第6話 怠惰と精神汚染。魂を添えて

 さて、次に確認する【怠惰ノ幼龍】なのだけれども……なんとも【堕ちたレッサードラゴン】とかと似たものを感じる。


 怠惰……多分七つの大罪の一つである怠惰だとは思うんだけれども、「状態異常に怠惰が付与される」って言うのがなんとも怖い。

 とは言ってもあくまでこれは予想……もしかしたらこの世界だったら怠惰が別の意味で通っているかもしれないと思いながら鑑定に掛けてみる。



【怠惰】

 必要以上に怠け、極力自ら動こうとしない事を表す。


【怠惰・権能】

 大罪の一つであり、怠惰が能力化された物。

 この権能を持つ者は怠惰に侵されるが、怠惰の力を操れるようになり、多大な力を得ることが出来る。


【状態異常:怠惰】

 怠惰に侵された状態を表す状態異常。

 この状態異常が付与されれば、自ら行動する気力が削がれ、解除されるまでは常に怠惰に生活することを強要されてしまう。

 怠惰の権能によってしか付与できない状態異常であり、非常に強力ではあるが活力が上昇するアイテムや魔法によって一時的な対策は可能。

 恒常的な対策には『魂系称号』と呼ばれる物が必要となる。



 怠惰と言う言葉自体は大体前世と同じらしい。

 ただ、その怠惰が大罪の一つとして存在しているかつ、能力化──多分だが『スキル』として存在しているらしい。


 そんな能力である怠惰を入手する事が出来る進化先だというのが分かったけれども、この進化先に行くかはかなり迷う……

 強大な力である怠惰を得れるのは非常に助かるだろうけど、常にデバフが掛かるのがやはり怖い。鑑定結果ですら『非常に強力』と表示してくるのだから相当危ない……はず。


 でも一応対策は出来るらしいし、この進化先を見逃すのはなんとも惜しい……そう思って対策の所を鑑定して確認していると気になる結果が表示された。

 その気になる結果と言うのは、この『魂系称号』と言う物だ。



【魂系称号】

 非常に希少な称号であり、強力な能力が付属している。

『魂』に非常に強く関係のある関係上、魂系称号を持つ者は特定の状態異常や精神干渉に強い抵抗を獲得することが出来る。

 また、魂に関連がある為に『同一の魂系称号』は存在せず、それぞれの魂称号を持つ者は世界に必ず一人のみとなる。

 希少な称号ではあるが、種類は多岐に渡る。(勇者・魔王・獣王・覇王・王者・女帝・聖者/聖女・勇聖者/勇聖女etc……)

 ※『異世界の魂』は『魂系称号』に含まれる。



 なるほど……俺が持ってる異世界の魂って言う称号はこの魂系称号と言うのに含まれるのか。この異世界の魂って言う称号を鑑定したときに出た情報は『鑑定』と『言語翻訳』と『取得経験値量増加』が付属するという事ぐらいだったけど、もしこの怠惰を制せると言うのならばとんでもなく優秀な称号という事になる。


 こんな都合の良い進化先、むしろこれに進化しないと非常に勿体なく思える。もし今この進化を逃したらこの怠惰の力は得れないかもしれないからな。


 だから次の進化先は【怠惰ノ幼龍】に決定! 

 ……とする前に一旦堕ちたレッサードラゴンになった時の状態異常の【精神汚染】も鑑定しておく。

 もしかしたら『怠惰』と同じように対抗策があるかもしれない。



【状態異常:精神汚染】

 大半の邪堕化生物がこの状態異常に侵されており、状態異常を受けた者は内に秘めた欲望を肥大化させ、思考能力を非常に低下させる。

 また、あらゆる物事を憎むようになり、内に秘めた欲望を解消するためにはどんな手段も厭わなくなる。

 状態異常:精神汚染に対抗する為には『精神干渉無効』の耐性が必要となる。




 精神干渉無効……無効!?

 とんでもない物を要求された気がする。無効なんて物どうやって取得するのかも知らないし、取得するにしても途轍もない努力が必要になりそうだ。


 それに、精神汚染の影響も中々凄い。内に秘めた欲望……俺の場合だと『強き龍に成りたい』だろうか? それが肥大化して、思考能力が低下して、どんな手段も厭わなくなるとしたら……ひたすら生物を殺しまわる事になるのだろうか?

 俺はまだ人の精神を持っているつもりだ。流石に人を虐殺できるのかって言われて首を縦に振れる気がしない。


 ……そんな気すらこの状態異常に侵されれば消し飛んでしまうのだろうけども。うん、やっぱり怖い。龍に成りたいとは言え、俺は『俺と言う存在』すらも犠牲にして強くなりたいとは思わないからね。


 てことでやはり進化先は【怠惰ノ幼龍】一択となった。

 ……うん、改めて考えてもこの進化先が一番いい気がする。多分怠惰の力は今後の心強い能力になるだろうしね。


 よし、それじゃあ進化先は【怠惰ノ幼龍】に決定!


 二度目の経験である進化が始まる。

 身体がカァッと熱くなり、身体が痺れて──



 ──途轍もない眠気に襲われてしまい、睡魔に抗えぬままに俺は意識を落としてしまった。

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