第26話 再開
一階までなんとか降り、急ぎ足でカールの部屋に向かっている時だ。
「カールの部屋は俺の部屋と真逆の方向だ」
クレイが周りを警戒しながら話す。戦闘は続いていて、銃弾が飛び交っていた。そこら中敵味方が入り乱れていて、何発か誤射してるのではないかと思うくらいだった。遮蔽物を上手く使いながら部屋への距離を縮める。
「どけアホども!」
クレイがカスタムされた拳銃で道を阻む者を薙ぎ倒して行った。今回もルタードの構成員が含まれているようだ。倒れた者の戦闘服を見ると、蛇のような牙がついた口の紋章がつけられていた。牙はなぜか人の(人といっても"人ならざるもの"といった方が正しいか)もののように感じ、気味が悪かった。それにしてもクレイの拳銃の銃声が異様に小さく感じる。何かカスタムがされているのだろう。
「暴風、銃声がやけに小さくないか?」
「…さあな?」
クレイは誤魔化した。その時、後ろから銃声。前で倒れる男。
「お前ら集中しろ。危なっかしくて仕方ない」
ランディが後ろから前の敵を撃ってくれたのだ。
「危なかったぜ、サンキュー」
「撃たれたら致命傷だよ、少なくともオカリナのとこまでは無傷で辿り着かないと」
そうして廊下を辿り、敵が少なくなってきた時だった。戦線から抜けたと思っていた。
「…追われてないか?」
クレイが小声で言う。
「俺もそう思ってたところだよ」
俺が答えると、オーロンが言った。
「ここで止まって正面から受けよう。その方が都合がいい」
「了解」
全員が立ち止まり、振り向いた。追ってきていた者は、慌てることなく俺たちの前に姿を現した。顔に大きな傷がある髭面。アンラーン・エンツァイだった。
「…久しぶりだ、よく生きていたな」
エンツァイは全員の顔を苦々しく見た。クレイが一歩前に出て言う。
「どうだ?死ぬ気になったか?クソジジイ」
エンツァイは重いため息をつき、言った。
「俺は、まだジジイと言われる年齢じゃないと…」
その言葉が発されると同時くらいで、クレイが懐に入り込み、ナイフを振り上げていた。が、エンツァイは相変わらずの身のこなしでかわして見せた。
「…変わらない卑怯さだ」
「それは俺にとって褒め言葉だぜ?」
クレイがニヤリと凶暴な笑みを見せた。エンツァイはゆっくりと腰からナイフを引き抜き、構える。
「…来い」
「言われるまでもないね!」
クレイが正面から飛び掛かる。エンツァイは軽くナイフで受けると、ナイフを横薙ぎに振り反撃した。軽く後ろに飛んで避けるクレイ。その顔には笑顔が浮かんでいた。
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