世にも喜劇な物語

羽弦トリス

第1話検問

年末年始の飲酒運転撲滅の為に、その日の晩も警察は飲酒検問していた。

1台のベンツが検問の為に停車した。

運転手は白髪のおじいちゃんだった。


コンコン


「お父さん、ウインドウ下げてもらえるかな?」

と、警察官は運転手に言う。

「え?」

「だから、お父さん、ウインドウ下げて!」

「は?」


「ダメだな。このじいさん耳が遠い」

警察官は、このベンツのおじいちゃんを怪しんだ。


コンコン


「だ〜か〜ら〜、ウインドウ下げて!」

「……はい、ウインドウね。開きますよ」


反対側のウインドウが下がった。

「お父さん、こっちこっち」

「……すまんのう。はい、こんばんは〜」

と、おじいちゃんはウインドウを下げた。


「お父さん、今、検問やっててね。免許証見せてもらえるかな?」

「め、免許……何?」

「免許証ですよ、免許証」

「メンキョショウ?何それ?」

「お父さん、免許証が無いと車運転しちゃダメなんですよ!」

「はいはい、お疲れ様でした。じゃ!」

「待ちなさい、お父さん。……お父さん、ちょっと臭うね?」

「さっき、屁をこいたからね」

「誤魔化さないの。お酒飲んでるでしょ?」


「今日、孫と会ってね。久々に。それでお銚子3本飲んだだけだよ」

「そう言うのを、飲酒運転て言うんですよ!」

「だから、孫に会ってね。軽くお銚子を3本飲んだだけなの!」

「お父さん、お銚子に何が入っていたの?」

「おい!そこの若いの!私を馬鹿にしてるのか?酒に決まってるでしょ!」

「だから、そのお酒を飲むと飲酒運転って言って罪が重いんですよ!」

「あんた、なに私に管巻いてるの?」

「管巻いてるのお父さんじゃありませんか!」


警察官は、無線で連絡してベンツのナンバー照会をした。


「お父さん、良い車乗ってるね」

「うん。私も頑張ったからね」

「今ね、ナンバー照会したら女性の車で一昨日、盗難届けが出てるんだけど、どうしたの?」

「え?コンビニに落ちてたから拾ったの」

「拾った?ベンツが落ちてたってどういう事よ、お父さん」

「……あ、借りたんだ。失敬失敬」

「借りた?誰に?」

「誰か知らないけど、貸してって言ったら、良いよってね」


「お父さん、降りて!」

「何で?」

「だから降りて」


この老人はふらふらだった。

「免許証はない。飲酒運転。車の盗難。お父さん、逮捕するからね」

「何でまた」

「いい歳こいて、全く。21時3分現行犯逮捕だから」


おじいちゃんは、逮捕された。

毎日、お疲れ様です。

警察の皆さん。

飲酒運転は辞めましょう。


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