開店1周年前日 13
「まず、今の来院者を3割くらい増やしたいね。今でも私たち家族だけだったら普通以上にやっていけるだけの稼ぎはあるけど、2号店を出すとなるとしばらくは赤字になるだろう。今の店は本店になるわけだし、もし銀行に融資をお願いするとしたら実績が必要だ。1年しかやっていないわけだから、それなりの売り上げを出している、ということを数字として示さなければならない。そういうことを考えると、今の3割以上の月商を考えることが必要だと思うが、どう?」
私は具体的な数値目標を挙げた。これは飲食店をやっている時に経験したが、漠然と頑張るというだけでは未来が見えない。仕事だから具体的な数値目標が必要で、それを達成するためにいろいろ企画する、という意識と実践が必要になる。
「そうね、私も同感だわ」
飲食店の時も一緒にやってきたので、こういう時の意識も共通部分が多い。だから、こういった話をすると現状をきちんと分析して意見を出す。
「予約の様子を見ると、まだ枠に余裕があるわね。そこが上手く埋まっていけば3割アップは可能でしょうね」
「ただ、枠が埋まってきて余裕がなくなると、お断り、あるいは時間をずらしていただくようになるけど、それで結果的に予約されない、ということも出てくるね」
私が3割アップを言ったのだが、そのためには枠をきちんと埋めていくことが必要だ。それは当然理解しているが、人から言われるとその問題点のほうを考えてしまう。だから、自分も同様のことを考えていながら別の意見を言うことになる。
「でも、予約でしっかり埋めるということが売り上げアップになるし、その意識がなければ数字は伸びないわよ」
自分の中でも理解していたことだから、この点に関してこれ以上議論する必要はない。
「じゃあ、早くそうなるようにいろいろ手を打ち、予約でお断りするような状況になり、そこで受けられなかった方を2号店に送れるようにするといいね」
私は美津子の顔を見ながら笑顔で言った。
「そうなると、ある程度数字が上がってきたら、2号店のためと本店の補充のために、スタッフの募集が必要になるね」
2号店は私が行くか美津子になるかはまだ分からないとしても、人手は必要になる。その人件費の捻出のためにも売り上げのアップは必須の課題になった。
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