第3話 意外な彼女の一面
——同棲生活2日目 某日火曜日 19:00——
仕事がおわり、僕は買い出しを済ませて、主任のマンションに戻ってきた。
コンビニは近くにあるものの、スーパーは近くになかったので結構時間がかかってしまう。
掃除道具やゴミ袋の予備も集めて買ったので結構な大荷物になった。
「ただいまー、うわぁぁぁ!?」
部屋のドアを開けて入った時、そこには廊下で倒れている大神主任の姿がある。
一瞬、死んでいるかと思うほどに動かなかったがプルプル震えながら、主任が顔をあげた。
涙目で弱弱しく、一言告げる。
「宇佐美くぅん……と、といれ、つれてってぇ……」
「ああ!? ごめんなさいっ! すぐにやります!」
僕は荷物を玄関にある下駄箱の上に置いて急いで主任をトイレへと連れて行った。
◇ ◇ ◇
「ああ、うん……先ほどのは聞かなかったことにしてくれ」
「え、ええっと何のことーかーなぁー。あ、パスタはどうです? お口にあいましたか?」
主任は顔を真っ赤にして俯きつつパスタをフォークでグルグル回していた。
照れている姿はいつものキリっとした様子と違って、可愛く思える。
僕は主任の尊厳を守るように話題をそらした。
「宇佐美クン。パスタは美味しい。レンジで簡単に作れるなんて知らなかた……でも、そうじゃない! そうじゃないんだ!」
真っ赤になってどうしたらいいのか分からずに騒ぎ始める主任だったが、片足のこともあってか大きく動けないようである。
「へ、へんだろ? 私がああいうことを言うのは……」
ボリュームのあるクセ毛を指でいじりながら、主任は力なさげに話し始めた。
昨日はこんな姿を見せていたなかったので、僕といる時は仕事モードになっていたと今更ながらに思う。
「あ、あの! このことを僕は他に言いませんからっ! 主任……いや、大神さんは大神さんのままでいてください!」
「わかった。それじゃあ、今後は下の名前で呼んで、欲しい」
「はい。ええっと僕、フルネーム知らないんですよね……」
「大神 まりあだ。似合わない名前だから、あまり名乗らないがな……」
「じゃあ、代わりに僕も……宇佐美 藤十郎です。似合っていないですよね」
お互いに顔を見合わせてから、ぷふぅっとどちらからともなく笑った。
似合わない名前同士、ある種お似合いなのかもしれない。
「では、食べようか、藤十郎」
「はい、まりあさん」
この日から僕らは仕事以外ではお互いの名前で呼び合うようになった。
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読んでくださりありがとうございました。
キリッとした部長の弱点を見つけた時ってワクワクがありますよね?
同じような癖を持っている方が読んでもらっているようで、嬉しいです!
1万文字以内でおわるようにちょうせいしつつ書いていきます!
↓カクコン10参加作品まとめ↓長編もあり。
https://kakuyomu.jp/users/masato_tachibana/collections/16818093090845723952
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