炎上すべきもの in 天空高校
キーンコーンカーンコーン
キーンコーンカーンコーーン
ガラガラガラ
「はいみなさん静粛に。いまから授業始めますよ。」
「はーい」
バタバタバタ ギギィ ストン
「みなさん早いですね。それでは委員長号令を」
「起立!」
ギギィ スタッ
「礼!」
バッ
「着席!」
ストン ギギィ
「それでは今日の授業はですね」
カッカッカッカッカッ
「えー黒板に書いてあるように、今日は炎上すべきものについて議論していきたいと思います」
「昨今芸能人政治家ユーチューバーなどなど色々な人の言動がSNSで炎上しています」
「今回の議論ではそれらの炎上が本当に叩かれる必要のあるものだったのかを実際にあった炎上例を元に各班で話し合ってください」
「ではその炎上例ですが」
スッ
「先生ー」
「はい佐藤くん」
ギギィ スタッ
「学校でこんなことを話す必要があるんでしょうか」
「なるほどいい質問ですね」
トン…トン…トン…
「考えてみましたが思いつきませんでした」
「そのため理由は将来みなさんがテレビに出たときのためとしておきます」
「分かりました。正直にありがとうございます」
ストン ギギィ
「それでは机を班にしてください」
「はーい」
「いい返事ですね」
ガタガタガタ ギギィ
「それでは話し合いを始めてください。」
「先生」
「はい伊藤さん」
「まだ話し合う内容を聞いてません」
「そうでした。失礼しました。さすが委員長よく気づいてくれましたね。」
「えー議題となる炎上例は」
カッカッカッ
「不祥事をした芸能人の炎上です。起こした不祥事は不倫です。女優さんが結婚しているにも関わらず別の男性と恋愛関係になりそれを週刊誌に取り上げられました」
「その後女優さんはSNSで弁明します。その内容は週刊誌の内容は間違いであり記事の男性はただの友達であると、世間を騒がせて申し訳ないというものでした」
「しかしその後ホテルに行っていたところの写真が週刊誌に出たことで疑惑は確信になり、本人もSNSで嘘を認めこれが炎上しました」
「これが今回の議題の内容です。みなさんにはこれが炎上する必要が有るか無いかを考えてもらい、意見をどちらかにまとめてもらいます」
「まとめた意見について他の班を納得させられる理由も考えてみてください。それでは話し合いを始めてください。」
………ガヤガヤガヤ
「なんでこれ話す必要あんの」
「先生がするって言ったんだからしょうがないでしょ」
「さすが委員長。おれやる気でないよ」
「まあ佐藤いいじゃねぇか。さっさと話して終わらそうや」
「竹田くんの言う通りよ。4人全員の意見聞いてまとめるんだから。もう始めるわよ」
「はいはい」
ハァー
「それじゃあ今回の例について炎上する必要があったと思うか、竹田くんはどう思う?」
「おれは炎上すべきだと思うな。不倫してしかもそれを嘘ついたんだから」
「そうね。確かに不倫も嘘も良くないわ」
「仮に不倫がバレてすぐ謝ってたらそんなに炎上しなかったんじゃねーか」
「私もそう思う。桜井さんは今回の炎上どう思った?」
「わ、私!?私は…まだちょっとよく分かんない」
「おれもまだまとまってませーん」
「佐藤くんには聞いてないし、考えときなさいよ。」
「ご、ごめんなさい…」
「あ、違うの!桜井さんに言ったんじゃなくてこのやる気がはなから無い佐藤くんに言ったのよ」
「ごめん…なさい…」
「先生ー伊藤さんが桜井さんを困らせてます」
ガンッ!
