第2話 豚の証言(出題編)
ここからハト丸の捜査は始まります。
この小説は動物が人のように生きてる世界での殺人ミステリーです。
けものフレンズ風の話せる動物キャラクターがいて、尚且つ現代社会風の世界で、ヒトが頂点で動物はそれ以下、というオリジナルな世界観となっています。(リョコウバトのお嫁さん、地獄に堕ちたリョコウバトの続編ですが、見なくても分かるように書いています)
様々な情報から推理して、事件の謎を解いてください。
今回の大きな謎は、【本当に豚の子供が殺されたのか?】です。
どうしてブタオの死体が見つからないのか?
なぜ真犯人は真実を隠そうとしているのか?
真相を明らかにしてください。
そして、このミステリーを解き明かすカギを3つ提示します。
1、容疑者のほとんどは、何か嘘を吐いている
2,この動物社会特有の法律・ルールが真相に関係している
3,推理に重要なヒントは★マークがつく
以上、お楽しみください
***
~事件現場・豚と猫の集落の境界付近~
「現場検証に来たのだが」
「誰もいませんね」
ハト丸とハナは周囲を見回しました。
だだっ広い空き地。
周囲に家はなさそうです。
「この土管が積まれた場所でブタオを暴行した、と容疑者の猫――ブチ・シャケ・フクは証言しました」
キリーナさんの説明。
「そして警察の現場検証の結果、このあたりで子豚の血痕が見つかりました。★
容疑者のブチ達が、ここで暴行を行ったという証言と一致しています」
ハト丸は色々見回ったが、特に警察の調査となんら変わらない検証に終わりました。
~豚の集落・豚の族長の家~
「ささ、粗茶ですが」
豚の族長、ブタ万次郎はハト丸たちをもてなした。
ブタ万次郎は高齢の爺さん豚でした。
「結構です。それよりもブタオ君の検死についてお尋ねしたいのですが」
「……それはすでにこちらがお渡ししたものですべてです」
族長が言っているのは、ブタの医者が検視した……とされる非公式な書類でした。
サイ十郎の言うところの、無意味な書類です。
「質問を変えます。なぜ、警察の検死の前に遺体を処理なされたのですか?
下手すれば死体損壊罪の罪に問われますよ?」
「ええ、——承知の上です」
「ほう」
「我ら豚の一族は、もともとは隣の猫共に支配されていたのです」★
「支配?」
「はい、隷属していた。と言い換えてもいいでしょう」
おおよそ100年前までは珍しいことではありませんでした。
ジャパリマンが発明される前は、肉食動物が特定の草食動物を家畜扱いしていた時代があったのです。
「そうなんですね」
「ええ。少なくともわしら豚は、猫に好意などもっておらん」
「……それとブタオ君の件と何の関係が?」
「未来のことを考えれば、ブタと猫はお隣同士、仲良くしていた方が得じゃ。
だから今回の事件、都合が悪い」★
「……」
「なんと身勝手な!」
キリーナさんは吠えた
「両種族の友好の為だからと、事件をもみ消そうとしたのですか! これが政治ですか!? 取引ですか!?
ブタオ君のことを、命の価値をなんにも考えてない!」
「ほっほ、痛いところを突かれるのう……じゃが」
ブタ万次郎は老獪の笑みを浮かべる。
「ブタオの母親がそうしてほしいとワシに直談判したのじゃ」★
「……」
「なんだって——」
ハト丸は黙り、キリーナは驚きました。
「それにな、この件は猫と豚の問題じゃけんのう……
よそ者の探偵ごっこはわしらの安寧を脅かすだけ」
「——ええ、そうですね」
ハト丸は答えた。
「探偵は秘密を暴き立てるもの、だから人々の安寧を脅かしてしまうこともある。
——でもそれだけが、探偵の仕事ではないことを見せて差し上げましょう」
「——若造めが」
こうしてハト丸たちはブタ万次郎の家から去るのでした。
***
~ブタオのおうち~
「すみません」
「……はい。どちら様?」
玄関から出てきたのは、ブタオの母親、ブタ美です。
一般的な中年の女ブタですが、なんだかやつれているように見えます。★
「ブタオ君の事件を捜査してる探偵のハト丸です。
お話ししたいのですが、お時間ありますか」
「……話すことはありません。帰ってください」
そういって、ドアを閉めようとしました。
「聞きたいことがあります!
