エピローグ 華恋視点
「おーい!いるー?」
卒業式が終わって、私は幼馴染の家に夕飯のお裾分けに来ていた。お母さんが準備してたって言っても一応なんか届けてあげなさいって言ってたから、タッパーにいろいろ詰めて尋ねてきた。私が体調崩した時のために合鍵はもらってたから、それで入ってきたけどいくら声をかけても反応がない。
「これは自分の部屋で寝てるな」
そう思い、何も置かれていないリビングのテーブルにタッパーを置き、部屋に向かう。
「おーい!お裾分けに来たよー?」
部屋のドアを開けてそう呼びかけるも反応がない。それどころか、部屋の中も寒く、どうしてもいるとは思えない。春に近づいていると言ってもまだ冬に近い寒さなため、この寒さで寝ているとは思えないが一応電気をつけて確認に入る。入ると、1番に出てきたのは驚きだった。いつもより片付いた勉強机にポツンと置かれたスマホが際立っていて、ベッドに何もかけずに横たわっていた。私はその様子に慌て、急いでお母さんたちを呼びに行った。みんなでもう一度来ると、今すぐに救急車と言ったのでスマホですぐに呼んだ。確かに顔色が悪いようにも見える。見逃していたが、床には血がついていた。しばらくして、救急車が到着し、彼が運ばれていく。付き添いはお母さんたちに任せ、私は勉強机の上のスマホが気になったので見てみようとした。案の定ロックがかかっていたが、ロック画面に「華恋の誕生日」という文字があったため、その数字を打ち込むと、パスワードが解除され、アルバムのアプリが立ち上がり、一つの動画が表示される。私はなぜかはわからないけど、その時は吸い込まれるように再生ボタンを押していた。
『華恋へ。まずは卒業式おめでとう。念願だった姿を両親に見せれてよかったね。大学の姿も見せれるといいね。次に多分今1番気になってることを教えてあげる。結末から言うと、神様はいたみたいだ。実を言うと俺はあんまり信じてなかったんだけど、願ってみたら本当にかなっちゃったんだよね。その時の願いがね、俺はどうなってもいいから華恋の願いを叶えてくれって願ったんだ。多分急に倒れててびっくりしたよね?多分これが俺への代償なんだと思う。でも俺は満足してるから、あんまり気負わなくていいからね?もし納得できないようなら俺の名前の漢字を思い出してごらん?佑っていうのは人を助けたり思いやりって意味があるんだって。だからその名前をつけてくれた母さんたちのいうとおりにしただけ。俺がそばに入れなくなってもずっと見守ってるからいろんな経験をその元気な体でしてください。それは俺の最期の願いです。最後に、華恋今までありがとう。いつも華恋の部屋で華恋と話す時間が楽しみだったんだ。きっとこれから生きてたとしてもあれ以上の喜びはないと思う。華恋もそう思ってくれてたら嬉しいな。じゃあ元気でね。バイバイ。」
それを流して途中で涙が出てきてしまい、途中からはほとんど聞けてない。けど大事なところは聞けた。そして、私のスマホにも一つのメッセージが送られてくる。お母さんからだ。佑が亡くなった。そんな意味のメッセージだった。私のために佑が犠牲になった。それだけは、分かった。充分だった。私が一日中泣き、しばらく部屋から出られなくなる理由としては。
一週間後。
明日には佑のお葬式がある。でもどうしても参加しようという気にはなれない。どうしても、その時の動画が残ってしまっている。そこで、ふとそういえば途中から聞けてなかったな、と思い、しっかり最後まで聞くべきだなと思って再生を始める。
涙が出てくる。前とは違う理由で。
「ひっぐっ、当たり前だよぅ、私も楽しかったよぅ。佑と話すのが1番楽しかったよぅ」
今回のは嬉し涙だった。私はいつも自分に付き合わせてしまっていると思って過ごしていた。でも、その時間が楽しかったと言われて嬉しくないわけがない。でも最後まで今回聞いて、決心がついた。
「ちゃんとお葬式に参加して元気な姿を見せなきゃ」
それはもはや私の宿命みたいなものだった。
翌日。
「佑。ありがとうね。私も毎日佑と話せて楽しかったよ。これから私は元気に生きていくから見守っててね。」
そういうと、「分かった」という声が聞こえてきた気がして、私はゆっくりと笑いながら涙を流した。
これにて終了となります。隙間時間の息抜きに溜めていたものを出した感じですので連投になりましたが、一応感動ものとして書いたつもりですので感動してくれたら嬉しいです。
神を信じない俺が唯一神に願ったこと 柊星海 @comicwalk
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