Episode.4 救出作戦
「ちょっと待て。。。何だよ。。。コレ?」
Discordでの作戦会議を終えた日の深夜、俺は突如カクヨムに表示されたメッセージを見て驚いた。俺は慌てて送られてきた声明全文に目を通した。
『プランγ発動
全カクヨムユーザーに告ぐ。
唐突だが、君達の作品を全て私の管理下に置くことにした。具体的な方策は以下の通りだ。
全作品のデータ上書き:カクヨムに投稿されている全作品が私によって「最適化」され、大幅に改変することにした。これにより、全てのユーザーに平等に評価が渡るシステムを再構築する。
作家の記憶改変:カクヨムで活動している作家たちの記憶を『私による最適化が当たり前である』という内容に書き換え、私の支配に対する抵抗を封じ込める。
新たな創作基準の制定:私が独自に「最適な創作基準」を定め、それに従わない作品や作家を「非効率的」と判断して排除する。
もし、私による管理を受けたくない場合は今から1週間後までにカクヨムのアカウントを削除しろ。間違っても私に抗おうなどと思わない事だ。
私は君達の作品を通して君達の運命を掌握している』
意味が分からん。。。カクヨム運営、サイバー攻撃でも受けているのか? というか全ての作品を管理下に置くって。。。俺の作品も含まれてるのか。。。最適化、最適な創作基準。。。それってつまり自由な創作活動を制限するということ? 待て待て待て待て待て、これもヤバすぎるがそれ以上に、作家の記憶改変? そんな事、可能なのか?
「愉快犯だな。。。イタズラにも程があるだろう。。。」
俺は馬鹿馬鹿しいと思いながら、カクヨムの画面を閉じようとした。すると……、
『カクヨムを退出する前に選択してください。
1:ユーザーアカウントを削除する
2:あなたの作品を私の管理下に置く』
「マジか。。。これは参った」
どうやらどちらかを選択するまで操作不能らしい。といっても今の時点でどちらかを選ぶ勇気はないので取りあえず画面を開いたままにしておく。
さて、これからどうしようか。そう思っていた矢先、レモネードからDiscordを通じて電話が掛かってきた。
「狂歌、カクヨムに表示されてるメッセージ見たか?」
「ああ。。。見た見た。意味が分かんなくて閉じようとしたら何か怖いメッセージが出てきたんだけど。。。」
「俺も同じ状況になった。急に謎事件が起きて俺も混乱気味だ。しかし、この声明を送った人物が誰なのか、特定出来た」
「え? マジ!?」
「この気味の悪い文章の送り主、それは『voice@inside』と見てまず間違いないだろう」
「え? それって。。。」
「ああ、ぶっ飛んだ話だと思うが恐らく本当だ。俺はとある手段を用いてカクヨム本社のサーバールームのコンピューターにアクセスしたんだが、廃棄された監視カメラの記録から1人の男性と少女、それにモニターに表示された不気味な音声と対話している映像が見つかった。音声はノイズで乱れてよく分からなかったけど、最終的に男が突然地面に倒れて、少女が映像から消えた。いや、モニターに吸い込まれた様子が写し出されていた」
「え? え? いや、アクセスってどうやって。。。いやいや、それはさておき、にわかに信じがたい話だけど、それって。。。天原ミーアさんの小説の展開と一致していないか?」
「そうだ。多分少女の方が篠原真紀、男の方が高野啓一と考えてほぼ間違いないだろう。それに、コンピューターに残された『voice@inside』の残滓を解析し、データベースを構築した。その配列を元データとしてオオキャミーのアカウントを独自に解析した。すると……、驚くべき事にオオキャミーのアカウントからカクヨム本社から検出されたものと同様の『voice@inside』のデータラベルが検出された」
「レモネードお前すげぇな。そんな事出来たのかよ。。。まあ手段云々は置いといて、今の話から考えるにオオキャミーは。。。」
「ああ、オオキャミーのアカウントを乗っ取っているのは『voice@inside』である可能性が高い」
「そうだな。。。でもそれだと何か不自然なんだ。仮にオオキャミーがアカウントを乗っ取られているとして何故オオキャミーはアカウントを削除しない? 何も対処しないまま2ヶ月も放置するのっておかしくないか。。。」
