第4話
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──彼氏でもない男と思う存分抱き合った後の夢に初恋の男の子が出てくるなんて、私の脳内はどうなっているんだろう。
今でも彼に恋心を抱いているなんてそんなわけはないし、もう二度と会うことはないだろうけどあの頃の思い出は全てがキラキラしていた。今の私とは程遠いキラキラが詰まっていたあの頃。
戻れないキラキラとした思い出は必要ないから蓋をしておこう。
ゆっくり目を開けると、もう見慣れた白い天井と視界の端にふわふわしたベージュの髪が映った。身体を起こして優しくその髪に触れて顔を覗き込む。寝顔さえも綺麗な先輩はまだ起きていないようだ。
ベッドサイドに置かれている時計には朝の6時30分の表示。
「もうそんな時間か」とぽつり呟いた独り言が宙に舞う。学校、行かないと。多分先輩もそろそろ起きなきゃいけない。
ベッドの下に散らばっていた下着を手に取って、何もつけていない肌につける。
脱ぎっぱなしだった制服にも袖を通してから、ベッドに手をついて先輩の肩をトントンと叩く。
「……先輩、おはようございます。学校いきましょう?」
静かに言うと、先輩はふわふわのベージュを揺らしてこちらを向いた。
そしてゆっくり開かれた丸くて大きな目と、合う。
「……おはよう遥乃。今日もかわいいね」
すっと先輩の腕が伸びてきて、後頭部に手が回ったかと思えば一瞬で引き寄せられて、重なるのは唇。軽くて触れるだけのキスだけど、突然だったせいで私は体勢を崩してしまう。
図らずも先輩を押し倒しているような体勢になってしまって、先輩の綺麗な顔が目の前に現れる。
「朝から積極的だね、遥乃ちゃん?」
「……先輩のせいじゃないですか。シャワー、借りてもいいですか?」
「ん、どうぞ〜。朝から遥乃と楽しめないのは残念だけど」
動じずに、体勢を直しながら先輩に尋ねた。神崎先輩の言うことは無視して、私はもう使い慣れた神崎家のお風呂場に向かった。
視界の端に映った先輩は、私に向かってヒラヒラと手を振っていて、ベージュの髪が太陽の光でキラキラして見えた。
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