第13話 部外の検体者
現在 リネン=ヒム について確かなこと
・禁断とされる力を得て世界を構成する一粒から外れた存在となった
・その一方で痕跡をとどめ
・任務反復による善行と悪行への報いと裁きが両立する術を探していた
・リネン=ヒムは我々セラフィムが抱える自壊からの解放を望んでいた
そして
・わたしとガブリエルは互いにリネン=ヒムと何を話したのか知らない
「どこにいるのか知っているのか」茉莉花が確認すると
「姿かたちは核を抜き取った者を模して成り代わっている可能性もあり不明です。待っていれば何れ次に憑依されば何らかの
何れ交信があるのなら、ここはガブリエルに任せておけばいい
「もう一度あの雑居ビルを調べたい」茉莉花はそう口にした。
「ここで待つと犠牲者が出た後だからな」クダチも同意の様子。
「リネン様、どうか帰ってきてください」コーラスはその身を案ずる。
動きを封じられているわけではない
ここに留まるな、もう一度あの場所に行こう ────
「ガブリエル、後で交信する」そう伝えてポータルが閉じると茉莉花は再展着を済ませた。その際に新たに
「その綺麗な布は何ですか」コーラスは小さな変化に気がついた。
「新装備か?」それを聞いてクダチも乗っかる。
筥迫を開いて2人に見せると表面が少し凸になっていて魚眼レンズの様に映る鏡が内側に付いていた。クダチとコーラスが覗き込むと小さく映って見えていた。
「リネンがサンキャッチャーを使って交信したのを真似た」
後はこの部屋の鍵とセキュリティカードに加えもう一つ同じサイズの純銀のカードを入れていた。
「セキュリティカードは分かるが、その銀のカードは何だ?」
クダチが興味深々の様子だ。
「大した意味などないが、熱伝導率と電気電率が非常に高い事に加えて殺菌抗菌効果もあり、有毒物と化学反応を起こすなど何かと使えて便利な札だ」茉莉花は一般論を述べた。
「そういうモノだったんですか?」コーラスがそう聞くと茉莉花が笑った様に見えた。
「低次の世界では古来より魔除けとしても用いられる万能素材だ」
「魔除けとかオマエがいうと嘘に聞こえるな」クダチはまぁいいかと軽く流す。
アジトとなったこの店舗の戸締りを済ませると外で清掃している使者達に事後処理を指示し、礼を言うと足早に都心部のあの雑居ビルを目指す。昼下がりには茉莉花のDESTとなったリネン=ヒムに最も近いあの場所に到着していた。
そこには虚な使者達はもう居ない。それ以外に昨晩と変わった様子は窺えないない、そこは何の変哲もない街角。
室内に入るとサンキャッチャーは無くなっていること以外は。
取りに戻ってきたのか、いや違うことは明らか、あれは実物ではなく リネン=ヒム の展着物。取りに戻ってきたのではなく展着を解除したということになる、そして、
それが意味するのは ────
茉莉花は筥迫を取り出して窓際に立て掛けると、少し離れて位置する場所に立ち終端へと呼びかける。すると想定通りにガブリエルを呼び出すことに成功した。一足違いで リネン=ヒム から 6.0 haven に交信があったことを告げられたのも想定通りといえる、だがそれは決して吉報ではない。その交信は、ここから数100㍍先の立体駐車場の非常階段からだ。
ここから近い、急がなければ痕跡が消えてしまうその前に
『DEST はすぐそこにある』突き抜ける速さで立体駐車場を目指す茉莉花は、最短距離を駆け上がり非常階段で座り込むリネン=ヒム の姿を見つけた。
「リネン=ヒムよ、貴方自身は今どこいる?」
「セラフィムよ、あなたは 6.0 haven がよこした者ですね」
「リネン様」コーラスが擦り寄っていくと、その手を差し伸べた。
「わたしだ、カラム=シェリムだ」茉莉花はリネン=ヒムに肩を寄せた。
「私はあなたを知らない、あなたが私を知るということは……
私を……、何度目ですか?」
「2度目だ。貴方自身を追っている」
追いつくことが出来るのか
つづく
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