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 入学式は案外退屈には感じなかった。


 教室に戻るまでの道のりで、僕はまた食杉さんに話しかけてみることにした。こう言ってはなんだが、他のクラスメイトたちは、同じ中学校だった者たちで固まっているため、孤立している者(僕と食杉さん)同士でしか話せないのだ。


「なんか入学式短かったね。」


 そう切り出した。


 無難な始め方だったと思う。周りからも、「なんか短かったね~」などという声が聞こえてきていたので、全員共通の感覚だろうと、そんな考えを元に口にした言葉だった。


「私が時間を食べてしまったからね。」


 バカタレ。


 やはり異常者だ。しかも、よく見ると手にプロテインバーを握っている。移動中も食べる気だ。僕は唖然とした。


「時間を食べたといっても、さすがに時間そのものを飛ばした訳では無いけれどね。あの体育館の内部の人間の時間に対する意識をほんの少し食べただけ。だから、始業式自体は正常に終わったことになっているわ。」


 僕が絶句しているのを見てフォローを入れたのだろうか。むしろ悪化したが。


「そ⋯そうなんだ⋯。」


 仲良くなれるかもしれないというほんの少しの希望を抱いた僕がバカだった。結局、教室で二郎系ラーメンを食べるような人間は、どうしようもない変人なのだ。これ以上関わるのはやめよう。そう決意し、僕は急ぎ足で教室へ戻った。

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