始まりの季節②

体育館からは学年ごとに人々が流れ出ていた。その中で2年の中で1番早い2年1組、特に最後尾にいた僕は2年生教室へと歩を進めた。

「そんでどうなんだよ」

教室のある棟までの短い廊下でこいつは聞いてきた。

「なにがなにが」

「いやだから絶対好きやん、」

「は、だからそんなわk」

そこで僕は盛大に噛んでしまった。

「笑笑笑まぁいいけどね~」

まさしはそう言って先に教室に入っていった。

「よし、じゃあ今日から担任となる~」

そこでその男は告げた。

「吉田です!担任を持つのは2年ぶりなんですけど、え~頑張っていこうと思うのでよろしくお願いします。」

吉田先生...ねぇ。どんな先生だか、

「じゃあ自己紹介していこうか~。よし、じゃあ。」

「素数番号からかな。」

先生の前のほうに座っていたまさしがそう言った。

「わかった、素数からだなぁ、じゃあ井口から。」

「え!?じゃあえっと、出席番号2番の井口かおりです。」

そうして自己紹介が始まった。というか、さっきのバド部らしき子は井口さんっていうのか。っと、そのままぼぉーっとしていると、やっと僕の隣の人の自己紹介が始まった。

「出席番号31番のゆずりは夏羽なつはです。ハンド部に所属しています。好きな教科は英語です。」

英語か、僕が1番苦手な教科だ。

「1年よろしくお願いします。」

そこで、素数番号の自己紹介が終わり、素数じゃない番号の自己紹介が始まった。そして、すぐに自分の番号は来た。

「25番の野村なおです。陸上部です。得意教科は数学です。よろしくお願いします。」

なんかテンプレみたいなもんが出来上がっていたのにもかかわらずすごく緊張してしまった。まぁでも変なことは言っていないはずだ。32人いるこのクラスは基本的に6×5の座席の形だが2人分、最後の2列は出っ張っている。その出っ張っている2つの席の前がゆずりはさんと僕だ。左後ろ側という割と完璧な座席を僕は手に入れて正直満足だった。しかも、隣も…まぁすぐ席替えするだろうが。

「野村くん?」

「はい、なんですかい」

急に話しかけられたが至って平然と返す。

「あの、ペンは?」

「へ、」

やばい完全に忘れてた。

「どうぞ、本当にありがとうございました。」

「どういたしまして、また何かあったら言ってね。」

そう言うと、また杠さんは前を向いた。見れば見るほど清純な感じがする。吸い込まれてしまいそうな黒髪をできるだけ意識しないように僕も前を向いて英単語の勉強を始めた。もしかしたらいつか杠さんに教えてもらえるかもしれないなどという淡い期待を持ちながら。

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