第44話 捜索
はぁ?オーロンがいなくなった?」
「確かに…見てないな」
クレイとカールを病室に呼び戻し、一人欠けたタランチュラメンバーが揃った。
「お前ら、なんか心当たりはあるか?」
全員が首を振った。最後食堂で見かけてから姿を消したようだ。カールが言った。さすが、こういう時はすぐ意見を出してくれる。
「病院にいる人たちに聞き込んでみるか」
「ならホテルの人たちにも」
ランディが続いた。
「んじゃ俺は…」
クレイが言おうとした時、カールが遮った。
「クレイ、ダレク、お前らを動かすことはできねぇよ。クレイ、お前まだ動脈危ねぇんだろ?」
クレイが鼻で笑った。
「んなこと知ーらね、とにかく俺は…」
「だから!お前さっきから表情引きつりすぎ。疲れてるっていう状況は自分が一番理解してるだろ」
「…疲れた原因お前だけどな」
あー…と気まずそうに目を逸らすカール。俺は見てしまった。その状況をニヤニヤして眺めるクレイを。
「まー…前までは気づいても無関心でいたカールくんが俺のこと心配してくれたんで?ご厚意に甘えちゃおっかな〜?」
ニッコニコで煽り散らかすクレイ。ランディが苦笑いしていた。
「じゃあ、カール、行こうか」
「お前ら絶対安静だからな!」
二人がそうして部屋から出ていった後。
「…クレイ、大丈夫?」
「大丈夫だっつーの。お前に心配されるほど俺はやわじゃねーよ」
「…嘘つけ」
ニヤついた表情が一瞬で崩れ、俺のベッドに倒れ込む。
「クレイ!?」
「そんな心配すんな…」
クレイは笑った表情を作って言った。
「鉛中毒ってキツイな…頭がガンガンするし、体の節々が痛いし」
クレイが吐き出すように続けた。
「あと腎臓病らしいよ、血尿続いてたから相談したら、ね。知ってるだろうけど、俺腎臓一個ないんだよね。ちっさい時にアルビノ狩りにあったらしくて。施設の奴らから聞いた話だから信用できるかわからねぇけど。適合する臓器ないし、あんまり日常生活に支障はなかったんだけど。あーわりぃ…話しすぎたな!そろそろ自分の部屋…」
俺は考えるより先にクレイの頭に手を伸ばしていた。
「…何?」
「お前よく頑張ってんな…」
そのままよしよしと撫でる。
「別に…訓練とかお前らと同じだろ」
「そうゆうことじゃない」
全く、こいつは自分のことがまるで見えてないな。
「…クレイって頭撫でられるの抵抗ないの?」
「されたことなかっただけだ。逆になんでお前は…」
やや食い気味に答えてやった。
「兄から、よく撫でてもらってたんだよ。「よく頑張ったな」って」
「…重い話引っ張ってくるのやめてくれ」
「さてと、気分楽になったし、俺は部屋戻るわ」
「安静にしろよな」
クレイが扉を閉めた後、俺は外を見た。相変わらず快晴で、少し夕暮れに近づいた感じだ。平和だな、ここだけ見れば。数キロ先は戦場だってことを忘れそうだ。
「オーロン、見つかったかな」
数時間後。病院の食堂で俺は苦笑いしていた。カールとランディに両脇をガッチリ固められ、げんなりしているオーロンがいたからである。
「あははは!!オーロン何してんの!!そこは逃げ切れよ〜」
隣ではクレイが腹を抱えて笑っていた。オーロンは病院の食事に嫌気が差し、逃げ出した。路上でファストフードを頬張っていたところ、カールとランディに見つかった。
「食べた後だったし、こいつら足速いし…」
オーロンが苦々しく出された料理を食べていた。
「これ美味いだろ」
カールが聞くと、オーロンがさらに苦々しそうに言った。
「…野菜」
ランディがすかさず煽る。
「お子ちゃまだなぁ〜」
「黙れ!」
目の前で始まる小さな攻防を見ていると、やっと日常が帰ってきた気がする。
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