「いって!殴るか普通」
「ごめん我慢出来なくて。最低な男だわほんと」
「真面目一徹女は手が早いっすね。炎上例がイラついて人を殴ることは炎上すべきかだったらすぐ話せるわ」
「じゃれてないで話戻そうや」
「じゃれてはないんだけど、ごめんなさい。でもみんなの意見聞かないと話進まないんだけど」
「伊藤はどう思ってるんだよ。おれらに聞く前にさ」
「私は竹田くんと一緒で炎上すべきだったと思う」
「もちろん芸能人にもプライベートは守られるべきであって今回の話はとてもプライベートなもの、部外者の私たちには関係のないことだけど」
「テレビに出ている人は視聴者からの人気で成り立っていると思うの。女優さんなら演技の上手さか顔の良さか他の何かなのかは分からないけど、それらが人気を生んで、結果テレビに出てると思うから」
「だから私は不倫していたことそのものよりもそれが明るみに出たことが問題だと思う」
「人気を守る努力は芸能人自身がすべきことで、不祥事がないと思わせることはその努力の一つだと思う。それが今回週刊誌に出てしまって、一度は嘘をついてまで誤魔化そうとしたけどそれすら突き通せなかった」
「週刊誌からどんな証拠が出ても事実じゃありませんって言い続けるべきだった。それが人気を商売道具にしてる芸能人の義務だと思うから」
「…まあ他人事だから言えることでしょうけどね」
ほぉー
「なるほどなー、さっきはそんなに考えずに言ったけど、さすが委員長。考えさせられるな。」
「炎上すべきってよりは炎上してもしょうがないって感じだけどね」
「確かに!そっちの方がしっくりくる」
パチパチパチ
「やめてよ竹田くん。おおげさ」
「いやすげーよ。尊敬するわ」
「まあ間違ってないとは思ってるけどね」
ボサボサ…
「おれは納得いかねーな」
「あら佐藤くん、やっと意見まとまったの」
「いや別に自分の意見があるわけじゃないんだけど、いま伊藤が言ったのには納得できないなって思ってさ」
「反対意見ってこと?いいわ。聞かせてもらおうじゃない」
「そんな言えるほど頭まとまってるわけじゃないけど」
「伊藤と竹田の会話聞いててさ」
「すぅーと頭をよぎった考えがさ……」
──────、
「早く言ってよ気になるじゃない」
「言いづらそうだな。気にしないから聞かせてくれよ」
「ちゃんと目見て言ってよね」
「いやなんかいい言葉見つかんなくて」
「まあいいや」
「おれが思ったのは」
スゥ パッ
「お前らそんな考えずっと持ってたらいつか人殺すぞ」
ドキッ、
「な、何よそれ。どうゆうことよ」
「俺らの将来人殺しかー、ストレートに言ったな」
「お前らが急かすから。別の言い方探してたのに」
「まあでも俺はお前らのその考えに人を殺す、っていうか人を殺せるほどの狂気じみたもんを感じる」
それって、
「俺達の意見に明確に間違ってるとこがあるってことか」
ボサボサ…
「いやそういう訳じゃない」
「二人の意見は間違ってはないんだよ」
「不倫はだめ。嘘はダメ。芸能人は人気が命。不祥事を隠せなかった事実」
「全部その通りだと思う。そもそも不倫の不祥事を不倫相手にリークされるってことは、その相手に恨まれるようなことをしたからってことだろうしな」
「じゃあ!私達の意見は正しいじゃない」
「そこが違うんだよ」
えっ、
「正しいからなんなんだよ。」
「芸能人は俺達のペットじゃねぇだろ」
ハッッハッッ
「ふぅ…、あのさこの炎上で多少想像ありきとしても確かなことってなんだと思う」
「確かなことってなんだ」
「これも言い方難しいな。確かなことっていうか確かに起きた出来事だな」
「起きたことっていうとまず不倫だろ」
そうだな
「そんで嘘ついただろ」
ああ
「炎上したろ」
まあそれも起きたことか
「他には…、なんかもうあるか?」
「それじゃさ、今度は感情に目を向けて考えてみてよ」
「起きた出来事に対して誰がどう思ったか」
それは…
「何言ってるかよくわからん!」
スーハー、スーハー
…ま、
「まず奥さんを傷つけたでしょうね」
まあ可能性としては高いな
「次にお子さんの教育に悪いわ」
それもあるかも
「次はファンを裏切った」
まあ嘘ついちゃったからな
「ドラマとかも打ち切りになっちゃうから他の芸能界の人にも迷惑をかける」
そうなんだろうな
「以上よ。私には他には思いつかない」
「そうか。竹田は?どう思う」
「感情ってそうゆうことな。まあ俺も考えは一緒だ。他には思いつかん」
「そうか」
ボサボサ…
「やっぱりお前らは人を殺せるよ」
バンッ!
