第2話 ガチャ
すぅーはぁーーー。
僕は大きく深呼吸をしてパニックにならないように頑張った・・・かなり頑張った。
こうなってしまったものは仕方ない。
あまり深く考えると何も出来なくなる。
やれることからやっていこう。
事故を起こして僕の一回目の人生を終わらせた超存在に若干の憤りを抱えながらステータスに目を通す。
《 名 前 》 ユヅメ シュウ
《 年 齢 》 19
《 種 族 》 人間種
《 レベル 》 1
《 職 業 》 玩具屋
《 スキル 》 言語
玩具購入1
玩具修理0
玩具召喚0
「ゲームでいうところのパラメーターの数値は無しのタイプか、でもレベルがあるってことは成長はするってことだよね。それにしても玩具に潰されて死んだから玩具のスキルってユーモアが過ぎる気がするな」
僕は頭を切り替えてステータス画面からなんとか情報を読み取ろうとした。
魔法とかの代わりがこのスキルなのだろうか?どうせなら空間転移とか時間停止とかそういうのだと嬉しかった。
僕には玩具に関する能力しかない。
これでどうやって人里まで行けと?
あんな巨大な怪鳥が
「いきなりハードモードみたいだね」
愚痴を言ってもどうしようもないが、ついつい口に出してしまう。
これは僕の不安の表れだった。
「でももしかしたら凄いスキルだという可能性もあるよね?何せ一応超存在(神とは口が裂けても言いたくない)が与えてくれたものなんだし」
僕は気を取り直してステータス画面に触れて、スキルについての説明がないか調べてみた。
まずは言語の部分に触れてみた。
すると画面が変化した。
言語ーーーこの世界のありとあらゆる言葉を話せ、文字を理解し書き記すことが出来る。
「これ結構凄いな、今は役に立たないが当たりといえば当たりだろう。人さえいれば通訳として生きていけるかもしれない」
この世界に言葉や文字がなければ意味はないが、超存在がこのスキルを与えたということはそれがあるのは必然と言える。
早く誰かと会えることを期待しておこう。
「言語の方はここでは役に立たないのは最初からわかっていた。だから玩具関連のスキルを見てみよう」
せめて少しはこの状況を打開出来るスキルでありますように。と祈りながらステータスにタッチした。
【玩具購入】
購入することでガチャを回し玩具を手に入れられる。
【玩具修理】
玩具箱に玩具を入れておくことで損壊を修復する。
【玩具召喚】
購入した玩具を召喚する。
「異世界に来ておもちゃで遊んでどうするんだよ!?」
僕は説明画面を見て大声でツッコんだ。
スキルはそのまま文字通りのものだった。
これ説明になってる?
いっその事、おもちゃで遊んで現実逃避しようかな?
スキルについて理解した僕は大草原で頭を抱えることになった。
しばらくして、
僕は再び立ち上がった。
どんな状態も長続きはしない。
楽しい時間も悲しい時間も平等に終わりはくる。だからいつまでも落ち込む続けるのも難しかった。
「こうしていても問題は解決しない。まずは本当に玩具のスキルが使えないのかを確かめて、それから人を探しに歩き出そう」
僕はそんなに期待もせずに、
【玩具購入】と叫んだ。
叫ぶとポンっと音と共に何処かで見たことがありそうで見たことのない筐体が現れた。
「うわ、出た。本当にガチャだ」
僕はガチャに近づいてみる。
「いや、お金いるじゃん」
そこには一回金貨一枚と書かれていた。
「持っているわけなくない?いきなりここに飛ばされてさ、どうせここじゃ役に立たないんだし、せめて一回ぐらい遊ばせてくれたっていいじゃん」
僕はガチャ本体に詰め寄り、ガタガタと揺らした。現実でこれをしていたら怪しい人として警察に通報されそうな行為だった。
「回させろ〜」
僕はお金を入れずにハンドルに手をかけて回そうと試みる。
どうせ無理だろうと思って行った行為だったが、難なくハンドルは一回転した。
「あれ?もしかしていける?」
僕はそれを捻りもう一回転させるとガチャ本体からカプセルが出てきた。
「おっ、初回無料ですか?本当に?超存在さんありがとう」
我ながら現金なものである。
事故で命を取られた相手にガチャ一回で感謝を伝えてしまった。
僕はカプセルを開き中身を見る。
初めてのガチャは牛の人形だった。
なんで牛?
「結構細かい出来だな」
僕はよく見るために人形を手に取る。
しかし玩具をカプセルから出して手に乗せると牛の人形は消えてしまった。
「あれ?どこいった?」
一応地面を見る。
そこには玩具はなかった。
落としてはいない、文字通り消えたのだ。
「あ、そうかここで玩具召喚を使うんだな」
俺は開きっぱなしのステータス画面を見てそれを思い出す。
「玩具召喚、うわっ」
手元に小さな牛の人形が現れた。
これでどうしろと?
とりあえず地面にでも置いてみるか。
「モォー」
「何っ?!」
地面に置いて手を離した瞬間に小さな牛の人形は巨大化して本物の牛のように鳴いた。
召喚されたオモチャは玩具購入でガチャを回して手に入れたオモチャに間違いなかった。
その姿はまるで生きているかのようにだった。
「玩具が本物に変わった?」
牛の人形だったものを見るとモォーと鳴いていた。僕は恐る恐る近づいてみる。
うん、本物に見えなくもないが、牛とは違う。これはあくまで牛ではなく玩具の牛が生きている状態になったようだった。
これはどうなんだろうか?
役に立つのか立たないのか。
俺はガチャ牛に恐る恐る触れてみる。
ちゃんと温かい。
撫でられると、またモォーと鳴いた。
懐いてはいる。これなら乗れるかも。
「ちょっと失礼しますよ」
僕はジャンプしてガチャ牛の背中に乗る。
ガチャ牛はよろけたりせず僕の体を背で受け止めてしっかり四本の足で立っていた。
「出発進行」
僕はこうして人を探すための足を手に入れた。
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