ロボ村長・3

ひぐらし ちまよったか

つま先、立てて海へ……。

「――カクヨムご覧の皆様、新年おめでとうございます。村長です!」


「――ハッピー・にゅう・イヤ~っ! 勇者・お武家さまじゃ!」


「なんです、お武家さま。その取って付けたような『中途半端な、つかみボケ』は?」


「おむ? 今年はいろいろ試してやろうかと、初詣の時にひらめいたのじゃが……ダメ、だった?」


「うう~ん……だめ……というか……うう~ん……」


「わし、おみくじで『なにかしら宣言しないと、なにも始まらない』と学んだの!」


「おおおっ! それはなんか、いい言葉っぽいですね」


「でしょ!? 今年は、なんでもかんでも、ひとまず言ってみるゾい!」


「ええ~、それって本当にダイジョブなんですか~? 問題発言だとか……」


「なに、かまわぬ。火消しは『ちまよったか』じゃ!」


「まぁ、そうなんですけどね」


「うむ、解かってもらえて結構。どれ村長、まずは新年の祝杯じゃ!」


「あ、はい。明けまして、おめでとうございます!」


「今年も、よろしくのう!」


「かんぱ~いっ!」




「――おや? お武家さま、なにやら部屋の外が騒がしいですね?」


「ふむ、宿の玄関に誰か来ているようじゃのう……年始の『漫才』かな?」


【――はじめぇっ! 秋月はじめは、どこにおるっ!】


「え!? なんか、わし呼ばれてる!」


「はじめ……って、たしか、お武家さまの本名ですよね?」


「なんじゃ? 実家で何か有ったのかな?」


「いいかげん『正月ぐらい帰ってこい!』って、言いに来たのでは?」


「ええ!? い、イヤじゃ! わし……怖い姉さま達が居る家、帰りたくない!」


「でも、ご両親も、きっと心配してますよ?」


「いやじゃ! わし隠れる!!」


「もう、お武家さまったら……」


 ――スォパンつ!!


「ふぎゃ!? いきなり襖が開いたぞいっ! 見付かった!?」


【おおっ、はじめ! ここに居たか!】


「うわっ! なんか『全身銀色の人』が入って来ましたよ!?」


「なんじゃ、あの格好!? 泥だらけのドレスに『あんたが大将!』って『百均のたすき』? あ、新巻鮭、ぶら下げとる……」


「ひたいに『ウェ~イ♡なパリピ』と写した『チェキ』を貼り付けてますね?」


「聖王都の『スクランブル交差点』で年越ししたのか、にゃ?」


 ――ずんずんずん……。


「ふぎゃわっ、近づいてきた!? ワシ、怖いっ!」


【貴様! 秋月はじめ、で相違ないな!?】


「にらんでますよ! 睨まれてますよ!? お武家さま」


「こ、こ、ころされる……」



【あけまして、おめでとう】ぺこり。


「え?……えっ!?」


【これは、お年賀です……】


「あ、あ、新巻鮭、貰っちゃいましたね……」


「え? あ……こりゃ、どうも、ご丁寧に」


【はじめ……会いたかったゾ!】がしり!


「むぎゅ、な、なんじゃ?」


 ぶっちゅ~っ♡!


「むぐ……む、む、む……」


「あわわっ? 新巻鮭を抱えたお武家さまの両肩を鷲掴みにして、いきなり、くちびる奪った~っ!?」


「む、む、む……」


「な、な、なんでしょう、新年早々この展開は?」


「む……ん……」


「――それにしても……情熱的、といいますか……」


「ん……ん、んん……」


「……ながい……長い、ですね……ゆっくり解説できちゃうじゃないですか……かれこれ40秒は奪われ続けてますよ? お武家さまも、なんだか身体の力が抜けて『とろん』とした目付きになってきてるし……」


 ――ちゅぽん……。


「――あ……やっと、はがれた」


「――ん……ふ……」


【――どうだった? はじめ……】


「! わ、わ! ワシの『こころ』まで自由にできると思ったら、大まちがい、なんだからねっ!!」


【……いや、ちがう……ジンの剣技は、受け継がれたか?】


「へ?」


「ジンの剣技って? あの『聖王都最強』と言われる剣聖ジンの、必殺技って事ですかね?」


「ふむ? そう言われて見れば、なんとなく頭の中に『技名』が浮かんでくるような……」


【――うむ。その技を携え『秋月まさえ』と勝負をし、みごと秋月家の家督を継ぐが、よい!】


「……なるほど……お主、実家から差し向けられた『説得者』じゃな?」


【――めぐみと、なおが……呼んでいる】


「うむ『ふたこ姉さま』たちの差し金か……それにしてもこの剣技……『ツバメ返し』の要領で鋭角に袈裟切りを繰り出す『仏壇返し』……?」


「……う、わぉ……」


「低い突きの姿勢から、いっきに股間をすくい切る『松葉崩し』……じゃと?」


「それ……ほんとうに剣聖ジンの技名なんですか?」


「わし、こんな技名を叫びながら姉さまに切りかかったら……殺されてしまうのう」


「武芸者的に……というか、弟、としてアウト! ですよね?」


「わし、かかる『接吻』は掃わぬ強者じゃが、倫理観は比較的まともなのよ」


「正義のお武家さま、ですもんね!」


「うむ、そういう訳じゃ! せっかく伝授してもらった剣技の数々は有り難く頂戴するが、姉さまに試すのは、ちと、まずい。きょうのトコロは出直すがよいぞ!」


「新巻鮭は、あとで、おいしく頂きますね!」



【まっ!?】――ぴぴぴっ!


「む? なんじゃ、ちょっと『知的な顔つき』に変わったぞい!?」


「ありゃりゃ? この顔……どこかで見た事が有るような……」


【――ボクの名前は『ロボ村長』……君の親友さ!】



「ろ、ろ、ろ、ロボ村長ですって~!?」


「おう、そういえばコイツ、村長に瓜ふたつじゃぞい!」


「ええ~っ、やめてくださいよ。さっき抱き合って『熱い口づけ』交わしてたじゃないですか!?」


「ちと照れるのう」


【ボクの頼みなら聞いてくれるよね? はじめ君】


「むむむっ! こやつめ、村長に成りすまして説得する気じゃな?」


「ええ~っ。さすがにそれは無理が有りません? わたし、泥だらけのドレス姿じゃないし、チェキも頭に付けてませんよ?」


「いかん! このままでは村長と、ロボ村長の区別が付かなくなるぞいっ!」


「いやいやいや……お武家さま?」



「――村長、得意の謎かけじゃ! 今こそ村長らしさを、見せ付ける時じゃ!」


「うわ~あ……無茶振り……」


【――はじめ君……ボクと一緒に、秋月の家へ帰ろう。もえ子も、待ってる……】


「そんちょう! 早う、はようっ!」


「――えええぇ……う~ん……では……『新年』と掛けまして『つま先』と解きます」


「その気になってくれたか村長! うむ。して、そのココロは?」


「立つ(辰)見送りで、見通し(巳年)良くなる」


「おう、おみごと! さすが村長、天晴じゃ!」


「えへへっ!」


【――まっ!?】




 ――次回作へ、つづく。

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