第3話 転生しました。これからの予定は?

 …

 ……

 …………

 ドクン……ドクン……

 私の意識は朦朧としているけど、何やら胎動を感じる。あぁ、自分の胎動か……。転生したんだもんなぁ。それにしても、赤ちゃんからかぁ。赤ちゃんって意識あったらどんな感じなんだろう。喋ることってできないのかな?はぁ、親もいい人ならいいなぁ。


 ……

 …………

 ………………


「おぎゃぁ、おぎゃぁ!」


 ―おい!生まれたぞ!よく頑張ったな!2人とも!―


 目はぼやけて見えないけど、何やら男の人の声が聞こえる。何言ったのかは正直理解できないけど。そして、何やら柔らかいものに包まれている気がする。


 ―ええ。可愛いわね。私達の娘……。「」……。―


 どんな状況なのかわからないけど、なんか気持ちいい。


 ………………

 …………

 ……


 ―3年後―


 私は、サーシャ・マツォーネ。生前の名前は松下さつき。神様に選抜されて、前世の記憶とスキルを持ちながら転生した。最近、3歳になり言葉を少し話せるようになった。この3年間は大変だった。前世の記憶があるからだが、思った通りに言葉も発せられないし、体も動かない。トイレもまともにできない。生き恥を晒しているようなものだった。最近少しずつ言葉も覚えてきて話す事ができるようになった。この世界の言葉は神様からのギフトにより、日本語に聞こえる。やっと、生活する力がついてきたなと思った。

 そして、なんとなく感じている私の家族、うちの状況はこんな感じだ。

 

 ・父カイトと母クレアと私の3人家族

 ・父は町のギルドに勤めている

 ・母も父と同じ職場で出会った

 ・母は現在退職し、専業主婦として過ごしている


 私の家はそこまで大きくはないが一軒家で、石作りの中世ヨーロッパの街並みにある家といった感じ。ちなみに平家で、町もそこまで広くもないし、田舎って感じだ。


 私は母に色々連れて行ってもらったおかげで、なんとなく町の情報を集める事ができた。母はこの町ではアイドルのような存在なのか、みんなから慕われている。父もギルドで結構いい役職についているらしく、みんなから慕われている。2人とも顔もいい。

 そんな2人の子供だから、私もポテンシャルは高くて、いい顔立ちをしているが、どうしてもコミュ障が出てしまう。

 町中で誰かに会って挨拶してくれても、人見知りをするように顔を伏せてしまう。その度に母は「人見知りなんですー」と言って笑ってやり過ごす。申し訳ないとは少なからず思うけど性格だからしょうがない。けど、いつかは克服したいとは思っている。


 そして、ここまで観察をしてきて前世と決定的に違うこと。


 ――魔法――


 この世界には神様が言っていたように魔法が生活の一部として活躍している。火を起こすのも、水を作るのも風を出すのも色々な場所で魔法が使われている。両親も魔法が使えるし、これに関しても、私もきっと使えるだけのポテンシャルはあるのだろう。

 そして、この世界では5歳になると魔力総量を測る儀式が行われる。簡単だが、魔力総量がこの世界でのランクになる。多分、私は聖女に転生したみたいだから、魔力総量がもともとすごいんだろうけど……。

 ネタバレ感半端ないわ。聖女になるのは決まっている。つまりは私の魔力総量は聖女並みなんだろう。


 とりあえず、魔力測定まで引きこもって過ごそう。


 ―5歳の誕生日―


 さあ、ついにこの日がきました。これまで私は基本的に家族以外との交流はほとんどなかった。近所の友達とかはいるけど、そこまで深い仲の友達はいない。

 前世ではほとんどの人との交流は諦めて引きこもっていた。でも、今度の世界ではせっかくいい容姿に恵まれているので、多少の交流は持っていきたいとは思う。前世のような人生はもう嫌だから……。

 それでも、すぐに他人とコミュニケーションをとることはできなかった。やっぱり、前世の性格を完全に引きずっている気がする。

 今度の人生ではまずは見た目から清潔にしようと心がけた。

 せっかく引きこもりゴミ女を卒業したんだ。絶対に変わってやる!!


 そんな、決意を胸に秘めて、魔力測定に行く。魔力測定はギルドで行う。両親が勤めている「ギルド」とは何か?いわゆる、冒険者ギルドというやつだ。父は支部長。母は元々ギルドの受付嬢だった。まあ、普通の社内結婚といった感じだろう。日本でいうところの役所のような場所だ。

 基本的には5歳になったその日にギルドの測定室で実施する。

 神様が自分の能力やステータスみたいなものを見たければ思い浮かべろと言っていたが、今まで見えた試しがない。神様が嘘をついたのだろうか?と、思っていたけど、この魔力測定がトリガーになっている可能性もあるだろう。と、一縷いちるの望みを残している。

 

 そして……、今日!やっと、私の番がきた。魔力総量は完全にプライバシーの一環だから、自分とギルド職員の対応者1人しか知らない。その後申告するかしないかは任意である。

 私は父と一緒に魔力測定をすることとなった。


「おとーさん。よろしくおねがいします。」


 私は少したどたどしくお願いした。


「おう、そう緊張するなよ。こっちまで緊張するだろ?」


 そういって、魔力測定装置に力を込める。部屋の中心にいる私に向かって何かをスキャンするかのように私に光が当たった。


 この世界の各個人の魔力総量は現在知られている限りでも、最大1000。これは、古の時代に活躍した勇者一行の魔法使い担当のサンローランという女性魔法使いの魔力量とされている。魔力は徐々に増えていくもので、初めての魔力測定時の5歳は大体10くらいが相場だ。サンローランは100くらいだったらしい……。


 よく読んでもらっている勇者の冒険譚の絵本によく出てくる人物だ。


 ……解析が完了したみたいだ。私をスキャンした水晶に測定値が現れる。


 ―1000―


 ……!?1000!?

 

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