第18話 討伐依頼
ふわぁぁあ、よく寝た。
昨日は魔獣狩りに
何よりこのベッドですよ、ベッド。
藁の上とはやっぱり違う。
寝心地は最高でした。
顔と体を触ってみる。
まだ仮面の効果は持続中のようだ。
一体いつまで女の子に変身していられるのだろう?
今日は馬小屋に戻って討伐依頼を受けるつもりなので、その時に一度元に戻るから時間的には一日半か二日ぐらい?は保つことになるのだろうね。
くぅぅぅぅ
お腹の音が鳴る。
昨日あんなに食べたのに朝になったらお腹は空くものだ。
僕はちゃんと生きている。
健康って素晴らしい。
食べ物が食べられる内は大丈夫、むかし誰かがそんなことを言っていた気がする。
この若鳥亭は朝食が付くと昨日宿屋の主人が言っていたし食堂に行ってみよう。
「おはようお嬢ちゃん、朝食は食べるかい?顔が洗いたいならお湯か、冷たいのでいいなら井戸もあるから自由に使ってくれ」
食堂に行こうとしたらカウンターにいる店主に声をかけられた。
ここでは無料で水も使えるようだ。
「ええ、おはよう、朝食を頂くわ。それで井戸はどこかしら?」
「井戸はそこの裏口から外に出たところだよ」
「じゃあ、借りるわね」
井戸か、初めて使うな。
しかし水も自由に使えるのは気前が良い。
このサービスは宿泊者限定なのだろう。
裏口から外に出て井戸で四苦八苦しながら水を汲み上げようとしていたら宿屋の従業員の一人が手伝ってくれた。それで水を確保し顔洗う。
その時にこの状態で顔を洗っても意味はないんだけどなぁ、と思ったが従業員が見張っているので何処かに行ってくださいとも言えなかった。
仕方なく女の子の格好のまま顔を洗って、直ぐに食堂に向かった。
朝食はパンとスープ。あとは肉の入った野菜炒めだった。すごく美味しいわけではないが、いつもの肉パンよりは豪華な食事だ。
フォークを使って味わいながら朝食を済ませた。
「同じ部屋に十泊、お願いできるかしら?」
部屋に戻り、使わない服は置いて行く。
それから必要な荷物を持ってカウンターにいる店主に話しかけた。
「この宿屋を気に入っていただけたようですね」
「ええ、まぁね」
「では銀貨四枚と銅貨三十枚になります」
「じゃあこれで」
僕は宿屋で十泊分の支払いを済ませて、女の子の姿での宿を確保して馬小屋へと向かった。
見つからないように馬小屋に一旦寄って、仮面を取り変身を解いて玩具送還をして自分自身の姿に戻った。
「お金を余分に払ったのに、そういえばお湯をもらってなかった」
次からは朝にお湯をもらって仮面を外し、男に戻ってから部屋で体を拭くのが良いかもしれないと考えた。
うん、そうしよう。
僕は着替え、脱いだ服は馬小屋に置き、ギルドへと赴く。
今日は玩具改造機能によって
ギルドに到着して依頼掲示板に目を通す。
今までは受付嬢に依頼を
ここにも僕がこれまでやってきた荷運びや採取依頼などの依頼が多数あった。
森での等級が低い討伐依頼を探す。
これらの魔獣は冒険者のススメに載っていたので絵での姿ならわかる。
美味しく食べられそうなのはやっぱり
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
討伐対象。
場所。エンリ近郊。ルールグアの森。
討伐目的数、一体。
討伐証明部位、牙二本、白尾。
討伐目的数以外の討伐数一本につき銀貨一枚。
依頼報酬、銀貨一枚銅貨二十枚。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
依頼を確認し、依頼書を引っぺがして僕は受付カウンターに向かった。
「これ、お願いします」
僕は討伐依頼を初めて受けてみることにした。
「討伐依頼ですか・・・」
討伐の依頼書を持って行くと、受付のお姉さんは何か言いたげな表情をしながら口籠った。
「何か?」
問題でもあるのかな?と僕は尋ねる。
「シュウさんはその格好のままで討伐依頼を受けるのですか?」
「・・・ナイフはありますけど」
昨日買ったからね、肉を捌くためにだけど・・・。
僕は鞄からナイフを取り出して見せた。
手に馴染む短いナイフだ。
これで肉を切るんだ。
「それだけでは何もかもが足りませんよ」
僕が手に持ったナイフを見てお姉さんは呆れた声を出した。
「討伐依頼はですね、普通は革鎧などの装備を身に付けて、それから仲間を集めて安全を確保してから受けるものです。それまでは採取依頼や荷運びなど安全な依頼を受けた方がいいと思いますよ」
これは討伐依頼を受けるのを止められているんだろうな。
僕は弱そうな見た目しているから仕方ない。
実際弱いし。
武蔵やロウィンの戦闘力をお姉さんは知らないので当たり前といえば当たり前か。
さてどうしよう。
僕としてはどうしても討伐依頼を受けたい。
実はもう何度も討伐しているんだ。とも言えないし。
うん、ちょっと嘘をついてみるか。
「戦うつもりではなく、罠を使って捕えてからとどめを刺そうと思っています」
「そうなのですか?そんなご経験が?」
「はい、祖父に教わりました」
「だから
「はい、祖父は猪狩りの名人だったので」
これならどうだろうか?
祖父直伝の罠を使っての狩り。
100%の嘘である。
でも自信満々な顔をして僕はお姉さんの顔を見返していた。
少しは説得力が出るかもしれない。
「・・・そうですか」
「はい!罠を使えば弱い僕でも借りが可能だと思います」
「・・・でもやっぱり」
「無理そうならすぐに帰ってきます」
断られる前に僕は言葉を重ねた。
「失敗した場合は違約金が発生しますよ?」
「わかっています、問題ありません」
「そこまで言うならわかりました。依頼を受理します」
よし、何とか通った。
これで討伐依頼を受けられる。
外でお肉も食べられるぞ。
冒険者のススメにも肉は美味しいと書いてあったのだ。是非食べてみたい。
「ルールグアの森には表層、中層、深層があります。シュウさんの冒険者等級は六級ですね。なら絶対に表層以外には行かないでください。中層は五級から深層は四級からしか入れませんから。それと予め救助費用をお支払いいただけば三日帰ってこない時に冒険者の有志を募って助けに向かうことも可能ですがどうしますか?」
「お金がないので今回は見送ります」
「・・・そうですか、本当に気をつけてくださいね」
「大丈夫です。自分が弱いことは重々承知していますから」
「ふっ、わかりました。ではお気をつけていってらっしゃいませ」
僕が自信満々に弱者宣言すると受付のお姉さんは少し笑って見送ってくれた。
いつもと別れの挨拶が違ったのは僕の安全を祈ってくれたからだろうか?
だったら嬉しいな。
僕は受付けのお姉さんと別れを済ませて冒険者ギルドを出た。
向かうのはルールグアの森だ。
今日はバーベキューだ。
肉よ、僕を待っていろよ。
こうして初めての討伐依頼へと出発した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます