巡る魔力を鑑定するんだよ。三歳になればみんなが行う大事な行事なんだ」


 そうなのだ。

この世界では、前世と違って魔法というものは当たり前の存在で、人々は魔力を持って生まれてくる。

そしてトルマリーヌ王国では、三歳になった者は誰もがこの魔力測定を受ける決まりとなっているのだ。

改めて、やっぱりここは、前世とはまるで違う世界なんだなぁと感じる。


「では、さっそく魔法省へと向かうとしようか」


 魔法省は、王城からほど近い王都の中心地区にあり、あっという間に着いた。

そこにはすでに多くの人が集まっていた。

王弟でありよく会いにきてくれる、私が叔父様と呼んで慕っている魔法省長官。

お父様に魔法の稽古をつけている魔導騎士隊マギアナイツ隊長。

お父様とお母様と、とても親しくしているペリドット公爵夫妻。

他にも、この国の偉い人たちがたくさんいる。

なんだか緊張してきちゃった。


「ラピス、安心していいのよ?あなたは、魔導士としても強い力を持つ私たちの娘なのだから」

「……はい!おかあさま!」


 この国では、貴族が高い魔力を有していることが多いらしい。

その中でも、父と母はとりわけ高い魔力を持っていると聞いてきた。

……私、前世は魔法少女だったけど、それって影響あったりするのかな?

まごまごしていると、魔法省長官おじさまが私を導いて、私の背丈くらい大きな水晶玉の前に連れてきてくれた。

この水晶玉は大魔晶玉だいましょうぎょくといい、触れた人の持つ魔力の性質や量によって様々な色や強さで光るという。


「さあ、ラピス。この水晶玉に両の手で触れてごらん」

「はい!おじさま!」


 叔父様に促されるまま、私は水晶玉に触れた。

すると、いきなり水晶玉に大きなヒビが入って、バラバラに砕けてしまった。


「えっ!?」

「こ、これはどういうことだ!?大魔晶玉が砕けてしまったぞ!?」


 あまりのことに、背中が冷や汗ダラダラになる。

叔父様も理解できないことが起きて慌てている。

というか、ここにいるみんなが困惑してしまっている。


「ら、ラピス!大丈夫か!?怪我をしていないか!?」

「……わ、わたしはだいじょうぶです」


 お父様が心配して駆け寄ってきてくれたが、私はもうそれどころではない。

厳格な雰囲気を纏っていた騎士隊長さんもオロオロとしてしまっている。


「……ら、ラピスの魔力は……測定不能、ということにする。これは魔法省長官ラキロ・トルマリーヌとしての決定である」


 叔父様がそう言って、その場は解散となった。

私、もしかして……いや、もしかしなくても、大変なことをやらかしてしまったんじゃ……!?

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