第10話 レベルアップとガチャ
「いち、にー、さん」
採取依頼は無事に達成したので僕は
合計は銀貨二枚銅貨二十六枚なり。
また増えてしまった。
額は採取依頼の十倍以上か・・・。
何のために依頼をこなしているのかわからなくなるね。
でもこれは既定路線。
表向きは貧乏で食うにも困っている駆け出しの冒険者。
裏では牛の玩具で荒稼ぎする幸運な冒険者。
それが僕の正体なのだ。
そういえば受付嬢のお姉さんがレベルが上がっていたな。
さっそく見てみよう。
「ステータス」
僕は久々にステータス画面を開いた。
《 名 前 》 ユヅメ シュウ
《 年 齢 》 19
《 種 族 》 人間種
《 レベル 》 3
《 職 業 》 玩具屋
《 スキル 》 言語さ
玩具購入2
玩具修理0
玩具召喚1
チェック、チェック。
ステータスを見てみると受付のお姉さんが教えてくれた通りレベルが上がっていた。
上から順番に目を通していって表示が変わっている部分があるのに気がついた。
玩具購入の数字が0から2になっている。
ここで冒険者ギルドで冒険者登録証を作成した時に感じた違和感に気がついた。
僕は冒険者登録証を取り出して見てみた。
《 名 前 》 ユヅメ シュウ
《 年 齢 》 19
《 種 族 》 人間種
《 レベル 》 3
《 職 業 》 玩具屋
《 スキル 》 言語
玩具購入
玩具修理
玩具召喚
やはり玩具購入、玩具再生、玩具召喚の三つの後の数字がなかった。
何か違うと思ったけどこれだったのか。
確かレベル1の時にステータス画面を開いた時の数字は玩具購入が1、玩具修理が0、玩具召喚も0だった。
それが今は玩具購入は2、玩具修理は0、玩具召喚は1となっていた。
玩具購入が一つ増えて、玩具召喚も一つ、玩具修理は変わらずということだ。
玩具購入はガチャを示しているのは間違いない、なら玩具召喚の1は武蔵のことに違いない。
つまりこの横の数はレベルなどではなく、個数を示している可能性が高い。
つまりこれは玩具購入も後二回使用可能になったということではないだろうか?
兎に角、試してみればわかる。
玩具購入のスキルを使ってみよう。
【玩具購入】
僕の早速スキルを使用し、ガチャの筐体を出した。
数字が使用回数ならばハンドルが動くはず。
僕はハンドルを回してみた。
「おっ」
ハンドルは抵抗なくスムーズに回転した。
そして出口からカプセルを吐き出した。
予想通りだ。
僕は頬を緩めながらカプセルを捻って開封する。
中身は・・・鋏?
中から出てきたのは手のひら大の真っ赤なおもちゃの鋏だった。
これも大きくなったり動いたりするのだろうか?
僕は地面におもちゃの鋏をそっと置いた。
すると鋏はみるみる内に巨大化し、凶悪な姿を現した。
「いや、大きくなり過ぎでは?」
鋏は想像よりはるかに大きくなり僕の身長の半分くらいの長さの鋏が顕現した。
僕は柄の部分を握り拾い上げる。
「思ったよりは軽い、というか、軽すぎる」
手に取ってみると羽のようにとまでは言わないが予想よりも重さは感じなかった。
プラスチックのバットぐらいだと思ってくれれば良い。
子供の時のようにぶんぶん振り回しても疲れなさそうだ。
刃の部分まで真っ赤で見た目は少し禍々しいのにこの軽さ、鋏としては使えるのだろうか?
「切ってみればわかるか、」
両手を使って鋏の柄の部分を広げて近くにある木に刃を当ててみた。
少しくらいは傷つくだろうか?と思ってやってみたその行動で自分自身が驚くことになる。
木に当てた刃は抵抗なくスーッと木の皮を侵食し、幹に入り込み、そのまま分断した。
「切れ味すご」
真っ二つになり、ゆっくりと倒れていく木。
「危ない」
ビィキビィバキ、バン!!
枝を折りながら地面を強打する木に巻き込まれないように僕はそこから急いで離れた。
こんなことになるとは思わなかった。
「武蔵もすごかったけど、こっちは取り扱い注意だな」
倒れた木に合掌をして一応謝っておいた。
こんな事をする気はなかったんです。
ごめんなさい。
僕は謝罪を終えてからステータス画面をもう一度見る。
《 名 前 》 ユヅメ シュウ
《 年 齢 》 19
《 種 族 》 人間種
《 レベル 》 3
《 職 業 》 玩具屋
《 スキル 》 言語
玩具購入1
玩具修理0
玩具召喚2
やはり玩具購入の数字は購入回数。
そして玩具召喚の数字は所持数を示していたのだろう。
ガチャで鋏を引いたことで、玩具購入の数字が減り、玩具召喚の数字が増えている。
ならまだあと一回、ガチャを回せるということだ。牛、鋏、と来て次は何だろうか?
【玩具購入】
僕はもう一度、スキルを使用する。
それからガチャの筐体の前で祈りながらハンドルを回した。
次にカプセルを開いて出てきたのは、人形だった。
仕立ての良い細身の赤い燕尾服、黒いロングブーツ、さらには顔と体が
ハロウィンの仮装のようだ。
この人形も勝手に動き出す武蔵と同じタイプだろうか?少し怖いな。
そっと地面に置く、するとそこに僕が見上げるくらい背の高い人形が現れた。
「グシィィ」
藁が動いて口のようなものがあるのがちゃんとわかった。ちょっと不気味だよ?
人型だからといって流暢に言葉は話せないようだ。グシィィってのは鳴き声みたいなものだな。武蔵のモォーと同じだ。
話せたら面白かったのに。
見た目は薄気味が悪いだが、敵視されているわけではないので、あまり恐怖は感じなかった。
それよりもこれで二体目の動く玩具である。
武蔵と同じくらい強いのなら頼もしい限りだ。
「そうだな、じゃあ、これ持てる?」
僕はさっき出した鋏を人形に渡す。
武蔵は使えそうにないし、僕はこの鋏が怖いのであまり持っていたくはない。
でも使わないのも勿体無いので、人形に渡した。
人形は鋏を受け取ると、嬉しそうにしていた。プレゼントだと思ったのかな?
貸すだけだよ?でも一生貸すことになるかもしれないからその時は贈り物といっても差し支えないか。
それにしてもこの人形、鋏を持つと不気味さがより増すな。
「魔獣が来たらお願い、無理そうだったら、この子の後ろに一緒に隠れていよう」
武蔵を指していうと頷き返してくれた。
理解できたようだ。
武蔵のように指示も聞いてくれそうで良かった。
もう一度、ステータス画面を開く。
《 名 前 》 ユヅメ シュウ
《 年 齢 》 19
《 種 族 》 人間種
《 レベル 》 3
《 職 業 》 玩具屋
《 スキル 》 言語
玩具購入0
玩具修理0
玩具召喚3
玩具購入の数が減り、玩具召喚の数字が増えていた。これで確定だ。
玩具購入が増えたのはレベルが上がったおかげか?
ならば魔獣討伐は二つの意味で美味しい。
お金も手に入り、玩具も手に入る。
ということになる。
「これからも討伐を頑張っていくぞ」
僕は二つの玩具達を加えて決意を新たにした。
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