第18話 いやです、断じてわたくしは嫌ですっ! 盧々の家の明玉Side
ったく死んでほしいわ。
あの地味な済々の姫には……。
今日、うちの
詩吟、琴、裁縫、料理、いずれの教室でも優秀だったけれど、あの姫は傷物じゃなかったの?
あんな顔もそこそこ、体つきもそこそこな地味な傷物姫が第一妃になっては……。
末席のあの花蓮が未来の皇后になる……。
いやです、断じてわたくしは嫌ですっ!
わたくしがどれほどの努力を重ねてきたと思っているのっ!
あのいずれの教室でも優秀だった地味な傷物姫は、嫁ぎ先がないからと必死で済々の家が総力をあげて花嫁修行を行わせたと聞いていたわ……。
だから、その傷物故の血の滲むような努力のなせる成果だと思って、大目に見ようと思っていたのに、なんであの地味姫は鷹宮に愛されちゃっているの?
この世はどうなっているのよっ!?
傷物って話は、全くの嘘だって言うのかしら?
いや?
あの地味姫には、私より魅力があるっていうことになるのかしら?
泣けてくるわ……。
鷹宮様にあんな牽制されたら、手を出せないじゃないっ。
誰か先走って殺してくれるのじゃないかと一瞬期待していたけれど、どの家もあれじゃあ手を出さないわ。
こうなったら、第四の妃にでもなってからでも遅くないわ。
いつか、あの地味姫を井戸にでも蹴り落としてやろうかしら?
「とんそくっ!」
「しゅうまいっ!」
「栗まんじゅうっ!」
あぁ、傷物以外の悪口を思いつけない……。
私としたら語彙力の無さに自分が恥ずかしい……。
悪口ぐらいビシッと決められないと。
だから、あんな最下層地味傷物姫に愛しの鷹宮さまをかっさらわれる憂き目にあうのよ……。
入内してから
鷹宮様の趣味がわかんないわ……。
相思相愛なのかしら……。
あの傷物地味姫は、入内した時はまさか自分が入内できるなんてって感じで謙虚に感動していたじゃない?
右も左も分からない傷物姫を、冥々の姫なんて、優しく導いてくれていたじゃない?
なんで、あの我らが妃候補階級のてっぺんに君臨する、夜々の今世最高美女の
中の下の私からしたら、全く納得がいかないわ……。
まるで下剋上じゃないっ。
美しさ、気立、いずれも順位でも圏外の地味な傷物姫がなんでてっぺん取れちゃうの……。
我が国の未来の最高権力者も同然になったのよ、あの済々の地味姫が……。
明日から、心を入れ替えて第四の妃にでも引っかからないかと性根をいれて頑張るわ。
うちの虞々の家の者たちはなぜか逆に気合が入っていたけれど……。
家の皆は、美しさと選抜の儀の順位だけが鷹宮に愛される基準ではないとはっきりしたと、逆に張り切っていたわ……。
父上からも激励の文が先ほど届いたくらいよ……。
美しさが基準でなければ、選ばれる可能性ありと周囲が盛り上がれば盛り上がるほど、わたくしの心が複雑になるのよ……。
最下位からのてっぺん奪取は、我が国の宮廷が始まって以来の快挙だそう。
本当に複雑だわ。
絶対に友になどなれないわ。
苛立つのは、今日の鷹宮さまの隣で顔を赤らめていた花蓮姫はそこはかとない色気まで出てきていたことよっ!
一瞬、可愛く見えてしまった……。
目の錯覚でしょうけれど。
一体、どんな手を使ったら、そんなに愛されるのかしら?
あんな美男子に?
今世最高美男子どころではないわ。我が国始まって以来の美男子というお噂よ、鷹宮さまは。
あの色気漂う今日の鷹宮様のお姿に、わたくし、一撃されてしまい、一生、他の方のお姿が目に入らないように思いますわ……。
選抜の儀、21位の盧々の家の
鷹宮の妃候補選抜の儀は、誰にとっても予期せぬ展開になったようだ。
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