第2話美容室

明日は、付き合って間もない彼女との初デート。

美容室でかっこよくならなきゃ。

予約を15時にして美容室へ向かった。

「いらっしゃいませ。マリモにようこそ」

「予約していた針山ですが」

「お待ちしておりました。こちらへ」


美容室は初めてだった。いつもは近所の床屋だが、今日は初めて美容室で髪の毛を切る。

21歳。


「今日はどんな感じで?」

と、美容師が言うと、

「カッコよくして下さい」

と、言って美容師に任せた。

「パーマネントは当てますか?」

「ヤメて!パーマはいい」


美容師は早速、髪の毛にハサミを当て始めた。

「いてて、何やってんの?」

「ペンチパーマです」

「人の髪の毛をペンチで挟むなよ!」


「じゃ、笑いここまでにして、カットします」


美容師はリズミカルにハサミを入れていた。

途中、霧吹きで水を吹きかけながら。

「ねぇ、店員さん。なんで、カットの途中、霧吹きで水を吹きかけるの?」

「水?」

「うん、水でしょ」

「違います、焼酎です」

「オレは焼き鳥か?焼酎って、焼き鳥を美味しく焼くときに使うもんだろ?もう、真面目にカットしてくれてよ!うわっ、くっせえなぁ」

「後で、シャンプーしますから」


鏡を見た。腕は確かだ。


「じゃ、シャンプーしますね。押し倒します」

「ヤメてくれよ!何が押し倒しますだ、馬鹿」


針山は、背もたれを倒された。

「お客様、何か読みますか?」

「読める体勢じゃないだろ」


「お湯加減どうですか?」

「いいよ」

「かゆい所ありますか?」

「つむじがちょっとかゆいかな」

「……」

美容師は流し始めた。

「え?聴いただけ?」

美容師は、髪の毛をドライヤーで乾かし、

「何か?付けますか?赤味噌がありますが」

「……いいや。このままで」

「はい。お疲れ様でした。後ろはこうなっています」

「はい」


出来上がりは、上出来だった。変な美容室だけどまた使おうと思った。

会計は、4800円だった。

マリモは、繁盛した。


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