第5話
職員さんに付いていくと、やがて地面に開いた穴と、そこに大人数人が並んで楽に下りれるくらいの階段が見えてきた。駅のホームへの大きめの昇降口ぐらいはある。
その手前には空港の荷物検査所の様になっており、上り下りする人間を対象に手荷物検査をしている。バッグ等の中を開いて何が入っているかを軽く確認。ベルトコンベアの上に荷物を載せる光景は同じであるが、レントゲンのような形で荷物の魔力の質と量を測っている。
「そうしましたら、こちらのベルトコンベアに装備品を置いてください」
手荷物検査の人に促されて、コンベアに荷物を載せる。
これはダンジョンに入場する人間とダンジョン産のアイテムの地上への持ち込みを厳しく管理するために行われている。
ステータスを持った人間やダンジョン産のアイテムまたはその加工品は、地上でも微量ながら魔力を放つ。これを利用して入場の前に魔力量の放ち方をレントゲン写真の様に登録しておき、出てきた時との差でどれだけの危険度のアイテムを持ち出したかチェックするのである。
魔力量が高いアイテムほど効果が高く、悪用されれば危険なものが多い。出てきた時に質ないしは量において異常な魔力量が感知されれば一旦回収。検閲ののちに問題がなければ返却の形となる。
ダイバー自体も魔力検査を一応するだけで通される。一応というのは止められることがほぼないからだ。入場時のチェックで厳しいのは人の出入りだけであり、持ち込んだアイテムをダンジョン内でどう使おうと基本は自己責任だからだ。
これには周りに迷惑かけるような使い方をしたとしても、それにより迷惑を被った人間がどういう対処をしても自己責任である事も意味する。
「どうぞこちらへ」
手荷物検査を通過した後、迷わず階段を下りていく職員さんの少し後ろをやはり付いて行く。
するとほどなく、SF映画のワープポータルで見るようなウニョッてる謎空間が見えてくる。その前で職員さんはこちらを振り返る。
「ここから先がダンジョンと呼ばれる異界となります。
田川様。ダンジョンにご入場なされますと、入場者全員にステータスと呼ばれる特殊能力が発生します。初めての方にはステータスと、ダンジョンで安全を確保するための基礎知識をご説明させて頂いております。
今回、その説明をさせて頂く、…申し遅れました、わたくし、阿部と申します。
説明、聞いて判らない、疑問に思う点がございましたら、ご自身の身の安全に関わる事となります。どうぞご遠慮なさらず、ご質問ください」
「はい、よろしくお願いします」
「それでは入場いたしましょう。どうぞ、付いて来てください」
「はい」
なんかさっきから田川さんがよろしくお願いしますBOTになってるな。くだらんことを考えつつ職員さん改め、阿部さんの後に続き、下り階段の謎空間に文字通り足を踏み入れる。
田川さんは少しおっかなびっくり下りている。ま、初めてはそんなもんだろう。謎空間からさらに3,4m下りると阿部さんが待っていた。
「まずはこちらの壁に埋め込まれた水晶玉に触れてください」
阿部さんに促され田川さんが階段すぐ脇の水晶に触れる。
「お疲れ様です。早速ですが、説明始めさせてもよろしいでしょうか?」
「大丈夫です。お願いします」
阿部さんが一つ頷くと、こちらを見てくる。なんやろ?
「ステータスに関しては、一緒にお仕事される方からご説明なさいますか?立会いの下であれば、ステータスに関しては協会からの説明でなくても構いません。後々、田川様から相談を受けやすい様、お仕事ご一緒される方からご説明なさっても好いかと思われます」
う~ん。面倒だけどすでにたらい回しが起きてんだよな。受けとくか。あと、三澄、渡部は絶許。
「お言葉に甘えさせてもらいます。まずは軽く用語の説明ですね。ダンジョンに入る事を、謎空間に潜って入るからダイブ。探索者はダイバー。ダンジョン内で使える外付け超能力がステータスになります」
「ステータスの外付けというのは?」
「ん~と。自分自身の肉体の能力とは別に正しくプラスされる形で作用するからです」
実際に見てもらった方が早いか。
「自身の能力を見たいって考えながら、ステータスオープンって言ってみてください」
「ステータスオープン」
田川さんの前に曇りガラスでできたスクリーンボードのような物が出てくる。操作する前に注意せねばならんことがある。
「それがステータスボードです。まだ2ページ目は開かないようにしてください」
言いつつ、田川さんの横に並ぶ。逆隣りに阿部さんが来る。
ステータスボードにはこう表記されていた。
位階1
属性値:1
生命:10/10
魔力:10/10
膂力:0
耐久:0
精神:0
敏捷:0
器用:0
プランクのステータス、久しぶりに見たな。
「えーっと。1ページ目のステータスの表記にある位階と属性値以外の数値は、500で平均的な成人男性1人分って言われてます。ただみんな初めは10と0です。
で、それらは生命力やら筋出力やら表してるんですけど、その数値分が自身の素の肉体の能力にプラス、正しく加算、上乗せされる形で発揮されます。
だから『外付け』能力です」
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