第7話 二試合目(最終マッチ)3/4
二試合目の最終マッチ──本格的に戦闘が開始される。
スモークが横に広がる形で大量にまかれている。視界は曇り、敵の位置がつかみづらい。しかし、俺にとって難しい状況ではない。
パンッ! パンッ! パンッ!
三発の銃声が鋭く響く。同時に、画面にはダウンの表示。
「よし」
──倒すの早くね?
──ウイングマンのこの距離でなんちゅう命中精度だよ
言葉にする間もなく、俺は視線を次の敵へと向けていた。しかし、もう一方の敵が俺を標的にし発泡、少し被弾する。
「クソッ、追えないか」
悔しげに言葉を吐く俺に、ミヒャエルが冷静な声を返す。
「もう
そう口にする彼女のVは見ると、息は荒く、胸が上下に揺れていた。……なにこのえぐいおっぱいと差分。その胸で公式Vtuberは務まらんでしょ。あまりvtuberを見ない俺からしたら「公序良俗ってのに違反してるんじゃねえの?それ」とか、場違いな感想が喉から出そうになってしまう。
「お、おうよ……」
しどろもどろながら、みどりんの的確な判断に、俺もすぐ同意する。一人はダウンさせたものの、新たな敵の影が近くに見える以上、今ここでの戦闘はリスクが高すぎる。
敵と遭遇することなく、時間だけが静かに過ぎていく。俺たちは、西にそびえる巨大な建物群が特徴のエリア──カンタリオへ移動する。
その中心には威圧感すら漂わせるような近代的な銀色の大きな正方形の建物があり、それを取り囲むようにして中規模の建物が所狭しと並んでいて所々緑色の人口っぽい草木が生えている。複雑に入り組んだ構造は、攻める側にとっても守る側にとっても一筋縄ではいかない地形だ。
敵がスキルで空中を待っていたりと、中々激戦のご様子ですな。
みどりんがブラッドハウンドのスキャンを発動すると、西の方角に赤く浮かび上がる敵のシルエットが画面に映し出される。中ぐらいの建物の中に一人いるな。コースティックか。でかい図体の癖して毒ガスで敵を苦しめる嫌なタイプで、籠城に強い。
俺は躊躇なく二階の扉を目指し、軽やかにジャンプして足場を駆け上がる。扉の前に到達した瞬間──。
「扉が開かない」
その時、「シュッ……カチッ」という聞き慣れた音が鼓膜を刺激する。瞬間的に理解する。毒ガストラップの設置音だ。すぐさまアークスター《扉に張り付けくタイプの爆弾》を投げて一階に降りる。
ドンッ!
アークスターの爆発音が響き渡ると同時に毒ガスが広がり始め、視界がぼやける。その瞬間、隣の建物から銃弾が飛んでくる。
バンッ!バンッ!
弾道がかすめる音と、肩口に感じる軽い衝撃。被弾したが、まだ余裕はある。どうする??今回の試合は最後の10分間まで、そこまで戦う必要がない。
「中心方向の敵とやりましょう」
彼の言葉を聞いた瞬間、俺の視線は自然そちらを向く。周囲は開けており、敵が動きを晒している絶好の狙撃スポットだ。
「了解」
その一言を呟き、俺は武器を切り替える。ウイングマンではこの距離は厳しい。ヘムロックならば狙いが正確に届く。迷う暇はない。
標的をロックオンし、呼吸を整える。トリガーに指を掛けた瞬間、時がスローモーションのように流れた。
バババッ!
ヘムロックの三点バーストが唸りを上げる。銃口から放たれた弾丸はすべて正確に敵に命中し、標的はその場に崩れ落ちた。
「いける。こっちはひとりで全員行けます。もうワンパは二人でちょっかい出しといてください!」
「うん、分かった!」
「おーけい、新生君」
その言い方だと真正包茎の真正みたいであんまり嬉しくないんですけど。そういう高度な悪口かなんかですか。新生なんて普段使いしないですし、おすし……。
「キル行きます!」
言葉と共に、俺は敵パーティーの背後、分度器で言えばちょうど130度の死角へと滑り込む。
再びヘムロックを手に取り、スコープ越しに敵を捉える。
バババッ!
三点バーストの弾丸が敵を正確に貫き、二人目、三人目も難なく撃破。動きを止めた敵を確認しつつ、俺は即座にポータルを通り拠点内へ戻る。
だが、その瞬間、嫌な気配を感じてすぐさま拠点を出て視線を上げた。
建物の屋上に敵のシルエットが浮かび上がる。彼らはスキルを駆使し、俺たちの拠点に何故か飛び込んできたようだ。
「まずい、別パに狙われてるっていうのに、ワンパ三人飛んできやがった」
扉近くで交戦していたミヒャエルが、静かだが確実に焦りを帯びた声で呟く。だが、俺の手はもう次の戦闘の準備に入っていた。
ウイングマンを手に取る。スライドを引き、わずかな隙も見逃さないように目を鋭く光らせ、階段から撃ち合いを試みる。
「殺す!」
バンッ!バンッ!バンッ!
冷徹な三発の弾丸が、一人目の敵の頭部を正確に撃ち抜き、彼を地面に沈める。リロードしながら即座に引き、体勢を整える。
次の標的を捉えた。二人目もまた、素早い動きで俺を狙ってきたが、その攻撃を障害物で巧みに避けながら撃ち返す。
二人目も沈んだ。視界に「キルリーダー」と表示されるが、俺にとってそれは単なる通過点でしかない。
三人目は慎重だ。カバーから顔を出す素振りすら見せず、焦らずにこちらを観察しているのがわかる。だが、俺もまた待つつもりはない。障害物の縁を滑るように動きながら、間合いを詰めると同時にウイングマンを再び構える。
「そんなんで俺に勝てるかよ」
三発目が敵の頭部に命中。三人目も地に伏せた。その場にいた敵をすべて片付けた俺は、直感的に周囲を確認し、拠点へ逃げ込もうとする。
「全員やりました。拠点戻ります」
「おけーい!」
敵がだんだんとこの区に集まっているのを感じながら、俺は横長の倉庫へ移動し、休憩を取る。包帯を巻きつつ、状況を整理する。
扉を突き刺す雷槍の連続攻撃。その音が響くたび、倉庫全体が震える。
「でかい雷槍をさっきから投げられまくってるし、このポジション、そこまで強くないんで、一旦脱したほうがいい気がしますね」
「エリアの縮小位置的にもしんどくなってきたし、移動しようかじゅるり。俺とみどりんちゃんが相手している奴ら大分うまいよ」
「ポータル作ります」
俺は一人で動き出し、安全地帯を目指してポータルを形成する。ポータル同士を繋げ、仲間が移動しやすいルートを確保した。その瞬間だった。
「やばい、詰められた!」
ミヒャエルの声が上がり、続いて銃撃音とともに彼のダウンする音が聞こえる。
「ごめん、私も……」
次の瞬間、彼の後を追うようにみどりんも倒れた。
「まじか……」
ポータルを通って戻ってきたミヒャエルとみどりん。だが、それを追って敵が入ってきた。
「まあ、そりゃあ来るよね」
俺は即座にポータルゲートの裏に身を隠し、的確に三発で一人をダウンさせる。そして再びポータルを抜けて倉庫に戻る。
「逃げます。申し訳ないです。ここからは一人で戦うことになりそうです」
「ごめん」
「すまない」
この試合、結構やばいかもしれない。残り15部隊という状況で、俺一人となった。そして、上位帯で2部隊の6キルしか倒していない……。
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