「さっきからなによ!のらりくらりと、言いたいことがあるならはっきり言いなさいよ!」
バンッ!!
「じゃあはっきり言わせてもらうけど!」
「なんでそこに炎上した女優の気持ちが入ってねーんだよ!」
ふ、ふ、ふ、ふ、
「2人とも、やめようよ。みんな見てるよ」
「怒って机叩くやつ初めてみた」
スーーハーー
「炎上が…」
「炎上が起きたとき」
「やたらとそいつの非をみんなで見つけようとする」
「集団が考えた結果だ、その非は確かに間違ったものなんだろう」
「でもぶっちゃけるとその非がなんなんだ」
「それがその炎上させてる奴らになんの迷惑をかけたんだ」
「かけてねぇだろ」
そ、それは、
「それは!見てる人を裏切って人としてひどいことをししてたから」
「してたからなんだ」
「その女優が」
「不倫をしません。だから応援してくださいとでも言ってたのか」
「その人達は自分にしかない魅力を磨いて、芸をつけてテレビに出てるんだろ」
「そりゃたしかに不倫をした人としてみたら、見れなくなる役のドラマもあるだろうけど」
「正直みんな数年経てば忘れる。逆に不倫したからこそ似合う役もあるだろ」
「お笑い芸人だって一緒だよ」
「不倫したことを笑いに変えればいいじゃんか」
いやいやいや
「そんなことしたらさぁ」
「不倫相手や家族を傷つける?そう言いたいのか竹田ぁぁ!!」
「もうこえーよ。お前のほうが人殺しそうだよ今」
「そんなことはその身内で解決することだろうがよ」
「例えば奥さんや不倫相手がそれを不快に思って笑いに変えるのをやめろと言って、それでもやめなかったときに当事者が行動することだ」
「奥さんや不倫相手を気遣い、笑いに変えるのはだめだとか早いとか事情も知らない他人が批判するのが」
「それが優しさだって言うなら」
「それは絶対に違う!」
「優しさってもんは」
「それをする相手の顔が見えるから楽しいんだよ」
「言葉をかける相手の顔を見て、自分の言葉が相手にどう響くか考えながら」
「迷惑そうにしてないか、逆に傷つけていないか気をつけて」
「それでも相手を励ましたくて喜ばせたくて一生懸命やるから」
「だからその相手からありがとうって言われたとき」
「すげぇ温かい気持ちになるんだろうお互いに!」
「相手の状況を羅列して、常識に当てはめてでた優しさなんてなんの喜びも生まない」
「自己満足にすらならない。ただ自分が気持ちよくなりたいだけのストレス発散だ」
「俺はそんな優しさ絶対認めない!」
はぁはぁはぁ……
「なあ伊東」
なによ
「さっきお前がいった、奥さん傷つけたとか子供の教育に悪いとか」
「ファンを裏切ったとか他の人に迷惑かけたとかってあれ」
「あれってさ全部想像だよな」
…そうね
「それがどんだけ可能性高い想像でもさ」
「想像で人を傷つけるかもしれないって怖くないか」
………
「じゃあ例えば自分がファンで裏切られて傷ついたとしても」
「傷つけられたから傷つけてもいいってやり方を」
「その他の誹謗中傷に混ぜるって危険じゃないか」
………
「しかもさっきの、炎上した人の非ばっか考えてたお前らは炎上した人が傷つくことすら頭になかった」
「ちょっと考えたら思いつくはずなのに」
「そんなことにも気づかない状態の人達が大勢集まってする誹謗中傷って」
「炎上した人にはどう見えてるんだろうな」
……わたしが
「間違ってた」
スゥー
「とまでは言わない」
「不倫したやつなんて最低だし、やっぱり世間にそれ出た時点で非難は当然。その考えは変わらない」
「だけど」
「私は炎上のことを考えて、誹謗中傷した人に同情してしまって」
「その瞬間、言葉の怖さを忘れてた」
「それがただただ怖い」
あっ…
「あの!…」
「桜井さん。どうしたの」
「私伊東さんの気持ちすごく分かる」
「私…私ね」
「この女優さんの炎上知ってたの」
ん?
