運命の再会?!

愛菜

【五年ぶりの再会 神谷さん編】

毎日が楽しかったあの頃…何をするにもみんなの笑顔がそこにはあった。


大人になった今は、もう笑っていられないくらい毎日がただただ忙しなく過ぎていく。


*・゜゚・*:.。..。.:*・*:.。. .。.:*・゜゚・**:.。. .。.:*・゜゚・*


この日は、仕事が終わり、週末だったため、いつも住んでるマンションではなく実家まで、職場から電車で帰ろうとしていた。


大学を卒業し、社会人一年目の私は、地元の駅に着き、送迎を頼んでいた母と改札で待ち合わせていた。


改札の入り口を出て、母と合流し、車まで向かおうとしていた時に神谷さんを発見した。


神谷さんとは、学生時代通っていた塾の先生で、親よりも話しやすく、信頼し大好きだった60代の男性である。


そして10メートルくらいの距離では、神谷さんは、まだ私に気付いてないようだった。


それもそのはず、私は五年前に比べれば、体型は10キロ太り、髪型もショートヘアーからロングヘアーになっていたのだ。


シルエットだけでは気付くはずがない。おまけに化粧もしている。


だがしかし、私は神谷さんに会えた喜びで、思わず


「めっちゃ会いたかったです〜」


と、五年振りとは思えぬ距離感で、意気揚々と近づいて行ってしまった。


神谷さんは一瞬 ? だったが、目の前に来た時に、ようやく私に気付いたようだった。


その時、神谷さんは「お母さん?」と、後ろにいた母のことを聞いた。


たぶん、おそらく私の母は娘が60代のおじさんに意気揚々と“会いたい“と近付いていったので、気になって、神谷さんをガン見していたのだろうなと思った。


だが、そんなことは私にはどうでも良く、そしてまた私は「めっちゃ会いたかったです〜」と、また言ってしまった。


実は実家に帰る前日に、神谷さんに会いたいと思っていたので、本当に神谷さんに会えた喜びで、思わず心の声が漏れてしまったのだ。


すると神谷さんも「僕も会いたかったよ」と言った。


だが、その目は死んでいた。


この五年の間、神谷さんは何十年と続けた職を失いかけていた。数年前のコロナの影響で塾の生徒が減り、経営難になっているようだ。そして、やはり仕事が大変なのか、目が死んだのだ。


きっと子供達との向き合い方や、経営のことを考えると苦しくなるのではないか、と想像した。


そんな神谷さんでもお構いなしに、その日私はただ、「めっちゃ会いたかったです〜」を何度も何度も連発した。


そして、当時のいつものように、神谷さんが「今もワンピース読んどるんかぁ〜?」と聞いてきたので、とても嬉しかった。


「新刊出たね」と、そのままそっくり当時よく話していたことを言った。


その後、お互いその場を去ったので、あまり長くは話せなかった。


その夜、私は神谷さんのことを思った。五年の月日が流れたが、神谷さんの見た目は全く変わっていなかった。


かたや私の変貌振りに、神谷さんは私のことをどう思ったのだろうか?と気になりながら私は眠りについた。


今は、忙しない都会にいるけど、実家に帰れば駅も何も同じあの頃のままに戻れる。


先生の状況も実は少し変わっているんだけど、地元に帰ればそこには、昔と変わらない姿があった。


きっと誰にもほっと出来る居場所が必ずある。


この日の二人の再会の瞬間が、お互いの日々の癒しになっていれば良いなと切に思う。


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