夢心地

僕は困惑しすぎていた。それは、急に僕のことを杠さんが遊びに誘ったからだ。普通、お礼と言ったらお菓子くれるくらいの感じだと思っていた(というか、僕がお礼しないといけない方な気がする)ので急に誘われて、すごく困惑していた。でも、小言などを言い合いながら一緒にテスト勉強できるくらいの仲にはなっていた(相手が優しかっただけだが)。

「ふぅー」

そうやって息を吐きながら僕は目的の場所に行く。今日は駅近のカフェで昼ごはんを食べその後ショッピングモールでも行こうか?といった感じだ。そうして目的地のカフェに着くと、

「こんにちは」

そこには杠さんがいた。杠さんはいつもどちらかと言えば静かな感じだが、私服はとても女子高生っぽいキラキラとしたものだった。なんという名前なのか分からない白色のシュッとした服に短いデニムパンツを纏っていた。僕はダサくないかななどと思いながらカフェに入ろうとする。

「私服いいね」

「そう?ありがとう」

その顔は満更でもない感じだと思う。

「じゃ、入ろ」

そう言って扉の鈴を僕は鳴らした。そして店員さんの言う通りに2人席に座った。

「まず、ありがとね。テスト」

「いやいや、逆に杠さんのおかげで僕めちゃくちゃ上がったから成績」

でも、僕は昨日一気に全部返ってきた成績を少し見せて貰ったので知っていた。杠さんがテストで2位を取っていたことに。こんな高いの?と驚いて聞くと僕のおかげでいつもよりだいぶ上がったと言っていた。が、ちょっと上がったとかそんなレベルなのか?と思っていた。

「それなら良かった!」

そう言って微笑む杠さんはまさに才色兼備だった。

「何頼む?」

「これにしようかな」

杠さんは小さめのプレートを選んだ。

「ところで、いつも杠さんってさ休日何してるの?あ、部活?」

「いやさ、実は...部活辞めちゃったんだよね。」

「ふーん、どう言えばいいかわからんけど、まぁ高校生活大変だし。」

「そうだね、なんかごめんね。気遣い...」

「そんなそんな、もっと色んなこと聞きたいし。杠さんは自然体でいいよ。」

自分で言っていてなんだが今の僕は全然自然体になれていなかった。もっとリラックスしないとな。

「じゃあー」

そう言って杠さんは1泊置く。

「野村くんって好きな子いるの?」

「え」

バレたのか?いや分からない自分でもこの気持ちがわかりきってはいないのだから。

「わかんない...かなぁ」

「なにそれ」

そう言って杠さんはまた微笑んだ。そんな会話をしていると、気づいたら僕のパスタセットと、杠さんのプレートが届いた。

「ねぇ1口くれない?」

半分くらい食べ進めていたところで彼女はそう言った。

「もう余裕で口付けてるけど大丈夫?」

「大丈夫」

そう言って一口だけ彼女は口に運んだ。

「おいしい~、このプレートもすごくおいしいけどね。」

「そうなんか、また食べてみようかな。」

1口頂戴なんて僕は言えなかった。

「じゃあ買い物でも行こうか!」

彼女はそんなことを言って席を立った。お金は割り勘だった。おごろうとしても許されなかったから。

「ごちそうさまでした。」

そう言って今度は杠さんが扉の鈴を鳴らした。その20秒ほど後だった。軽自動車が僕たちに衝突し、僕たちは文字通り吹っ飛んだ。

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