第6話

 ダンジョンが発生し始めたのが50年以上前になるからか、表記が若干現在基準だと伝わりにくい、伝えにくいんだよな。特に田川さんの場合、俺との年齢差もすごいから説明伝えられるかな?コレ。


「それじゃ、ステータス表記の詳しい説明に入ります。

 えっと。まずは位階ですね。Lv(レベル)って言った方が伝わりますかね?…ですよね。どのくらいの強さ、と言うよりトータルでどのくらい能力を持ってるかを表します。あくまで基準なんで個々人によって変わりますけど。基本的に高い方がアビリティと呼ばれる異能の数が多い、その上質も高い、と思ってもらって構いません。

 次は、…ちょっととばして膂力から。文字通り、力の強さを表します。数値が高いほど筋肉に関係なく力が強くなります。

 耐久。体の丈夫さですね。高いほど頑丈になります。物理的にも、病気や毒なんかにも。

 精神。魔術系のアビリティが強くなります。心の強さ、安定性なんかも増します。

 敏捷。反応速度、と言うか思考速度が上がります。物理的な…足の速さみたいなのはこれに加えて膂力の値も必要です。

 器用。一言で言えば精密性が上がります。もうちょい正確に言えば、自分のイメージ通りに体と異能を動かすための能力です。これと精神・敏捷の値が高いと、頭の回転が早くなると言われてます」


 田川さんが頷いたり、眉をひそめたりするのを確認しつつ説明を続ける。


「それで次に属性値なんですが、2ページ目でアビリティを習得する時に使います。アビリティは自分が持ってる4つの属性に準拠したものを覚えられます。というより、自分の持っている属性以外のアビリティは覚えられません。

 この4つの属性、武器属性・防具属性・魔術属性そして自由属性の4種からそれぞれ1つづつ各人持っていますが、ひとつ!重要な点として!アビリティ・自由属性およびLvについては、人に教えない・訊ねないという不文律があります」

「なぜですか?」

「対人戦の手札・切り札になるからです。後、Lv等は普通にプライバシー扱いです」


 田川さんが顔をしかめる。それを見て阿部さんが口を挟んでくる。


「ダンジョンでの活動中、人の目がほとんど無い場所ですし、ダイバーの方は戦闘が専門の方が多いですから。残念なことに何らかの対人トラブルが起きた際は、そういった手段が採られがちです」

「滅多にいないですけど、他人の成果を奪おうとするヤツも、やっぱりいるにはいます」

「……やっぱり、そういうことありますか?」

「「残念ながら」」


 阿部さんと声を合わせて肯定する。

 ケンカの方はどうしたって、ままある事ではある。2人以上いればすれ違いやゆずり合いができない場面では、どうしたって発生するものである。にんげんだもの。 ちどり。

 強奪事件の方は本当にめったに発生しない。

 本当に浅い層での場合、あがりなんかたかが知れてるし、バイトの形でダイブしてるやつのが多いから大企業を敵に回しかねないし。

 ちょっと深くなるとレベル(位階というより強さ)的に手を出しづらくなる。というか手を出せるなら普通にモンスター狩ってた方がいい。

 さらにケンカ・強奪両方で言えることだが、ひとたびそういった問題を起こせば、探協(探索協会)に目を付けられダンジョンに入れなくなることもある。


 閑話休題


「で、ステータスの続きですが、魔力。アビリティを使うのに使うエネルギーです。

 最後にいっっっち番、重要な、生命。

 文字通り、言葉通り、外付けの生命力です。

 これは言わば、車のガソリン、スマホの電池、スキューバダイビングのエアです。無くなったらというか無くなる前にダイブは終わらせるのが基本になります。無くなる前に補給する。補給できないなら帰還する。これ絶対」


 田川さんが真剣にうなずく。阿部さんも深くうなずいている。


「この生命がある限り、普段の体力にかかわらず、元気に活動できます。病気してようが関係ないです。もっともその場合は減りが早いですが。というか完治するまで強制消費されます。

 さらに、怪我の回復力にも変換できます。むしろ病気の治療よりはそちらが本命ですね。

 10だと段ボールで指切ったくらい、もしかしたら包丁で切ったくらい?を治せる程度ですが、300もあればちょっと骨にヒビ入ったくらいなら一瞬で治ります。さらにちょっと重症な風邪くらいならダンジョン入った瞬間に治ります。

 万も超えてくると、部位の大きさにもよりますが欠損の完治なんかも余裕です。指とか。ウソかマコトか、100万を超えると、頭部をつぶされても生えてきたとか聞きます」

「それはさすがにウソですよね!?」

「さぁ?さすがに生命100万オーバーなんて見たことないので。あくまで噂です」


 阿部さんも首をひねってらっしゃる。噂自体は同様に聞いた事が在るのだろう。半信半疑といった有り様だ。

 ただ、俺も阿部さんもステータスという代物しろものの非常識ぐあいを知っているので、完全には否定できない。もしかしたら、が共通認識となる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る