第13話 洗濯
「銀貨十五枚か、一日でかなり増えたな」
水浴びのために色々と物を購入したが油蛇や白尾猪を討伐したので結果的に資金は三倍近くになっていた。
もう借金を返してしまいたい。
これは怪しまれるかどうかは気にせず、さっさと借金を返して別の街に移動するのもありなのかな?
でもどこでお金を調達したのか聞かれても面倒だしな。
まだ当初の予定通りこの馬小屋で我慢か?
もしくは僕があの鋏を使って魔獣を討伐して・・・いやダメか、あの鋏を使っても玩具なのでポリゴン化する。
魔獣が貨幣になるのは玩具購入のためには便利ではあるが、そうならないようにもできるようにしておいて欲しかった。
まぁ、でも無い物ねだりをしても仕方ない。
やはりコツコツと依頼をこなしていくしかないのかもしれない。
「そろそろ財布買った方が良いかも」
銀貨と銅貨をを鞄に戻す。
持ち上げるとジャラジャラと五月蝿かった。
外にいた時は気にならなかったが、たぶん貨幣同士が当たる音が歩く度にしていた筈だ。
銀行みたいな場所はないのか?
でもあったとしても預けたらそこでどのくらいのお金を持っているのかがバレてしまう。
たぶんATMはないだろうし、人を
せめて銅貨だけでもどうにかしたい。
百枚以上あると流石に邪魔になってくる。
よし、露店でこの百枚以上ある銅貨を使って、せめて半分まで減らそう。
店を分けて少しずつ使えば大丈夫なはず・・・だよね?
今日は散財の日にする。
僕はそう決めて馬小屋から出て町を回ることにした。
散財とは言ったが、別にいらない物を購入するつもりはない。
僕は露店を回って生活に必要なものを買うことにした。
さっき鞄の中を見た時に思ったのだが、洗濯をしてないせいでめちゃくちゃ鞄の中が汚いし臭かった。
当たり前だ。汚れたままの服を放り込んでいるのだから、だから先ず僕は洗濯に必要な物を購入することにした。
洗うのは手洗いでするので、水を入れる容器をそのまま使い、そのあとツヅネのところによりまた水を購入しよう。
コインランドリーがどこかにあればな。
ないか・・・。
後は乾かすためのもの。
一番楽なのは紐か・・・?
そこそこ丈夫な紐を結んでそこに服をかければいい。服の五枚くらいなら弛んで落ちることもないはずだ。
僕はそう考えて露店により洗濯に必要な物を購入して馬小屋に戻った。
「水の量が全く足りない」
容器に入れて洗濯を始めたものの、これで洗えるのは服一枚が精々だとわかった。
もう一つ問題なのは干す場所がないこと。
外には紐を結ぶ場所がないし、あっても邪魔になる。馬小屋の中なら干せないこともないが、それでは洗濯物に臭いがついてしまう。
それじゃ意味がないよ。
僕は洗った服を絞れるだけ絞って、置いてあった木箱の上に起き、汚れた水は外に出て適当な場所に流した。
どうしようか?
これは町の中じゃ無理だな。
これから洗濯物を干しても夜になって乾かない。明日は依頼を受けるついでに川で洗濯をしてここに帰ってこよう。
そう決めて僕はその日は寝ることにした。
次の日、冒険者ギルドで荷運びの依頼を受けた。それはこの前行った村まで荷物を運び戻ってくるだけの前回と同じものだった。
今日のメインは依頼でも討伐でもなく洗濯である。
僕は町兵さんに簡単に挨拶をして門から出た。それからしばらく街道を歩き、誰も近くにいないのを確認してから【玩具召喚】を行なった。
手元に現れる小さな三つの玩具達。
武蔵にロウィンにレッドシザー。
一個ずつ召喚されるものだと思っていたので、三個同時に召喚された。
「うわぁっと」
驚いて地面に落としそうになったが三個ともなんとか掴み取った。
これまでは既に他の玩具が顕現している状態で別の玩具を召喚していたものだから気がつかなかったが、一個も玩具を召喚していない状態で【玩具召喚】を行なうと、全てのオモチャが手元に現れるのがこれでわかった。
これって一つずつも召喚できるのだろうか?
【玩具送還】と言い三個の玩具を一度送り返す。
それから「【玩具召喚】武蔵」と名前をつけてスキルを使用することで武蔵だけを召喚できないか試すと、それは成功した。
やはり名前をつけたのは正解だった。
どちらにせよ三個とも玩具は召喚するのだが【玩具召喚】の機能がまた一つわかったのは良い事だ。
それに三個程度ならまだいいがこれが十個以上となると地面に落とすのは必定で、意図せず毎回巨大化した玩具が顕現することになっていただろうから、それを避けられた点も結果として上々だろう。
僕は武蔵とロウィンをお供にして村へと歩みを進めた。
滞りなくトット村に荷物を届けて依頼書にサインをもらって依頼は完了した。
ここからが今日のメインだ。
天気は快晴、風力も洗濯物を乾かすにはちょうど良いぐらいだ。
冒険者ギルドで地図を見て川の位置を大体把握して、一応村人にも尋ねて話を聞いたので川はすぐに見つかった。
ここには紐を結ぶための木々も何本もあるし、外なので誰かの迷惑にもならない。
何より水が使いたい放題だ。
魔獣が出る可能性はあるが、僕には武蔵とロウィンがいるのでそれも問題ない。
「洗うぞー、見張りは頼んだよ」
僕は武蔵とロウィンに魔獣についてはお願いし、鞄から汚れ物を全て出した。
そこから一枚を服を選び取り、洗濯をするために靴を脱いで川に入った。
「川で洗濯するなんて思わなかった。昔話みたいだ」
それなりの時間をかけて全ての洗濯を済まし、紐を木々に結んでピンと張り、その上に洗濯物を干した。
あとは洗濯物が乾くのを待つ状態となったので僕は草っ原に寝転んでいた。
魔獣の襲撃は起こらなかった。
僕が寝転んでいると、近くに武蔵とロウィンが寄ってきた。
「見張りありがとう」
「モォー」
「グシィィ」
僕がお礼を言うと、武蔵とロウィンは返事をした。
「・・・もう少しお願い」
僕は陽光に照らされて睡魔が襲ってきたので、ここを玩具達に任せて眠ることにした。
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