第3話 産まれたばかりなの自立しなきゃなの……?
夜が明けたにも関わらず、母親も兄弟も……一切現れない。しかも周りに生物すら居ない。こういうのって普通ゴブリンとかスライムとかの最弱筆頭達が出てきてもおかしくなさそうなんだけども。
うーん……いくらドラゴンの子とはいえ、生まれたばかりの子をここまで放置するのだろうか? 鑑定で見たから分かるのだけれども、生まれたばかりの龍ってのは相当弱い。こんなの、母親の手助けが無いと生きるのがデスモードだと思うのだが。
まぁでも、一応幸運な事もある。それが生まれた場所だ。
ほんの少しの食料があるから餓死する心配は無いし、もしかしたら母親とかが帰ってくる可能性がある。
それに、俺が入ってた卵の他にも、他の子が生まれた卵が散乱してるのを確認できる。同じ巣にあるのだから、多分だけど俺の兄弟が生まれた卵の殻だと思う。
にも関わらず、他のドラゴンの姿は一切見えない。巣を空けるにしてはあまりにも長すぎる……
こうなれば、もはや自分で動き始めるしかないかもしれない。このまま此処に居ても巣にある僅かな食料が尽きて餓死するのは目に見えている。
産まれたばかりで自立をしないといけないだなんて、この世界のドラゴンは相当生きるのが難しいらしい。
そう考えながらも今居る巣の外へと意識を飛ばす。
特に生物の気配っぽいものは感じず、ただ草や木が風に揺られて鳴る音が聞こえるだけ。非常に穏やかで、ピクニックの一幕と思えるほどに危険を感じれない。
……とは言え、ここは異世界。鑑定の情報を見るに魔物が存在していることが確定している。というか俺自身が魔物の一体だと思う。
しかもどうやら俺はゴブリンに囲まれれば負けてしまう程に弱いらしい。巣から出るのは相当な不安だけども、俺には異世界ラノベの定番でありながらも非常に強い鑑定と取得経験値量増加がある。しかも潜在能力が計り知れないドラゴンなのだ。
ならば前世で願い、夢見たほどの強きドラゴンを目指そうじゃないか!
そんな想いを持ちながらいざ巣の外へ! ……と動き出そうとした瞬間、突如として身体が温かくなり、まるで布団にでも包まれたかのような心地よさを感じ始めた。
あまりにも謎な現象故に巣から出るのは止めて、一旦自分のステータスを見てみる。
この世界に関して俺は未知が過ぎる。分からないけど大丈夫! で動いたら取り返しが付かない可能性がある……だからこそ確認を先にしてみる。
▲▽▲
【種族:幼龍】
名前:『未設定』
レベル:5/5 (余分経験値有り)
体力:20/25
魔力:21/25
攻撃力:15
防御力:20
魔法防御力:10
【スキル】
鑑定 言語翻訳 取得経験値量増加 ブレス(微)
【称号】
異世界の魂 幼き放逐者
▲▽▲
なにもしていないにも関わらず、何故かレベルが上がっていた。ついでに謎の【幼き放逐者】という称号も獲得していた。
多分原因はこの称号だと思うんだけど……取り敢えず鑑定してみる。
【幼き放逐者】
産まれてから他の生物からの直接的な干渉を受けず、尚且つ生き残る事で獲得出来る称号。
どのような生物……例え植物であっても親の干渉を受けるのは確定してる。にも関わらずこの称号を得たとなれば、それは正に親や家族から見捨てられたに等しい。
また、この称号を得た者は世界を憎むことが多い。
見捨て、られた……? まさか俺は母親だけでなく家族に捨てられたのだろうか。そう思うと割としっくり来た。なにせこれまで家族っぽいドラゴンの姿なんて一切見なかったのだ。一応あの白銀の龍は見たけども、あの存在は正直母親とは思えないほどに神々しい。
ちょっと悲しくなりながらも、まだレベルが上がった原因が分からずにレベルの所を鑑定に掛けてみる。
一応生前の記憶があるからね……この世界の親が居なくとも心のショックはそこまでデカくないのだ。
【レベル:5/5 (余剰経験値有り)】
生物の強さを大雑把に表す数値。経験値の取得よってレベルが上がる事となり、ステータスが多少上がる事となる。なお、レベルの上昇によっての体力回復などは無い。
経験値の取得方法は多岐に渡るが、主な取得方法は他生物との戦闘に勝利したり、称号を取得したりとなる。
また、余剰経験値は進化後のレベルの上昇に使われる。余剰経験値の保有量に上限は無い。
〇/〇は、現在のレベル/現状の最大レベルとなる。
最大レベルを上げるには進化する事が必要となる。
……なるほど、レベルが上がったのは俺が【幼き放逐者】っていう称号を獲得したからなのか。なんともまぁご都合主義というか……とは感じたけれども、これはもしかしたら救済処置なのかもしれない。
よくよく考えなくとも幼体が一匹だけで成長してくなんて鬼畜が過ぎるしね。
さて、と……もう一つ気になる表示があった。それが【進化】。
異世界物ラノベとかで描かれてる強化イベントと思っていいはずだ。それと多分だけどこの布団に包まれたかのような感覚も恐らく進化の予兆だと思ってる。
で、どんな存在に進化出来るのかはどうやらステータスを見ると確認出来るっぽい。先程確認したときに付属する様に進化先候補が出てきたのだ。ちなみに進化先候補はこんな感じ。
▲▽▲
『進化先を選んでください』
【ベビーレッサードラゴン】
『竜種正統進化先』
ベビーでありながらもレッサーな竜種。
大半の竜種はこの進化先を進むのだが、強さ的には幼龍に毛が生えた程度。複数のゴブリンに囲まれてしまえば大半の理由で負けてしまう、
【幼龍『変異種』】
『竜種変異型特殊進化先』
突然変異種となった竜種。
能力は幼龍とさほど変わらないが、竜種としての秘められた可能性が最大限に発揮出来るようになる。
また、自身に関連のあれば属性を超えた進化が可能となる『特殊進化先』が解放される。
【堕ちた幼龍】
『邪堕竜種特殊進化先』
幼き頃に世界に見捨てられたが故に堕ちた竜種。
世界を憎み、憎しみを糧に力を得ることで多大な力を得ることが出来る。
※状態異常【精神汚染】が付与されます。
▲▽▲
なるほど……この中から一つ選べって言う事か。
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