第三話 舞踏会
エラの乳母に衣食住は宛がえては貰えず、このイジメ一家へとエラを無事に送り届けると一人、どこかへと去っていた。職を探しに行ったのか、それとも自国へと帰り戻ったのか、エラは心配でなりませんでした。
ある日、普段はのんびりとふんぞり返りながらベッドや椅子に寝そべり座っているだけの義母と姉の二人は、これ見よがしに忙しく身なりを整えだします。
「ちょっとシンデエラ、それ取って」
「シンデエラ、早くしなさい」
「痛い!なにしてんの?!シンデエラ!!」
髪を梳かし束ねさせたり、多いとは言えないドレスや衣服をとっかえひっかえ。エラはいつも以上にこき使われます。
「・・・今日は何があるのですか?」
エラは理由が知りたくて聞きました。
「「・・・・・・」」
「あんたにはどうでもいいことよ。今夜、私たちは帰りが遅くなるから、良かったわねゆっくり出来て」
「私たちは『舞踏会』へ行くのよ。あんたのその醜い足では到底、踊れないでしょ?」
「「「オホホホホホホ」」」
相変わらずに意地悪な態度やセリフです。
エラの内心は複雑でした。心身共に攻撃される時間が無くなる喜びと、演舞ならずっと訓練されてきた『蓮の舞』がエラには習得されていて自信があったのです。
「そ、そうなのですか。みなさん、楽しんできて下さいませ」
「・・・あんた、もしかして行きたいの?」
長女の方が不気味で嫌らしい笑みを浮かべながらエラにそう言い、義母の方へと目線を送ります。
どうやら無様に踊らされて、大衆から笑われる姿を思い浮かべているようでした。
「ウフフ、でもだめよ。こんなのが私たち家の者だと思われたら、『縁談』なんてそれこそあったものじゃないわ」
「確かに、そうね、お母様」
エラはまたもやホッとしたのと同時に、自分の演舞を見せれば少し見返せれるかもしれないと思った自分を戒めます。この一家に限り、そんな訳がありません。
意地悪な一家はボロい馬車に乗り、意気揚々と町の中心部へと向かいました。
エラはやっと一息つけると安堵し、自分用の椅子へと腰かけながらも、舞踏会で「蓮の舞」を披露している自分の姿と、それに唖然と見初めている見た事のない王子様の顔を思い描いていました。
コン・・・コン・・・・・・
しばらくすると、エラが一人で留守番している家の扉を誰かがノックしてきます。
「はい!少しお待ちください」
エラは転ばないようになんとか壁を伝い玄関へと急ぐ。そこには予期せぬその訪問者は、やせ細った乳母の姿だったのです。
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