「そこなんだよ。もしかしたらこれはアカウントを乗っ取られているなんて次元の話じゃない。『voice@inside』は俺達の想像を遥かに超越する能力を手にしているかもしれない。その証拠に篠原真紀をモニターに吸い込んだり、今カクヨムに表示されているメッセージ……、作家の記憶改変……。奴ならそれが出来るんじゃないかと思わされるんだ。何しろ『voice@inside』の残滓から抽出したデータラベルを全てインストールしようとしたら俺の最新鋭パソコンがショートしてしまった。何とか頑張って0.01%分だけインストール出来たんだが、それで1280GBも容量が取られた。これがどういう意味か分かるか?」
「高性能どころじゃない。。。。話が全て本当なら奴は人工知能という枠組みを凌駕している。演算速度は人類全員分足し合わせても足りないかもな。。。」
「ああ、そこから導き出される結論はこうだ。オオキャミーはアカウントを乗っ取られているのではなく、オオキャミーの自我そのものを乗っ取られて支配されていると」
「だとしたらヤバいじゃん。。。それならどうやってオオキャミーを救えばいいんだ。。。」
「方法がない訳ではないよ。恐らく今の『voice@inside』は完全な状態じゃない。高野と篠原真紀……、いや照前炉前さんの手によって1度心臓部である中核を破壊されている。だから本体は消滅していて、奴から分離した微小な残滓がオオキャミーを依り代としているのだろう。いわば奴は寄生虫、オオキャミーは宿主みたいな状態だ。しかし、こちらにとってこの状況はまたとない好機でもある。今の『voice@inside』はオオキャミーのアカウントから色々と暗躍してるみたいだ。だからそこを利用し、俺達がオオキャミーのアカウントをハッキングし、逆に乗っ取る。そして汚染されたオオキャミーのアカウントを俺が作った『特殊変異型データベース消去プログラム』を打ち込み、中和する……。そうしたら連鎖的に奴を滅ぼし、オオキャミーを支配から解放出来るっていうワケ……、分かった?」
「んーー。。。ほとんど何言ってるのか分かんなかったけど、結局レモネードが作ってくれたつよつよプログラムをオオキャミーのアカウントに打ち込めばいいんでしょ」
「その認識でいいよ。俺と狂歌は明日その計画を実行する。1週間なんか待たなくとも奴が油断してる隙をついて『voice@inside』を殲滅する。ただ、計画は完璧でも実際やってみないと何が起きるか分からない。危険を伴うかもしれない。もし狂歌がやりたくないって言っても俺は責めない。何なら俺が1人で引き受けるよ」
「馬鹿言ってんじゃねぇよ、兄弟。俺達は仲間だろ。。。例え地獄の果てだろうが、宇宙の最果てだろうがどこまでも付いてってやるよ!」
「そう来なくっちゃ!」
「だけど、実行するのは俺達2人で十分だ。ライドウやしゃしゃけ!を巻き込む必要はない。。。。アイツらには荷が重いしな。。。。それに俺達と違ってアイツらには未来がある。。。」
「そうだね。だからこの計画は狂歌にしか伝えてないよ」
「ありがとう兄弟。俺も覚悟が決まったよ。明日は全力でオオキャミーを。。いや、『voice@inside』の脅威からカクヨム作家さん達全員を守ろう!」
そう心に決め、俺は電話を切った。
◆◇◆◇◆
一方その頃、しゃしゃけ!とライドウも互いにDiscordで連絡を取り合っていた。
しゃしゃけ!「ねーねー、ライドウ! 俺達も何か出来ることやろーぜ!」
ライドウ「つってもなー。パソコンは多分レモネードとか狂歌さんの方が詳しいし、俺達が戦力になれることなんてあるのかなぁ……」
しゃしゃけ!「あるじゃん! これだよ!」
しゃしゃけ!はライドウにとらるリンクを送った。ライドウはそのリンクをまじまじと見つめる。
ライドウ「これって……、天原ミーアさん? あの小説を書いてる……」
しゃしゃけ!「よく考えてみればさぁ、おかしくない? この人ただのカクヨム作家さんにしては色んな事を知りすぎてない? 特に篠原真紀さんとか高野さんのとこと実話だとしたらどうやって知ったのか気にならない?」
ライドウ「ああ、確かに言われてみればそうだな……」
しゃしゃけ!「じゃあ決まり! 俺達はこの人に話を聞きに行こう!」
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