第4話
予習って大事だよね。
先輩の小説を何度も読んだ僕になら、この国の軍隊の動きを予想出来る。
後はそれに合わせるだけ。
ね、簡単でしょ。
ある程度捌くと相手も警戒して攻撃が止まる。
その隙にサウトの持つ小説を指差す。
「あのさ。
その本は先輩が書いた物だけど、内容が本当の事だと証明出来ないと先輩がスパイだと言えないよね?」
「そんな事は確認済みだ」
「まさか女王のスリーサイズ如きで証明なんて緩いよ。
それぐらい僕なら目測で出来るね」
そう言って高みの見物をしてたティアの方を見る。
「上から84 ――」
「ちょっ!
公衆の面前ですよ!」
「その反応は当たりだね。
つまり中身が事実だとは確信出来ないね」
「そんな必要は無い」
「そっか。
じゃあ僕が読み上げるからもう一度確認してよ」
僕はいつも持ってる布教用の小説を取り出すと将軍の顔はわかりやすく青ざめた。
いざページを開いた時。
「待て!
お前の目的を聞こう」
「僕の目的?
それは先輩だよ」
「わかった。
その女を解放しよう」
なんか知らないけど、サウトは突然先輩を解放してくれた。
「カイく〜ん!」
先輩が両手を広げてこっちに走って来る。
もしかしてご褒美?
やったー。
僕も両手を広げると先輩が飛び込んで来たからしっかりと受け止めた。
◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆
展開早くて良くわからない内に解放された。
どうやら私はカイ君のおかげで助かったみたいだ。
拘束が解かれた瞬間、嬉しさのあまりカイ君に飛び込んでいた。
今なら勢いで頬にキスぐらいしてもいい。
私を抱き締めてるどさくさに紛れてお尻揉んでるのも許してあげる。
だからさ……
「それでサウトが前国王を殺した話だけどさ」
なんでそんな事言っちゃうの?
サウトは鬼の形相で睨んで来るし、ティアは驚きのあまり前のめりになってるよ。
「どう言う事!?」
「落ち着いてください女王様。
そやつの嘘です」
なんか修羅場の予感がするよ。
勘弁してよ。
大人しく帰ろうよ。
「おいバカ女」
「私をバカって言ったわね!」
なんかティアをバカ呼ばわりして怒らせるし。
これ別の意味で処刑されない?
「あいつはこれを見て先輩を攫ったの。
わかる?
嘘ならしないよね?」
「女王様。
騙されてはいけません。
ここに書かれている事は嘘です」
なんか主張が逆転してるし。
もう訳わかんなくなって来たよ。
カイ君は何をしたいんだ?
私は嬉しさのあまりカイ君を抱きついてしまったんだよ。
「カイ君。
なんで余計な事言っちゃうの?」
「先輩の作品を嘘呼ばわりなんて許せない」
「元々フィクションだよ」
「でも、ここに書いてる事は全て本当の事だよ」
「今はいいんだよ。
処刑を免れたんだから」
「先輩。
自分の作品にもっと自信を持ってよ」
「それとこれとは話が違うよ〜」
もう全身の力が抜けて来た。
カイ君に抱き締められて無かったら膝から崩れ落ちてたよ。
てか、いつまでお尻を揉んでる気?
「そいつは我が国を混乱させようとしている!
今すぐ殺せ!!」
ほら、サウトがキレたじゃないか。
せっかく処刑を免れたのに〜
「待った!」
今度は別の声がサウトの命令で動き出した軍隊が止まった。
「ティア様。
脱獄の罪は後で必ず償います。
だけど今だけはボクの言う事を信じてください。
この本に書かれている事は本当です」
ミズキだ。
あれ?ミズキは幽閉されてるはずだ。
と言うかミズキが持ってるのも私の小説だよね?
なんで持ってるの?
「女王様。
逆賊の言う事など信じてはいけません」
「往生際が悪いぞ将軍。
ボクはここに来る前に裏付けを取ってる。
証拠も充分にある」
ミズキとサウトの言葉の狭間でティアが揺れる。
そして軍隊も戸惑い止まった。
「ほら、カイ君。
君の所為で話が段々ややこしくなって来てるじゃないか」
「先輩。
いよいよクライマックスって感じだよ」
なんで君はそんなに目をキラキラ輝かせていられるの?
私には理解不能だよ。
「ククク。
どうやらここが潮時のようだな」
サウトが不適に笑う。
そしてフワリと浮かび上がった。
「少し早いが全て消し炭にしてやる」
サウトが天に手を翳す。
その手の先に火球が生まれ段々と大きくなって行く。
サウトはこの国1番の魔術師でもある。
彼の魔術に対抗出来る者は今はいない。
「どうするんだよカイ君!
かなりやばい状況だよ」
「怖い?
じゃあ抱き締めてあげるね」
「冗談言ってる場合じゃないよ!」
バンッ!!
突然すぐ後ろから破裂音がして、ドサっと何か落ちる音がした。
もしかして銃声?
「先輩は見ない方がいいよ」
振り向こうとしたら頭を抑えられて振り向けない。
そして相変わらずお尻は揉まれてる。
てかスカートの中に手を入れやがった。
え!?
パンツの中にまで!?
なんか込み上げて来るし。
力が抜けてくるし。
頭がボーっとしてくる。
「カイ君。
いくらなんでも。
んっ!?」
「先輩エッロ」
その言葉で私は我を返る。
そして羞恥心と怒りが一気に湧き上がってカイ君の頬をぶん殴っていた。
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