どうして、検死するより先に、ブタオ君の遺体を葬るよう族長に頼んだのですか!」
「あなたたちに関係ありません!」
ガチャンと鍵がかけられました。
「——なぜ、息子のブタオ君がどうして死ななくてはいけなかったのか、知りたくないのですか?」
ハト丸はドア越しに母親の豚に尋ねました。
「知ったところで意味なんてないです。
それに悪いのは猫共。奴らがやったことですよね。ブタオは猫に殺されたの。
全部、全部、全部アイツラが悪い……!」★
「あなたは、猫のことが嫌いですか……?」★
「……」
それきり、母親は何も話しませんでした。
***
~旅館の部屋・推理パート~
「まずは豚たち集落で色々調べましたが……たしかにこの事件、においますね」
ハト丸は改めて言いました。
「サイ十郎刑事が怪しんで当然だと思う
ただ、警察が面倒くさがるのも分かる」
「といいますと?」
ハナちゃんは尋ねました。
「母親含めて、ブタオくんが殺されたことに誰も怒りを感じてない」★
「……悲しんですらいなさそうでした」
「ま、待ってください!」
キリーナさんはハト丸とハナちゃんに反論しました。
「母親の……ブタ美さんの様子は、なんだかやつれて疲れてるような感じに見えませんでしたか?
息子を失っていろんな感情に苦しんだ後だと思うの!
だから、怒りとか悲しみを通じて、すでに疲れきっているのではないですか?」★
「それはそうかもしれない」
「だったら」
「でも、そのあとの行動が矛盾してるんだよ」
「矛盾ですか?」
「例えば、愛する息子が殺されたのなら、通常の母親であれば犯人を許すはずがない。
——なぜ、僕たちに協力しない?」
「それは……まだ私たちが信頼されてないから……」
「それは分かる。けど、それならなぜ警察にきちんと捜査してもらおうとしないのかが分からない。
警察ですら信頼してない、というわけじゃないだろ?」
「……そうですね」
「——わざわざ、族長に息子の遺体を検死の前に処理してくれ、ってお願いする?」
「……ぴきーん!」
「ぴきーん?」
キリーナさんは推理をひらめきました。
「わっかりました! きっと、あの母親ブタは族長に弱みを握られ、脅されているんですよ!
すべては族長が悪いんです! 『猫との友好のため』って理由で、ブタオ君の事件の隠ぺいを母親にも協力させてるんですよ!
息子を失った喪失感と、族長に脅されて協力させられてる苦しみの狭間にいるからこそ、あの母親はやつれていたんですよ!」
キリーナさんはどや顔です。
「どうですか! わたしの推理!」
「……今のところ、この推理を否定する材料はないね」
ハト丸は考えます。
(たしかにこの推理で大筋は通る。が、それだけでこの状況になるのはおかしくないか?
族長は、猫と仲良くしていた方が得と言っていたが、それなら警察に捜査させたうえで、猫と話し会えばいいだけじゃないか。
遺体を隠ぺいする理由がない)★
ハト丸はキリーナさんとハナちゃんに言いました。
「明日は猫の集落で捜査しよう。そこでまた情報を集めて、それから推理しよう」
「じゃ、これで今日はお開きですよね!」
「そうだよ、ハナちゃん」
「だったらおいしい夕食を食べに行きましょう!」
「いいねえ。おいしいドングリはあるかな」
「もちろんあります! それからみんなで温泉に入りましょう!」
「いいねえ。もちろんキリーナさんと一緒かい?」
「もちろんです! わんわん!」
「いや、なんでわたしが一緒に入るの!?」
「「いいじゃん」」
「なんだこの夫婦」
なんだかんだで、混浴で三人一緒に入るのでした。
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