第7話 眠りし龍に手助けする人? の影
???side
◇
怠惰ノ権能を確認しました。──種への連絡を……
◇
「ん、もう確認済み」
突如現れた監視対象──フィリアの子だと思う彼は大罪の力を発現させてしまった。
これは……流石に排除するべき?
「……もう少し様子見? 異分子とは言っても世界に害はない、はず」
木の上からフィリアの子である彼を見続ける。
彼は大罪の一つである怠惰に侵されて眠ってしまったらしい。その証拠に、辺り一帯に怠惰の状態異常を付与する『怠惰の霧』をばら撒いており、近くに居た生物がことごとく眠ってしまっている。
「んしょっと……ん、まだまだ弱い。全然危険じゃない」
ここは今は居ないとは言ってもフィリアの巣。後々彼女が困らないためにもこの怠惰の霧を対処しておく。
……いやまぁ、対処しなくてもフィリアなら全然困らないと思うけど。この子の怠惰も発現したばかりでレベルも低いしね。
「……? 何、私を侵そうとしてるの? …………たかが怠惰の癖に生意気」
──ノ権限を使い、辺り一帯を覆っている怠惰の霧を全て支配下に置いて手のひらの上へと集める。
生存本能かは知らないけれども、まさか私に怠惰の能力を向けてくるとは驚いた。流石異分子……やっぱり予想外の事を起こす。
「やっぱり安全な今の内に排除すべき? ……でももし排除してフィリアが知ったら……ん、めんどくさい。まだ手を出すには弱すぎるし──ん?」
◇
嫉妬ノ権能を確認しました。
◇
「……んー、本当に予想外」
未だに寝ながら怠惰の霧を放出しているフィリアの子が新たに赤黒い雷を放出し始めた。これは嫉妬ノ権能が能力化した姿なんだけど……まさか怠惰だけじゃなくて嫉妬も発現するとは思わなかった。
フィリアの子の表情は苦悶に染まった顔になっている。大罪の力を制する為に頑張っているのだろうけれども、流石に二つの大罪を同時に制するのは大変……結構時間が掛かっている。
「んー、こう言うのはフィリアに任せたいけど、フィリアは子育てで忙しいし……んぅ、仕方がない。うん、フィリアの子だし特別。それにもしかしたら私に並ぶ可能性も…………それは無いか」
寝ているフィリアの子を抱きかかえ、その魂に干渉する。
魂の状態は怠惰と嫉妬に侵されながらも己を守らんとしながら怠惰と嫉妬を抑えている感じ。結構な混沌状態とも言える。
これ、この子が異分子である程度成熟した魂だからなんとか抵抗出来ているけれども、もし生まれたばかりの子だったら一瞬で呑まれてたと思う。
そんな子の魂に少し干渉し、魂の強度を上げる。ある程度まで魂の強度を上げれば怠惰と嫉妬の権能の同時浸食であっても完全に吞まれない……はず。
私自身、あんまり表舞台に出たくないからここまでの対策しか施さないようにしておく。
……完全な対策はフィリアが多分やってくれると思う。最近分かったけどフィリアって結構な子煩悩だし。
もし対策されずに嫉妬か怠惰に吞まれても、それもこの子の人生……私が知るところじゃない。もしこの世界を害する存在になるならば排除するだけだし。
「……にしても、ん……案外可愛い顔をしてる。……小さい頃のフィリアにそっくり
…………それも当然、か。フィリアの遺伝子しか継いでないし」
フィリアの子の頭を撫でながら周りに被害が及ばないように溢れ出た怠惰の霧と嫉妬の雷を支配し、私の体内に取り込んで処分していく。
にしても、この子が出す大罪の力は結構多い。大罪の力を制するのに時間が掛かっているってのもあるとは思うけれども、この力の放出に耐える魂も身体も随分と優秀だと思う。
「もしかしたらあの力も……いや、まだこんな小さい子にそんな責務を押し付けるべきじゃない」
いつの間にか大罪の力を制し、体色が灰色から怠惰の霧と同じ色に変化したフィリアの子をそっと元の場所に戻す。
……うん、嫉妬の権能もしっかり押さえれてる。身体の一部に赤黒い色をした迸るような線が浮かんでるのも嫉妬の権能の影響だけれども、そこまで問題にはならないはず。
「ん……この子はまだ監視するべき。異分子で大罪を二つ発現させた存在なんて将来に期待出来るけど……うん、結構な不穏分子」
そう言い残して私はその場からフッ……と消える。私はまだこの子の前に姿を現す時期じゃない。
私がこの子の前に姿を現す時は──
──この子が成長した時だ。
その時に邪龍となるか、はたまた別の龍となるかはフィリアとこの子次第……かな。
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