第31話 希望

1時間が過ぎた。寝ようにも胸が騒がしくて眠れなかった。その時、医者を先頭にタランチュラのメンバーがゾロゾロと入ってきた。

「…ウィルソンさんの、現在について話しますね」

オーロンが拳を握った。

「手術は成功しました。しかし、脈も呼吸もまだ弱く意識がいつ戻るかもわかりません。やれることはやりました。あとは彼の精神力に頼るしかありません」

この場の全員がほっとしたような表情になった。医者は話を続ける。

「ヘルテル司令から通達を預かっています。「ウィルソンの退院と同時に、タランチュラも戦線に復帰させる」とのことです」

つまり、俺たちは一時的な帰還か。あとで逆戻りだがな。そう言い終わると、医者は病室から出て行った。気持ち悪い静寂に部屋が包まれた。

「…クレイは、助かったんだよね?」

ランディが控えめに言う。

「ああ…」

カールが掠れた声で反応すると、膝から崩れ落ちて倒れてしまった。

「カール!?」

オーロンが慌てて近寄り見てみると、安心して言った。

「寝てるだけだ。不眠とかの疲れが一気に出たんだろう」

オーロンがカールをソファまで持っていき、寝かせた。

「俺たちもちゃんと寝る時間が欲しいな」

ランディが言う。俺は無意識のうちにカレンダーを見た。12月24日、時計は午前9時だった。明日はクリスマスか。去年はどうだったかな…と考えていると、ランディとオーロンが言ってきた。

「ちょっと寝てくる。お大事にしろよ」

そして病室を出ていった。静寂がまた戻った。俺の独り言が響く。

「…去年のクリスマスってどうだったかな」


「グッドモーニング!!!」

「うるせぇ耳元で大声出すな!」

普段は一番最後に起きるランディが、俺のベットに向かって叫んでいる今日はクリスマス。時刻は朝の四時。…こいつ頭おかしいのか?

「朝っぱらから騒々しいぞ…」

ランディの声で起きたカールが毛布を被り直しながら言った。かわいそうに。

「あー目が覚めた!もうちょい眠れるのに!」

この騒音の中、全く起きないやつが2人いた。高いびきをかいて寝ているクレイと、寝相が悪すぎるオーロンだ。

ちなみにオーロンは今ベッドから落ちそうになっている。

「おい、オーロンが落ちるか賭けようぜ」

いつもより格段にハイテンションなランディが提案する。

「いいぜ、落ちるほうに朝食のソーセージ一個譲ってやる」

ノリよくカールが参戦する。俺もそれに同意だ。

「俺も落ちると思うけどな」

「じゃあ俺は落ちないほうに賭けよう」

ランディは悪そうな笑みを浮かべ、ニヤニヤしながらことの成り行きを見つめていた。

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