顔が良すぎる幼馴染Vtuberに誘われて、元世界王者プロゲーマーの俺は大会で無双しVデビュー!!一躍有名になった俺を『推し』てくれる学園の女王はリアルではアンチ。てか、気づけよ。
第6話 破壊者として生きる。これが新生、俺だ!
第6話 破壊者として生きる。これが新生、俺だ!
◆◇◆◇◆◇◆◇
四年前、世界中のプロゲーマーたちが集う大会が開催された。そこにあるプレイヤーも召集された。彼がメインで扱った武器、ウイングマン――このゲームで最も難しいとされる、単発式のハンドガンだ。どんな防具を装備していてもヘッドショットを三発決めれば倒せるというシンプルさ。しかし、シンプルであるが、その手振れのひどさゆえエイムが難しく、多くのプレイヤーが手にするも、完璧に扱いこなせる者はいなかった。
だが、彼は違った。
彼は部隊を真っ先に駆け抜け、ウイングマンを手に次々と敵を追い詰めていく。プロたちが恐怖とともに立ち向かうも、全員が三発以内で頭を撃ち抜かれていく。普通ならこんなに正確に当たらないはずの武器の弾丸が、すべて正確に頭部に命中するのだ。
――気づけば、30人ものプロプレイヤーが彼の手によって倒されていた。
実況席は騒然となり、解説者たちは言葉を失った。「
しかし、その圧倒的な強さは、すぐさま不正疑惑を生んだ。「これはオートエイムだ」「不正ツールを使っているに違いない」と大会運営元である『FLOW』には数千件の通報が一気に寄せられた。プレイヤーたちは、彼のエイムがまるで機械のように正確すぎると疑ったのだ。
だが、調査結果は「白」だった。彼の全プレイを精密に解析しても、不正の痕跡は一切見つからなかった。すべてのショットが人間の反応速度と技術によるもの――彼の神業的なエイム力は、ただの「天才」だという結論に達した。
◆◇◆◇◆◇◆◇
二試合目はルール変更がされ、この試合では、最後の10分間がポイント二倍になるという特別ルールが追加された。つまり、序盤の戦闘よりも終盤でのキルが重要になる。俺たちは先ほどの試合で上位に食い込んだため、強者ばかりが集まる上位帯へと召集された。これが予選の最終マッチだ。
俺たちはひとまず、塔へと降下した。鋭利で無機質な金属で構築されたその塔は、未来都市を思わせる先進的なデザインで、SF映画のセットのようだ。眼下には複雑に絡み合うエレベーターや歩道橋が見え、それが塔の周囲を取り囲む。
金属の足場を踏みしめるたびに、無機質な「カン、カン」という音が響き渡る。俺たちは、その冷たい質感と静かな空間の中で、ただ黙々と装備を整えていた。
通常なら、ここは混戦の舞台になるはずだ。多くのチームが最初に降り立ち、乱戦を繰り広げる場所。だが、今回は様子が違う。周囲には敵の気配があるのに、誰も積極的に戦おうとはしない。皆、ポイント二倍のラスト10分を待ち、命を温存しようとしているのが明らかだ。
「もう、無理なのかもしれない……」
俺は思わず、深いため息を漏らした。さっきの勝利の後に感じた虚しさ、試合中なのにも関わらず、この場所が自分にとって何か違うという感覚が消えない。
「アルト?急にどうしたんだ?」
ミヒャエル・エンデが、少し驚いたように顔を覗き込んでくる。その問いに答えられないまま、みどりんがそっと口を開いた。
「あの……アルトは、大会に出るのが本当は好きじゃないんです。昔、いろいろあったみたいで」
彼女の声は控えめだったが、その優しさが胸に沁みた。彼女は知っている。俺がゲームを楽しめなくなった理由のすべてを。それでも彼女は、俺がもう一度立ち上がることを望んで、この場に誘ってくれた。俺が本当は昔みたいに楽しくゲームをしたいことを、全てを理解してくれている。
ミヒャエルは一瞬沈黙し、俺を見つめたあと、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「そっか……それならやめてもいいんじゃないか?」
「え?」
予想していなかった言葉に、俺は驚いて彼の配信画面を見つめ返した。
「無理に続ける必要なんてないさ。誰だって、やりたくないことはあるんだ」
その言葉は、まるで自分の内側に潜んでいた不安を見透かされたように感じた。彼の言葉が、俺の心の奥深くに重く響く。
ミヒャエルはさらに話し続けた。
「俺、昔いじめられてたことがあったんだ。逃げたくても逃げられなくて、周りの目が怖くてずっと耐えてた。でも、ある日気づいたんだよ。俺の人生なんだから、やりたくないことを無理に続ける必要とか耐える必要なんてないんだって」
その静かな声の中には、経験から来る確かな意志が感じられた。彼は俺がどういう問題を抱えているのかをある程度仮説を立てて語っているようだ。その仮説はまさしく当たっていて、賢い人だなと場違いにも思ってしまう。ミヒャエルが続ける。
