第12話 背信と追放に笑み

 に【ZAIRIKU】は何を見出したのだろう。


清掃員に扮した使者もこちらに気が付いたようだ。

「セラフィム・カラム=シェリム、ご指示でしょうか」

「6.0 haven と交信するための場所を確保するのに力を借りたい」


 茉莉花はここの向かいにある建物の5階に改装工事予定を店舗がある事を説明し、そこの清掃を口実に解錠できないか確認をした。

「ええ可能です。この辺りの建物は我々が清掃作業を請負っています」

「手広く入り込んでいるんだな」クダチは知らなかったようだが、依然体になる前は清掃員だったのかもしれない。そうだとすればクダチも礼節正しかったのかもしれないな、そう考え茉莉花はチラッとクダチを見てから話しを進める。


「ならば問題ない、警備システムを止めて鍵を開けたいのだが」


序列上位者である茉莉花の指示に対して使者は任務として応じる、そしてその様にできている。案内されてついていくとショッピングモールの一画に清掃作業員たちの事務所があり、そこには2人の使者がいた。


「3人とも使者ならば容易だ」茉莉花はそう言うと、あの店舗前に溢されたジュースが扉の下まで広がっているため清掃する旨、建物の管理室に連絡をした。使者1名をここに残すと、2名の使者に鍵とセキュリティカードを取りに向かわせ、現地で落ち合うように指示をした。



 暫くして先に到着している茉莉花たちに使者が指示を遂行して追いついた。

「セラフィム・カラム=シェリム、我々はどうしますか?」

「そうだな、ここに人が近づかない様に清掃をしていてくれないか」


「コーラス戸締りは任せる」茉莉花はそういうと受け取った鍵で解錠し、セキュリティを止めに向かった。


「光が漏れてないか?」電気をつけたクダチがコーラスに聞くと

「大丈夫です」と返事をして室内に入って鍵を掛けると、ここは密室となった。


室内は清掃済みで綺麗なままの状態だ、壁一面の大きな鏡が今はこちら側と向き合った世界だけを映している。



 問題はない、準備は整った

 そこにもう居るんだろ



展着を解き 6.0 haven に終端への呼びかけると、透けはじめた鏡の前にガブリエルが待っていた。



「待ってもらって悪いな」茉莉花はガブリエルに向かってそう言うと、

「伝令です。 カラム=シェリム、あなた達は現在ウイルスへの感染が疑われるためポータルへの接続は途絶されています」


「隔離対象という事か」そう返すと、こちらを見ているコーラスに、

「感染などしていないから安心するんだ」自責の念を抱かぬ様にそう説いた。



「リネン=ヒムは何と言っていた」茉莉花の質問にガブリエルは予め用意していた様に応えた。

「あれはリネン=ヒムではありません」


「それでは誰なんだ」

「リネン=ヒムは抜き取った禁断とされる果実を食しています」


ガブリエルはいつもの貼り付けた様な笑顔で確かにそう言った。


「あれは核を失った者にリネン=ヒムの一部が憑依したすがた、皆が知るリネン=ヒムの残渣ざんさ


「まさかリネン様が……」コーラスは混乱している。

「オマエ、何ではじめからそれを茉莉花に伝えなかったんだ」クダチがガブリエルに詰め寄って鏡越しにがなり立てた。



「あの残渣は貴方に何を伝えましたか?」ガブリエルはにこやかに聞くと、茉莉花は睨みつけ

「二度と残渣などと呼ぶな」と言い放った。


「はい、そうですね」ガブリエルは満面の笑みで約束をした。




 だが一体なぜだ

 間違いなくあの場にいたのはセラフィム

 リネン=ヒムは大罪人を見つけ滅する任務も執行していたのは確か

 


鏡の中のガブリエルと対峙して暫くのことだ ────



「伝令です。カラム=シェリム、あなたはマリシャスダンテ背信的追放者となったリネン=ヒムの追跡と焼滅があなたの使命です」そう云うとガブリエルは口を閉じた。



 ウイルスへの感染だと?

 その猿芝居も伝令か

 これは必然、そういうことなのだろう


「【ZAIRIKUザイリク】の意思がそれを望むなら遂行するまでだ」

茉莉花にとってはリネン=ヒムの実体に辿り着き真実を確かめることこそが、最も優先すべきDEST目的地になりはじめていた。



つづく

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