恋セヨ乙女~a girl and vampire~

三日月マオン

プロローグ~命短シ恋セヨ乙女~


 そう遠くはない、昔。

 1人の少女と1人の少年がいた。

 少女は異能者の一族の家に生まれ、少年は吸血鬼の一族の家に生まれた。


 幼き日の少女は、病床にあった母親からある話を聞かされる。


「乙女、よく聞いて。あなたの『時間』はあまり長くない」

「じかん?」

「あなたが20歳になった時、一度終わってしまうの」

「おかあさん……?」

「でも、きっと大丈夫」

「あなたが──を諦めなければ、大丈夫だから」

「必ず幸せになって。ずっと見守っているからね」


 その後、少女の母親は息を引き取ったのだった。


 一方。幼き日の少年は、厳格な父親からある話を聞かされる。


「いいか、聖。我々は人間の生き血を吸わなければ死ぬ」

「なぜですか? 父上」

「ぼくたちが生きていくために、なぜにんげんの血がひつようなのですか?」

「それが、我々一族の寿命をのばす唯一の手段だからだ」

「我々は人間を犠牲にすることでしか生きられない。故に人間と交わってはならない」

「闇と同化し、ひっそりと生きろ」


 その後、成長した少年は掟を破って一族と決別することとなる。


 これは、交わってはいけない少女と少年が恋に落ちる物語。

 残酷で優しい、青い春の物語。

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