第30話 瞼は重い
「お前らが運び込まれてから7時間経ってるんだよ。搬送する時間とか、色々含めたらもうちょいあるか?」
そんなに経ってたのか…。俺全然目覚めてねぇな。オーロンが補足した。
「お前に刺さったナイフには多分毒かなんかが塗られてたんだろう、って医者が言っていた。かなり強力な毒だったから起きなかったんだろ」
じゃあ、クレイは?
「クレイはどうなったんだ?」
オーロンが険しい顔で言った。
「お前に刺さったナイフと同じナイフが、クレイの腹部大動脈を刺した。医者に最初見せた時、なんて言ったと思う?」
と言ったくらいでオーロンが泣き始めてしまった。後ろにいたランディが肩を抱いてやっていた。カールが重々しく口を開いた。
「…この状態でなんで生きてるんだ、って。我々の知恵と知識を振り絞り最善を尽くすが、最悪の状況は覚悟していてくれ、ってさ…」
待ってくれ、嘘だろ?俺が刺されて倒れたあと、エンツァイはクレイに追い討ちしたのか?なぜ?前回クレイに屈辱的に負けたから?じゃあ、まさか、俺が倒れたからクレイを守る人がいなくなって…。
「…俺たちが倒れていた場所の状況を説明してくれるか」
カールが続けてくれた。
「お前が倒れていた前にクレイが倒れていた。クレイの所持物からナイフが消えていた。それ以外は知らない」
俺の前?つまりクレイは俺が倒れた後に動いた。つまり、クレイは俺を守ってああなったのか…。項垂れているとランディの声が聞こえる。
「すまん…オーロンソファまで連れてくわ…こいつ寝た」
声の方向を見ると、ランディがオーロンを背負うような形で病室を出ていくのが見えた。オーロンの方が多少大柄なので、ランディも大変そうだった。
「クレイは他に2発の銃弾を受けてる。二発とも体内に残留してるらしい」
カールが淡々とクレイの容体を述べていく。聞けば聞くほど容体は悪化していくので、もう聞きたくなかった。
「蹴りも入ってるから内臓への影響も…」
「…すまない、黙ってくれないか?」
カールは黙り、下を向いた。そうしてもらえるとありが…
「お前本当に弱ぇな」
カールが吐き捨てた。
「クレイがエンツァイに立ち向かってああなったのに対して、お前何した?一発刺されて終わりか?クレイがああなった原因は自分だって気がついてるだろ」
一気に捲し立てるように吐き捨てていった。
「覚えとけよ、クレイが死んだらお前のせいじゃない。でも俺はお前を許さない」
カールはそこまで言い終わると足早に病室を出て行った。病室には静寂が訪れた。冷め切っていて後味の悪い静かさだ。カールの顔が頭から離れなかった。憎しげな表情の下に、悲しみと不安が入り混じったものが見えていた。見た目的にも深いクマができており、今この時までずっと寝ずにいたんだと考えれた。
「はぁ…」
このあとどうしようか。今はクレイの手術が終わるのを待つことしかできないな。
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