「アルトが無理だって思うなら、やめる選択だって間違いじゃない。それが嫌いになっちゃったなら、続けることはただの苦しみだろ?」
その言葉が正しいことは、頭では理解していた。けれど、辞めるという選択肢が出るたびに、俺の心にはいつも引っかかるものがある。
「でもな、アルト。続けるにしても、やめるにしても、俺はお前の味方だからな」
ミヒャエルが穏やかな笑みを浮かべる。その言葉に、不覚にも胸がじんと熱くなる。
「お前はどうしたい?本心はなんだ?」
まさかリクルートの社員が真っ先に言う名言『お前はどうしたい?』を、こんな場で聞けるとは思っておらず、少し笑ってしまう。
自然と笑いが漏れ、肩の力が抜けていくのを感じた。
俺はどうしたい……か……
心の中では確かに何かが崩れていく音がした。そして、新しい何かが生まれようとしている感覚があった。湧き上がる感情が自分でも抑えきれない。言おう、言ってしまおう。
「俺……やっぱりゲームで全員殺したいんです」
「は?え?」
ミヒャエルの顔が一瞬で凍り付く。
その瞬間、俺の中にあった何かが全て吹き飛んだ気がした。そして、新しい何かが芯からどす黒くなっていく感覚。いや、これは決してネガティブなものではない。むしろ心地いい――これが本当の俺なのだと確信できるほどに。
「耐える必要も、周りの目を気遣う必要も、そもそも俺には必要なかったんだ。ハッツ、『チームの楽しみを奪い、本来のゲームの意義を阻害してしまう?』ってなんだよ……、馬鹿か、俺は。俺が勝てれば、それすなわち本来のゲームの意義だろ」
勢いで言葉が止まらなくなる。胸の奥に溜まっていた感情が溢れ出すように、俺は自分でも驚くほどの大声を出していた。
「は?え?あれ?アルト?……なんか違く……ない?」
俺は拳を握りしめ、はっきりと言い切った。
「違わないっすね。今、決めました。全員倒して世界一になって、視聴者は誰も俺以外のプレイで満足できないような体にします。ゲームは楽しむためのものじゃない。それを理由にするのは弱者の戯言だ。ゲームは勝つためのものだ」
その言葉は、自分の中から自然と出てきたものだった。鋭くどす黒い棘が、胸の奥深くから次々と伸びていくような感覚が気持ちよすぎる。体の外まで、溢れそうだ。
「プレイ中は楽しい。でもそのあと、周りが楽しめたか気にしてしまう心の楔がずっときもかった。けど、そんな糞みたいな事……なんで俺が気にしないといけねんだよ」
言葉が止まらない。抑えきれない。
「お前らが上手くなって俺について来れるように努力しろよ、糞雑魚モブ共が」
「おっ、完全復活?」
不意に明るい声が耳に飛び込む。みどりんだ。ニッコリと微笑みながら、俺の顔をじっと見つめている。その表情はどこか満足げで、まるでこれを待っていたと言わんばかりだった。こいつも大概、狂ってらしい。
「ああ」
俺は小さく返事をしながら、視線をミヒャエルに向けた。だが、彼の顔には明らかな困惑が浮かんでいる。
「ふ、復活できたならよかったけど。なんかもっとこう感動的な展開になるはずだったんだけどな……じゅるり……」
「ミヒャエルさんありがとうございます。すっきりしました。この試合、全員ねじ伏せ殺しましょう」
口元に笑みが浮かぶのを抑えられなかった。俺は今、世界で最も美しく邪悪な笑みをしているのだろう。
俺は画面に視線を戻し、深呼吸を一つ。目の前に広がるバトルロイヤルのフィールドが、これほどまでに鮮やかに見えたのは初めてかもしれない。
そんな会話を交えた後、俺たちは塔から東に向かう。高台を駆け下りながら、ミルバ――混戦の代名詞とも言えるエリアが視界に入った。そこは荒廃した街並みのような場所だ。小型の建物が無造作に密集し、その間を縫うように無数の遮蔽物が点在している。路地裏の狭い空間、高低差のある瓦礫――どれもが戦略を生む複雑な地形だ。激戦区として知られるこの場所は、特にキルを狙うプレイヤーたちが集まりやすい。
途中、俺はふと立ち止まった。
「……待って。ワンチャン敵がいるかもです」
仲間二人が足を止め、緊張感が高まる。風に乗って微かに届く銃声──それは近い。注意深く目を凝らすと、スモークがあちこちにたかれているのが見える。その中心では、複数のチームが入り乱れて激しい撃ち合いを繰り広げていた。
「獲物っすね」
俺が即座に判断を下す。その声には一切の迷いがない。
「お、おう……」
ミヒャエルの声が少し震えたように聞こえたが、みどりんは即答する。
「うん、行こう!」
そうだ――俺はこれでいい。破壊者として生きる。これが新生、俺だ。
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