第17話 女の子の姿で
「・・・おはようございます」
僕は目覚めて世界に向かって挨拶をする。
起き上がろうとすると髪が引っ張られて痛みを感じた。なんだろう?
ぼやけた頭で顔動かして、どこから痛みが発生したのか見つけようとした。
そして黒い長髪を自分で踏んでいることに気がついた。
そうか・・・僕は女の子になっていたんだっけ。髪が顔に掛かって鬱陶しい。
長髪って大変なんだな。と僕は思った。
髪だけが変わってないのかもしれないので体を触ってみる。
うん、胸があってアレがない。
仮面の変身はまだ継続中のようだ。
武蔵と同じで仮面も消えたりはしない。
うん、でもまだ検証が必要だ。
とりあえず両替が済むまではこの姿で過ごしても良いかもしれない。
まずは女性用の着替えを入手しようかな。
男の姿なら今までの格好で気にもならなかったが、女の子になっている状況だと色々状況が変わってくる。特に上の下着が欲しい。
できることならなるべく早く。
僕は服なら冒険者ギルドに売っていたな、と思い出し向かうことにした。
「着きましたよっと、違う違う。着いたわね」
直ぐに外出し、冒険者ギルドに到着した。
この姿の時には一応言葉遣いを変えることにした。
そのまま受付カウンターに並び自分の番が来るまで待った。
「本日はどのようなご用件でしょうか?」
姿は全く違うからこそ注意は必要だ。
バレないように口調には気をつけないと。
「服が数着欲しいのよ、売ってもらえるかしら?」
自分で言ってて不思議な感じがした。
慣れないとね。
「服ですか?」
「えぇ、そうよ」
「・・・ここは冒険者ギルドですが」
「知ってるわ。友達にここから服が買えるって聞いたのよ。それで売ってもらえる?」
ここは服屋ではない。
受付のお姉さんが言っていることはもっともだったが、余計なことを聞かれるとボロがでそうだったので笑顔を浮かべて意見を押し通すことにした。
「・・・何着ご用意しましょうか?」
直ぐにお姉さんは融通をきかせてくれた。
よし、これで服と下着が買える。
「そうね、とりあえず三着貰える?勿論下着もね」
「承知しました。少々お待ちください」
そう言うと受付のお姉さんは女性用の下着と服を用意してくれた。
僕は支払いを済ませて銅貨を減らした。
そうだ、この姿なら銅貨を銀貨に換えても問題ない。さっそく聞いてみよう。
「ここって両替はできるかしら、銅貨が余って困っているの」
「可能ですが」
「じゃあ、これお願い」
鞄に入っていた銅貨を二百枚だけ残して、それ以外をカウンターに出した。
残したのは借金の返済に使うものだ。
これが銀貨に換わっていると、どこで両替したのかという話になるからだ。
「銀貨四枚になります」
「ありがとう」
「本日はご利用ありがとうございました」
僕は演技がバレないうちに冒険者ギルドから外に出た。
上手くいった。服も買えたし銅貨を両替できた。この姿は使い勝手が良い。
それが証明された。
この女の子の姿なら色々な買い物もできるし、少し贅沢するのも良いかもしれない。
思い立ったが吉日だ。
僕は見つからないように馬小屋に戻り、頑張って下着をつけ服も新しいものに着替えてから外に出た。
露店で肉パン以外のご飯を購入するのは初めてだな、と思いながら大通りを歩いた。
燻製肉の卵巻き、果実の酸味が効いた炙り肉、チーズ巻き揚げ、皮のまま焼いた果実。
次々に口に放り込んでいった。
食欲が満たされていくのを感じた。
仮面をつけたままでも食事は可能だった。
これはありがたいね。
結局いつもの五倍くらいのお金を使って食べ歩いた。
久々に色々なものを食べられた。
お腹も一杯だ、満腹で満足した。
次は食事以外の買い物。
購入したのは発火具や調理器具に塩、最後に解体用のナイフだ。
これは次に門の外に出るときに森で料理をするためのものだ。
また食べ物かと思うかもしれないが、娯楽の少ないここではそれがかなりの楽しみになるのだから仕方ない。
次に外に出て行く時は貨幣変換をオフにしてから僕はその狩りで得られる魔獣の肉で料理をしようと思っていた。
本当にそれが出来るかはわからないけど準備は必要だよね?
だからそのための色々とものを買った。
後は持ちやすい料理用の鞄を購入してそれに全て詰め込んだ。
銀貨を何枚か使ったが、昨日の狩りでかなり稼いだので問題はない。
久々の遠慮なしの買い物は楽しかった。
無駄遣いもたまにはいいね。
「このまま馬小屋に帰るってのもねぇ」
僕はそこでさらなる贅沢を思い付いた。
そうだ。宿屋に泊まろう。
僕は露店で近くに泊まる場所がないか聞いて回ってからその宿屋を訪ねた。
「えっと、ここね。若鳥亭。ちょっといい?一部屋借りられるかしら?」
宿屋に入り主人に声をかける。
「お嬢ちゃん一人かい?部屋は空いてるよ。一泊四十銅貨で朝食付きだ。三銅貨でお湯もつく、泊まっていくかい?」
「一泊するわ。これ四十三銅貨ね。お湯もお願い」
「一泊だね、部屋はそこの階段を上った奥こら二番目だ」
「ありがとう」
鍵を受け取り二階に上った。
ここは食事付きでお湯まで使えるそうだ。
馬小屋とは段違いだ。
それはそうか。
あそこは本来、人が泊まるところではない。
僕は期待をしながら部屋に入った。
馬小屋の十倍のお金を出しただけはある。
ベッドがあるし、部屋も綺麗だった。
これだけで十分満足できた。
久々のちゃんとした人のための宿である。
あとは食事が美味しければ完璧だ。
僕はまずベッドに寝転んだ。
今日は両替もできたし、無駄遣いもした。
宿にも泊まれて最高だ。
全てはこの仮面のお陰、ガチャ様ありがとう。この宿は高いが鍵もついているし安全性が高いのも良い。
今日購入したものは結構重い、次に依頼を受ける時は邪魔な着替えは置いて行きたいな。
使わない荷物はここに置いておいて依頼を受けに行くのが良いかな。
馬小屋はあのままでいい。お金は支払ってあるし、いざとなった時に戻れる場所としておこう。
そうなると問題はお金か。
まぁ、魔獣を狩ればなんとかなるな。
たぶん一度宿屋を使ってしまったら馬小屋には戻れなくなりそうだ。
ベッドで眠れるとか最高だからね。
今日はぐっすり眠れそうだ。
今後は男の僕は馬小屋に住んでいるように見せて、仮面を被って女性化した僕が宿屋に住む。
そう出来るように頑張ってみよう。
僕は簡単な計画を立てて、そのままベッドに身を任せた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます