第24話 割れた貝殻

帰還後、ヘルテル司令の部屋で、兵士に囲まれて処分が言い渡された。

「…とりあえず、この二人は個室に監禁しとけ。話し合って二人の意見を聞いた後に判断を下そう。その時まで他のタランチュラメンバーも部屋で軟禁だ」

「軟禁?軟禁って?」

「つまり、軍関係の作戦、訓練など、他の兵士の生活に関与することを禁ずる。君たちは食事など全てを部屋でしてもらうってことだ。食事は毎日、朝昼晩部屋に兵士が届けにくる」

「トイレは?」

「朝と夜に兵士が同行する」

「移動中逃げ出したら?」

イタズラ半分に聞くと、無感情に帰ってきた。

「見つけ次第射殺する。君たちの引き起こしたことははっきり言って反逆行為と呼べる。今すぐに処刑してもいいくらいだ。さて、話は終わり。部屋に戻してくれ」

ヘルテル司令の言葉で連れて行かれる俺たち。部屋に入ったことが確認されると、バタンと扉が閉まり、外から施錠する音が聞こえる。足音が遠のいたことを確認すると、ベッドに横になった。

「…訓練なくなってラッキー!」

ランディが控えめに喜ぶ。

「どこが」

オーロンがドスをきかせて言うのでランディが肩をすくめた。実は俺も気が気でなかった。

「…ダレク、クレイとカールこの後どうなると思う?」

俺はその言葉を口に出したくなかった。

「…取り調べを受けるだろう」

「そのあとはどうなる?」

「………」

沈黙が部屋を包む。オーロンが口を開く。

「あいつらが処刑される場合、俺たちにも最後の面会くらいはあるよな?」

「…そうだと信じたいね」

俺はベッドから起き上がり、ベッドの下の鉄パイプの隙間に手を突っ込んだ。取り出したのは拳銃だった。

「…何する気?」

ランディが聞いてきたので、こう言ってやった。

「最悪の場合、あいつらを助けて逃げるぞ」

「正気かい?ここに見張りは何人いると思う?」

「だとしてもだ、友が処刑されるのを目の前で見てられるか?ランディ、お前ならわかるよな?」

ランディは黙ってしまった。

「ダレク、まだ最悪の場合になったわけじゃない。その時が来るのを待て。あとそろそろ晩飯の時間だ。静かにしてた方がいいだろう」

それもそうか、と思い、俺はベッドの下に拳銃を戻した。ランディが呟く。

「ダレク、過去のことをえぐるのやめてくれないか?お前も兄について言われるのは嫌だろ?」

その言葉は俺にもオーロンにも刺さる。ランディは続ける。

「…この話題は一旦終わり。切り替えて飯を待とう」

切り替えはつかず、そこから無言の時間が始まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る