第25話 再燃
運ばれてきた飯は普段食べているのと同じはずだったが、随分と不味く感じた。冷めているからか、それともこの空気が物凄く重いからか、わからなかった。多分後者だろうな。
「…お前ら、深夜少し起きててくれ」
ランディが声を低くして言った。
「あいつらの供述次第で俺たちが処刑される可能性がある」
「は?あいつらはそんなことしない。そうだろう?」
「そうだランディ、それほど人間不信にならないでくれ。あいつらと過ごした仲なら、そんなことしないとわかるだろう」
ランディは俺たちを睨みつけて続けた。
「…人間不信にならない方がおかしいでしょ。大事な友達は殺し合うし、お前らからはひどい殺気を感じる。普段と違うオーラなんだよ、まるで氷みたいな…冷酷な雰囲気で」
オーロンも俺も黙って聞いていた。
「親友を失うことが一番の恐怖なのはみんな同じはずだろ。それなのにどうしてあの二人は殺し合いをしたの?」
それは、クレイの生い立ちにあるだろう。俺はわかっていたが、言い出せなかった。クレイは、怒りや憎しみと言った感情で理性を無理矢理を抑えつけることができる。
「だからそういう理由。お前らが寝ようが俺は起きる、わかったな?」
ランディは俺たちの返事を待つことなくベッドに入ってしまった。俺たちも話すことがなかったので必然的にすぐベッドに入ることになった。無機質な鉄パイプのゴツゴツがやたら強く感じた。
「…レク……ダレク!起きろバカ!」
寝ぼけ眼で見ると、肩を揺さぶるランディの姿が目に映る。
「敵襲だ!早く行くぞ!」
「了解…装備は?」
「ベッド下にいくらでもあるだろ。行くぞ寝坊助!」
すぐに目を覚まし、戦闘服に着替える。ベッドの下に手を突っ込んでいたら、先に準備を終わらせていたオーロンが鋭く聞く。
「扉はどう開ける?外から閉じられてるだろ!」
「あ…」
ランディが頭を抱えていると、外からガチャガチャと音が聞こえた。全員に緊張が走る。俺たちは入り口に向けて銃を構えていた。音が止み、外から銃声が二発聞こえる。そして、カチャリという音とともに、外の鍵が開いた。間髪あけず扉が開かれる。そこに立っていたのは、クレイだった。足元には敵兵士がいて、頭から血を流している。多分クレイがやったのだろう。
「よ、元気してた?」
「暴風!監禁されてたのは?」
「もちろん扉蹴り壊した!」
ニヤッと笑ってみせるクレイ。たった今人を殺したとは思えない笑顔だ。クレイは丸腰のランディにポイっと自分の持っていた拳銃を投げ渡し、自分のベッドの鉄パイプの隙間から、拳銃を取り出した。ドットサイトやらグリップやら、カスタムがゴテゴテに付けられている。そして部屋中を見渡し、言った。
「さて、カール助けに行くぞ」
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