第6話

1限目の教室でする話じゃなさすぎる。それでも否定できないのは満足そうに笑うこの男に図星をつかれているからだ。




茶髪で、猫目。左耳からちらりと見えるフープピアス。

シャツのボタンは上から二つもあいていて、学校指定のネクタイもしていない。




外見からチャラついているいかにもなこの男の名前は田邊たなべ 瑛斗えいと。実際、田邊に泣かされた女は数知れず。特定の彼女は作らないで来るもの拒まず。



多分分類的には“最低”、それでいてそれは私にも当てはまる。





「ていうか、最近神崎先輩多くない?今日も神崎先輩の家から登校でしょ?」


「ん……タイミングも合うし、先輩は見返りなく満たしてくれるから」


「へぇ。最近神崎先輩以外とヤった?」





神崎先輩は、何かと都合がいい。この学校の三年生で一つ上の先輩。



先輩のご両親が家を開けることが多くてその時は大抵呼ばれる。先輩だって、彼女でもない女の子を家に連れ込むんだから誰もいないほうがいいに決まってる。もちろんそれだけじゃなくて、先輩は私を彼女のように優しく愛してくれるから心地がいい。




先輩といると、寂しさが紛れる。満たされる。


先輩に呼ばれたら断らないし、先輩の家に行くことは結構多い。




……まぁあくまでそれだけで、私と先輩の関係が“恋人”に昇格することはないんだけど。

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