第2話
うむ、大体の予定は聞き出せた。ならば今こそ媚びを売る時!!
「へへっ、そうしましたら旦那方、何時ものようにダイブへの随伴をお願いしてもよろしいザンショか?いえね、もちろん旦那方の都合のいい時だけで構いませんとも。えぇっ」
わざとらしく手揉みをしながらヘコヘコと頭を下げつつお願いしてみる。
「いや、最初からそのつもりだけど口調どうした?」
「いきなり
「むしろバカにしてない?」
ムムっ、トンでもない誤解が生じている。このままでは明るい友人利用計画が頓挫してしまうではないか。
「バカにだなんて、そんな、そんな。アッシは戦闘力のある旦那方に比べれば、月とスッポン。雲と泥。龍虎とミジンコってなもんでさぁ。身の程を弁えている憐れなアッシめに、どうかお情けを恵んでくだせぇ」
ここだ!憐れっぽく畳みかけるんだ!!
「よくそこまで卑屈になれるな」
「今日は一段と芸風が冴え渡っている」
「プライドの投げ売りも
プライドだとぉ?バカめ。
「プライドなんぞで腹は膨れん。金も貯まらん。東に強き者がいれば媚びを売りに行き、西に富める者がいれば遜って物を乞い、南に知恵ある者がいればへつらって顔を売りに行き、
北に
人生、いきるのって大変なんだぞ!
「さすがは八方美人を極めたとされる男」
「千方の風見鶏の二つ名は伊達ではないな」
「恐らく人と金で地獄を見てきた男だ。面構えが違う」
そんな会話を繰り広げた後で、具体的なスケジュールのすり合わせを行う。とは言え、基本、先の予定を
「それじゃ、明後日からの2日間は俺とB、Dの3人でダイブな。場所は卯の頭ダンジョンでいいか?遠征の準備もあるし近場がいい。ダイブの帰りに京淨寺寄るわ」
「もちろんでさぁ。アッシは付いて行かせていただけるだけで感謝感激アメアラレ。29、30日はお世話になりまさぁ」
「こっちもそれでいい。遠出するなら後半の3、4、5の方がやり易い。6までは無理だな。
あとお前はそろそろ口調を戻せ」
「3日使うなら普段行かないとこに行きたいな。1階から始めて切りのいいセーフエリアでキャンプ。
そろそろ本気でバカにしにきてるよね」
「わかったよ。それじゃ次は下っ端のチンピラやるね。…冗談だよ。
それ
ノーライセンスは入場するのに厳し目の制限が掛かってるけど、それはゲームで言えば、まだチュートリアルをクリアしてない状態と見做されているから。セミプロ資格って取ろうと思えば自動車免許ぐらいの難易度なんだよね。取得にかかる金額も、まぁ、実際それくらいだし。
「そしたら、いっそD太郎のライセンス取り行く?取れば1人でも潜れるようになるじゃん。実力的には全く問題無いわけだし」
「うん、いや、ごめん。多分おふくろの同意が取れない。バイトとか部活だと大人数だし経験者が必ず付いて回ることになってるからな。あんまり口出ししてこないんだけど。
単独になると絶対ダメらしい」
ダンジョン探索のバイト始める時も大分もめたしな。一人息子がわざわざ危険の多そうなバイトに、首ツッコもうとするっていうかしてるんだからしゃあないが。
わりと当たり前の話だが、ダンジョンライセンスは命の危険が付きまとうため、取得には18歳未満は親の同意がいる。ライセンス持ちだと1人でダンジョンに入れてしまうからだ。場合によっては受付で止められたりもするらしいが。
要は、俺は1人で無茶しそうとママンに思われているらしい。心外である。
「そう聞くとお前さん割と親不孝だよな。心配されてるの判っててやってるんだから」
「母一人、子一人での生活の中、子供は生活費や貯金のため心配かけながらダンジョンに潜る。互いのためを思ってすれ違ってるな。ホントはオレ達だけと潜るのも反対なんじゃないか?中層活動組の経験者ってことで浅層での活動だからギリギリ見逃してる感じだろ」
BとA男が単なる感想のような軽い批判のようなことを言ってくる。大体合ってるが。
だから俺なりに一線を守ってはいるのだが、そういう話でもないというのは判る。
ただ実際のところダンジョンの特に浅層は、キチンと節度さえ守ればそれほどの危険は無く、将来的に探索者で食っていけるようにしておける修練場になる。リスクは冒しすぎてもダメだが、将来のことを考えるなら許容範囲内のリスクというのも当然ある。
一先ず、今冒しているリスクは、母親とも検討を重ねたものなので覆す気はない。
A男が重ねて言ってくる。
「あんまり心配かけちゃだめだぞ。パーティ組んどいて言えた義理じゃないが」
「遊ぶ金欲しさにやった。今もあんまり反省してない」
「「「ダメだコイツ。早く何とかしないと」」」
どんな状況だって金は要るんだよ。俺の収入が無くなるのはおふくろも困るんだって。
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