第32話 争奪戦

数分後、オーロンの寝相は悪かったが、まだ落ちていなかった。ふとカールの方を見ると、ゆっくりとオーロンのベッドのパイプに手を伸ばしていた。

「カール?不正はダメだよ?」

ランディに見つかったようだ。しかしカールは止まらず、パイプを掴み、揺らし始めた。ランディが飛びかかる。

「おいっ!俺のソーセージ!」

飛びかかってくるランディを避けるカール。そのままランディはパイプに突っ込んでいった。

「痛ってぇ!」

鈍い金属音と共に、ランディは自分自身の手でベッドを揺らすことになった。

「…お前ら何してんの?」

今の揺れでクレイが起きた。毛布を掴んで離さない状態だ。ランディが遠慮なく言う。

「オーロンが落ちるか落ちないか賭けてるんだ、お前も参加しないか?」

寝ぼけていて状況が掴めていないクレイ。少しして、クレイの意識が起きてきたところでニヤッと笑い言った。

「落ちないな。こいつが寝てる時に落ちたとこを見たことない」

言われてみれば確かにそうだ。オーロンが落ちたところを見たことない。カールが頭を抱えたのが見えた。

「クソ…ソーセージは渡したくない…」

カールがもう一度ベッドのパイプに手を伸ばそうとした。その手をクレイが掴み、カールにニヤリと見せた。

「させねぇよ?俺だってソーセージ欲しいんだけど」

カールが振り払い、反対の手を伸ばす。その手をランディが止めようとした。が、その手を俺が振り払った。

「ダレク?おい?」

ランディに対して俺はニヤッと笑って見せ、言ってやった。

「悪いな、俺もソーセージは惜しいんだよ!」

「サンキューダレク!共闘だ!」

カールが言い、クレイの毛布を引っ剥がす。

「おい!それとこれは関係ないだろ!毛布返せ!」

クレイがベッドからカールに飛びつく。カールは闘牛士みたいに毛布でかわしてみせた。ただし毛布は取られたが。カールがオーロンのベッドに近づくと、ランディが俺の手を振り払い飛びかかる。足首を掴み、思い切り引っ張った。カールの足は床を滑り、前に倒れた。

「痛ったぁぁぁぁああああああ!!!」

カールベッドの鉄パイプに顔面をぶつけた。

「鼻血出てるし…このやろ!」

「うえっ…」

足首を掴んでいるランディを、カールがかかとで蹴り上げる。当たり前のように顎に当たり、ランディが倒れる。

「ランディ…大丈夫そ?」

俺が声をかけるとランディが震え声で言った。

「…いてぇ」

そんなことお構いなしにカールはオーロンをベッドから引っ張り出そうとしていた。クレイがカールを後ろから止めに入る。

「させるかよ」

「邪魔だ低身長」

カールの一言にクレイがカチンときたのだろう。何を思ったかクレイがカールに肘打ちをお見舞いした。もちろんカールの頭に当たり、カールがふらふらして倒れる。

「よし!ソーセージは俺のものだ!」

と喜ぶクレイを俺が枕でフルスイングした。そのまま自分のベッドに倒れこんでいくクレイを優雅に眺めた。

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