第四話 演舞

「どうしたの?!大丈夫?!」


 エラは乳母の容態を見ますが、その救済の手を掃うかのように

「これを、姫様・・・・・・」


 乳母は大きめの籠のような箱をエラへ渡します。


「これは・・・なに?」


 中を開けて見ると、それは綺麗な彩りの赤と金の装飾をされたドレスに、同じく刺繍で作られる纏足用の『金蓮靴』が入っていた。


 エラは意味が分からずに、とにかく乳母を家の中へと連れて入っていります。



「・・・姫様、それを着て是非、舞踏会へ・・・・・・」


 乳母は今にも息絶えそうに、そう言い続けるのです。


「ダメよ、私なんて・・・それに、あなたがこんな状態で行ける訳がないわ」


「わたくしめは、大丈夫です。もうすぐ手配した別の使いの者が追い付いて来ることでしょう。そして姫様はその馬車に乗ってお城へ行ってくだされ。これは最後のチャンスです。それを掴みますれば、またわたくしめを従者としてお使い下されまし」


 乳母の看病をしていると、玄関方向からけたたましい蹄と車輪の音が迫り、馬の嘶きを踵に静寂が到着を知らせてくる。


「・・・さぁ、時間がありません。行きなされ、姫様」


 エラは後ろ髪引かれつつも、籠を持って馬車へと乗り込みました。



 灰かぶりのエラはそのままで乗り込んでしまったために、途中にある小川で馬車を止め水浴びしてからそのついでに、乳母が持ってきてくれたドレスへと着替えました。

 その一部始終を見ていた御者にも手伝ってもらいながら、なんとか、日が暮れる前には立派な城へと到着します。


 エラの国とはまた違った建物に圧倒されながらも、御者の手を取り舞踏会場へと向かいました。


 煌びやかで眩い程のその会場には、多くの紳士俶女が談笑したり舞っていたりと様々な衣装やガラスで作られた内部装飾に目を奪われながらも、エラの乙女心に火が付きます。


 唯一、東国の衣装に身を包むエラは一際、それだけで周囲から注目の的でその場にいる多くの男性の心に火をつけたのは、エラ本人でした。


 その群がる人の海を掻き分けて、中央の皆が社交ダンスをペアで舞っている最中に、お得意の「蓮の舞」を踊り出す。

 十センチ前後しかない足の面積では日常的な動作は困難で不安定ですが、日々訓練された演舞は一度舞い踊るその動作へと移行すると下手なバレリーナは顔負けで、前後左右、長く薄手の羽衣は舞いの軌跡を辿るようにエラを追いかけ見る者たちにその余韻を示す。


 歓声に近いどよめきからは、舞台場はワンマン・ショーと化すのに時間は要さなかった。

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