第2話 順番間違えた。転生するの?

へぁ?松下まつした?―


 どうやら、神とやらは誰かと勘違いしているらしい。


 ―え……。、さん。ですよね……?―


 神様は目をまん丸にして私を凝視している。


「……い、いえ。……、です。」


 私はそう言うしかない。すると、何やら書類を取り出してパラパラめくっている。何かのリストを確認しているかのようだ。


 ―ま、ま、ま、ま、……。あった。……うっわぁ……、間宮さん次の人だったぁ……。なんで顔写真ねぇんだよ。―ボソッ


 間宮さん次の人だった……。まじか。五十音順なのか……。ボソッと言ったっぽいけど、しっかり聞こえてしまった。

 

 ―あ……、えー。さん?……あなたは、生前ろくでもない人生を過ごしていましたね。それは必ずしもあなたのせいではありません。そんなあなたに新たな人生を謳歌して欲しく、我々神はあなたに第2の人生をプレゼントいたします!!―


 あ、無かったことにした。完全に仕切り直した。しかも失礼。


 ―あなたには、魔法のある世界に転生していただきます!その世界は魔王によって蝕まれています!あなたは聖女として転生し、災厄を解決してください!―


 ……!?はぁ!?聖女として!?間宮さんと全然待遇違くない!?


「……あ!……あの!?さっきの、話と全然違うような……?」


 私は神に意見した。


 ―いえいえ!何も聞いていませんよね!?……ああ!時間がありませんね!あなたが転生する場所は中世あたりの文化ですね。聖女ですので何不自由ない生活はできると思いますよ!ただ、魔王は倒してくださいね!ちなみに、は特別に特殊スキルを、いわゆるチートスキルを2つ付与しちゃいます!……これで色々黙っていてください……。―


 早口に説明を終え、最後に小声で取引してきた。


「……あの、転生とかいいんですが、断ることもできます?」


 私はそんな聖女として目立つようなことは絶対にしたくない。もう、誰に迷惑もかけたくないし、このまま安らかに……なんてこともできないだろうか?


 ―残念ですが、いたしかねます。選ばれた時点で転生は確定なんです。―


 選ばれた時点でって、んな勝手に……。


「……さっきから選ばれたって、言ってますけど、全員が全員転生するわけじゃ、ないんですか?」


 ―もちろんですよ。全員が転生してたら私達もそれどころじゃ……、いえ、コホン。基本的には不遇の死を遂げた人達って感じですかね。―


 ああ、これは本当によく小説で読んでいた転生ってやつか。しかも、なんか裏事情とか知っちゃった系だよ。普通なら、「自分だけ選ばれたんだ!!ついてるー!!」なんて意気込んで転生していくのだろう。さっきのリストを見る限り、かなりの人数は転生してそうだ。


「あ、……転生先ってそんなにあるんですか?」


 ―うーん。本当は喋っちゃダメなんですけど、ここまで知られちゃってるともうなんでもいい気がしますね。もう、どうせ会うことはないでしょうし。転生先はごまんとありますよ。―


 相変わらず身勝手な神様だなぁ。


「え……?なら、もっと平和なところにしてもらってもいいですか?」


 私は不遜にもお願いした。


 ―んー、転生先も決まっているので変更はできません。―


 えぇー……。じゃあもう、どうしようもないじゃない。せめて、スキルをいいものにしてもらわないと。


「……じゃあ、スキルっていうのは……。」


 ―はいぃぃ!それはこれから決めてもらいましょう!なんでもいいですよ?とりあえず言ってみてください!―


 神様はスキルに関してはなんでもいいですよと言った。コミュ障の私に必要なスキルって一体なんだろう……。


「考える時間ってどれくらいあります?」


 すぐに決まりそうにもないなぁ。


 ―あんまりモタモタしていられないんですが、あと3,4時間くらいで決めてもらえると助かります。―


 あと3,4時間か……。色々考えてみよう。


 ……4時間後……


 時間目一杯使って考えてみた結果、二つの能力に絞った。


 1つは、

 もう一つは、


 これさえあればどんなところでも生きていけるかな。もう転生するって決まっているんだったらとことん引きこもれる状態にしたい。そして、中世なんてまっぴらごめんだ!現代日本で甘やかされて育った私を舐めるな!?

 トイレは洋式水洗じゃないと嫌だし、お風呂だって入れないと嫌だ。ゲームもないと嫌だ。漫画だって読みたい。ともなれば、それらを持ち出せる、作り出せる能力にすればいい!

 あとは、中世ともなれば色々な病気も蔓延するだろう。病気にならなければ、生きてさえいればなんとかなるだろう。転生するとなったら絶対的に必要だろう。


「じゃあ、……これで……。」


 私は4時間考えて出した答えを伝えた。生前アニメとか小説とかを読んで、色々な転生スキルを考えたことはあったけど、実際に転生するとなると本気で考えた。色々質問もしたいけど、時間ないっぽいし、でも、聞いておかないといけない気がするし。この性格が邪魔をする!!


 ―承りました!……うっわぁ、結構難題かましてきますねぇ。まあ、やれなかないですが。では、他に何か質問とかありますか?―


 ……あ!?最後の最後に親切設計だ!質問していいんだ!?


「じゃあ、……

 スキルは私の思い描いた感じで使用できるのですか?

 スキルの使用上限とかあるんですか?

 スキルの確認とかできますか?

 スキルは増やすこともできるんですか?

 スキルにはなんか魔力的な物を消費するんですか?

 転生って赤ちゃんからですか?

 この姿のまま召喚される感じですか?

 とりあえず、これくらいで。」


 はあ、一気に喋ったから疲れた。


 ―え?まじ?普通、最後に質問ありますか?ってないですってスルーされるところじゃない?― 


 神様的には予想外だったみたいだ。


 ―ちょっと質問多いいので、転生作業しながら話しますね。―


 そう言うと、私の周りがポウっと光出した。


 ―まず、転生なので、赤ちゃんからです。記憶は維持した状態です。言葉は覚えていってください。一応翻訳スキルは常備してます。―


 私は徐々に体が薄れていき魂だけになって飛び出す感覚。


 ―スキルは思い描いたようにでてきます。スキルは魔力を消費しません。他のスキルの習得は可能ですが、簡単ではないです。使用上限はないですが、常識の範囲内での使用をお勧めします。確認したければ思い描けば脳内に再生されます。―


 おお、矢継ぎ早に色々教えてくれた。まあ、あとはなるようにしかならないんだよなぁ。聖女なぁ……。だるそう……。


 ―それでは〜、第二の人生楽しんでぇ!―


 …………

 ……

 …

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る