ルーム〝No.11〟

「やァ、今回の君は随分愛されて帰ってきたね」

K・ナチス専用ルームには沢山の〝物〟が落ちている。体の形は違えど、皆顔は艶花ナユと瓜二つだった。

その中でも新たにやって来た艶花ナユ__以前出会った友人から奪った〝物〟__をK・ナチスは大事そうに抱えていた。その瞳には既に光を宿しておらず、誰がどう見ても死んでいるのだと分かる。


彼は〝ホワイトルーム〟で購入した〝物〟を艶花ナユとして改造し、所有していた。

そして、あのメールで釣られた男の〝四日間〟だけ本物の艶花ナユに合わせてやり、五日目は自分が茶々を入れて唆し、攫うように仕向ける。

果てに男がどんな行動を取るのか。

五日目に会った艶花ナユが本物でない事を知ったらどんな顔をするのか。

それが見たいがために、K・ナチスは大金をはたいているのだ。

因みに艶花ナユは何も知らない。〝物〟は不要な詮索をしないからだ。

「さて、もういいかな」

K・ナチスは抱えていた艶花ナユを乱雑に床に捨て置いた。そして『NO.11』から出てエレベーターに乗り込み、艶花ナユの待つ温室へと向かって行った。


K・ナチス。

彼は〝ホワイトルーム〟の金銭援助や客層の管理をナユから任されている男である。

〝人権剥奪屋さん〟として、ナユに不義理を働いた客を処分し、また金になる客を誘う。それを生業としていた。

ナユが〝ホワイトルーム〟の女王として君臨した頃、K・ナチスの他に、壱之上カリナと字淵という人間がナユの太客として存在していたが、その役目を任されたいが為に二人を〝失踪〟させた過去を持つ。


何故そこまで艶花ナユに執着しているのか?

答えは艶花ナユの最後を我が物とする為。

それだけの為に彼は手を汚し続けているのだ。


__ナユの初めてのキスも、初めての処刑も、初めての性行為も、全て奪われてしまったが。

私は、彼女の〝最後〟の相手になれたらそれでいい。

それに選ばれなくとも、ナユのその手で私の首を落としてくれるのなら、またそれも幸せだ。何方に転んでも、私が喜ぶ方しか今後の道は用意されていないのだから。__


艶花ナユ。我が命を弄ぶ運命の女。

〝ホワイトルーム〟の最高級品。


その最後が、どうか残酷で耽美なものでありますように。

K・ナチスはそう願っている。

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ホワイトルーム・ザ・ラストナイト 小粋な馬鹿 @QT_Flash

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