「そりゃテレビでやってたしな」
「ううん、そうじゃなくてそう言う意味じゃなくて」
フゥ…
「桜井さん大丈夫?もしかして泣いてるの?」
フゥ…、ズズッ
「私も誹謗中傷をしてた一人なの」
え…
「桜井さんが、していたの?」
「うん…、私この女優さん大好きで、この人が出るからドラマとかもたくさん見てて」
「そんな人がこんなことになって悲しくて」
「許せなくて」
「こんな人だと思わなかった。最低って投稿したの」
「他にもたくさんの人が似たこと書いてたからみんなも悲しいんだって思って」
「でもどんどん他の人の投稿見ていったら、死ねとか変態とか子供がかわいそうとか書いてあって」
「私急に怖くなってすぐに自分の投稿消したの」
「それからはすぐ消したから大丈夫だって思うようにしてたんだけど」
「今佐藤くんの話聞いて」
「私、とんでもないとこに参加してたんだって怖くなって」
「もしかしたら投稿を消すまでの間に本人が見てたかもしれない」
「それでもし傷つけてたら、その傷はそこに投稿されてるたくさんの人が言葉から受けた傷なんだ」
「でもその人の傷の大きさを、その責任を、それが私一人の言葉のせいじゃなくても」
「私は背負わなきゃいけないんだ」
「でもそんなの私には背負いきれないって思った」
「ホントに私ばかだ」
ズズッ わたし…
「桜井さん…」
でもさ
「その反省して泣いてる顔は炎上した人からは見えない」
「炎上した人から見えているのはただ自分を責める言葉だけなんだぞ」
「それが、顔が見えないよく知らない相手に言葉をかける無責任さってやつなんじゃねぇのか」
ズズッ
「そうね。そうだね。」
さてと
「俺の意見はここまでだ。さぁ時間もないし早くまとめよう。この後発表だろ」
「その必要はありませんよ」
「先生」
「あなた達が机を叩いたあたりからみんな聞いていました」
「大変素晴らしい議論でした。佐藤さんも伊東くんも、竹田くんも桜井さんも」
「色々な立場からの意見をぶつけ合い、自らの考えの糧とする」
「それこそが議論の意義だと私は思います」
チラ
「おやもうこんな時間ですか。他の班の意見を聞くのはまた今度としましょう」
「それでは今日の授業を終わります。委員長号令を」
「先生ー」
「おや、田中くん。どうしました」
ギギィ スタッ
「さっきの班の議論を聞いて一つだけ質問が」
「なんでしょう」
「佐藤くんの意見には自分も刺さるものがありました」
「炎上の実態が見えたような気になりました」
「ただぶっちゃけ思うのですが」
「実際に誹謗中傷してる人のほとんどって」
「ただの暇つぶし感覚でやってるだけで、桜井さんや伊東さんのような考えなんてないと思います」
「先生はどう思いますか」
「はい。田中くんありがとう。いい質問ですね。」
「誹謗中傷をしてる人のほとんどがそうゆう人か、それを語ってもただの想像にしかならないので明言は控えます」
「ですがもし」
「暇つぶしでやってる人がいたなら」
「そんな人達は」
「死ねばいいと思います」
キーンコーンカーンコーン
キーンコーンカーンコーーン
「起立!礼!着席!」
ガヤガヤガヤ…
俺達の議論は今日は終わりだ。今日は珍しく熱が入ってしまった。
グググッ
んーー疲れた。
さてと昼メシ買いに行くか。
ギギィ スタッ
ガラガラガラガラ
教室を出るとき誰かが言った言葉が耳に入る。
あの声はたしか加藤さんだ。最近彼女のSNSがバズってちょっとしたインフルエンサーになりつつある。Xとかのフォロワーも相当いるらしい。
俺はその加藤さんの言葉を聞いて心の中で笑った。
「…なんかさ」
「佐藤ってうざくない?」
思ったね。
炎上はなくならねぇな。
スッ ポチ スッスッスッ
俺はポケットから携帯を取り出した。
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