第17話 新しい陽
何時間経ったかな。外がだんだん明るくなってくる。割れたままの窓から朧げな明るさが流れ込んでくる。昨日から大体二徹目くらいだが、全く眠くならない。不意に部屋のドアが開けられた。
「…ダレク」
カールだった。
「来い。手術終わった」
正直に言うと今は何もしたくなかった。ただただ放っておいて欲しかった。
「…あとで行く、先に行っておいてくれ」
できる限り普段通りに答えたはずだが、読まれた。
「あのな、いつまで周りを突き放す気だ?ナヨナヨしてんじゃねえよ、てめえも俺も生きてんだから今まで殺してきた奴らの分生きろ。どんな殺し方でも死んだやつは生き返らねえんだからよ」
そしてカールは目線を明るくなってきた外に合わせて言った。
「…俺も惨殺すんのは正義と思ってないけどよ、そんくらいは自分を許してやりな。そうでもしないと精神が持たない」
そして部屋から出て扉を閉めた。そして扉の向こうからぐぐもった声が聞こえてくる。
「…こいよ」
カールが去ってから、数分後。手汗で滲んだ写真をもう一度見つめる。写ってる人は全員絶好調な笑顔だった。ため息を吐き出し、ベッド下に戻した。外はもう明るくなっていた。
「…ふわぁ…寝てたや。ランディはどうなった?」
「なんも、寝てるだけさ。もうそろ目覚めるだろう」
病室の中からクレイとオーロンの声が聞こえる。ドアノブに手をかけたところで一瞬躊躇い、そのまま扉を開けた。すぐにクレイとオーロンの顔が見える。
「おはようダレク。ランディの容体聞いた?」
俺が横に首を振るとクレイは説明してくれた。
「こいつめっちゃ幸運だぜ?手術成功で銃弾は摘出済み、感染症もなし。二週間ぐらいで退院できそうだってよ」
本当によかった。それだけでもかなり精神的に楽だった。
「ダレク、くまが酷いぞ。寝てないだろ」
「そっちこそ、クレイ、なんも食ってないだろ。頬がやつれてる」
と言い合っていると、カールが入ってきた。片手に乗り切らないほどの果物とチョコレートを持って。
「お前ら食え、お見舞いだ」
クレイが開いた口が塞がらないようだ。しかも目がキラッキラに輝いている。
「それどっからとってきたの?」
オーロンがチョコレートを一つ口に放り込みながら尋ねる。
カールは小声で全員に耳打ちする。
「ヘルテル司令から差し入れさ!」
「マジかよ、あの司令甘くないか?」
クレイが3個同時にチョコレートを口に放り込んだのでゲホゲホむせながら聞く。
「さあな、あの人なんだかんだ言って優しいし。あとそのままあの人が司令となるらしい」
カールもチョコレートを食べながらもごもご答える。
「…俺の分のチョコレート残しとけよ!」
ベッドからそんな声が聞こえた。クレイが振り返って言う。
「ランディ!いつ起きたの?」
「たった今。あの男はどうなった?」
「フルボッコにしてやったさ。な?」
クレイが俺の方を向いてニヤッと聞くので、俺は重々しくニヤッと返した。
「…その通りだな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます