第2話
攫われた私は後ろ手を拘束されて、いかにも玉座って感じの前に正座させられていた。
ご丁寧に
「本当にスパイなの?」
玉座に座る女王ティアが不思議そうに私を見る。
傍にいる私を攫った男、軍隊長のサウト将軍が一冊の小説を見せた。
「女王様。
これが証拠です。
ここには我が国の事が細かく書かれています。
それも内部の事まで事細かく」
「本当に?」
ティアが疑わしそうな目で見てる前でサウトはページを開いた。
「ここに女王様の事が書かれています。
ティア・アリエッタ。
17歳。
身長163cm、体重51.7kg。
スリーサイズは上から――」
「わー!?
なんで知ってるの!?」
「ここに書いてあります」
「その……
スリーサイズも合っているの?」
「私は存じ上げませんので」
「ちょっと見せて」
ティア女王は恐る恐る将軍に見せられたページを見る。
すぐに顔を赤くして泣きそうな目で私を睨んだ。
発育良くバランスの良い見た目と私が書いた物と一致していたのだろう。
そう、私が書いた小説と。
ティアだけでは無い。
私がここに居る全員の名前を把握している。
それも全部私の書いた小説と全く一緒だからだ。
スパイなんてとんでもない。
私からしたら書いた物が現実になったとしか言いようが無い。
「明日処刑を行います。
そいつを牢に入れておけ」
私は軍人に連れられ牢に入れられた。
◇
私は牢の端っこで1人蹲って丸くなる。
なんで小説を書いただけで処刑される事になってるの?
意味不明だよ。
寂しくて怖くてもう泣きそうだよ。
「先輩。
元気無いね」
「え!カイ君!?
なんでここに!?」
私は驚いて横を見るといるはずの無いカイ君が座っていた。
どうして?
軽くパニックだよ。
「なんでって?
先輩を助けに来たんだよ」
「君は本物のカイ君かい?」
「何言ってるの先輩。
先輩大好きファン第一号の僕だよ」
この気楽な物言い。
一切照れる事なく揶揄うように私を好きだと言う感じ。
間違い無くカイ君だ。
なんだか凄く安心感が出て来た。
「どうやって来たんだい?
ここは異世界なんだよ」
「異世界は受け入れたんだ」
「ここまで一緒だったら認めるしか無いよ」
「本当に先輩の書いた世界と一緒だよね」
なんで目を輝かせてるんだ?
なんか楽しんで無いかい?
「今すぐ帰ろう」
「無理だよ」
「なんで?」
「ここ牢屋だよ」
「カイ君も捕まったって事?」
「そんなの見たら分かるじゃないか」
なんでそんなに気楽なんだよ!
さっきまでの安心感を返せ!
「なら早く出る方法を考えよう」
「慌てなくても明日には出れるよ」
「そうなったら私は処刑されるんだよ!」
「自分の書いた小説の中で処刑されるとか笑えるね」
「笑えないよ!」
「アハハハハハ」
「大爆笑するな!」
この野郎〜
指さして大爆笑しやがって!
こいつ本当に私の事好きなのか?
「カイ君。
私は明日処刑されるんだよ」
「さっきも聞いたよ」
「なんとも思わないのかい?」
「だから僕が助けに来たんだよ」
「一緒に捕まってるじゃないか」
「よく考えてみてよ。
ここは異世界。
超の中でも超が付くほどアウェイ。
そりゃ捕まりもするよ」
「やっぱりダメじゃないか!」
「まあ、大船に乗ったつもりでいてよ」
「何処に船があるって言うんだい!?」
「そんなにイライラしても仕方ないよ。
シャワーでも浴びて落ち着いたらどう?」
「浴び無いよ!」
この牢屋にはトイレとシャワーが付いている。
だけど中で何か悪い事が出来ない様にスケルトンで中が丸見えだ。
そう設定したのも私。
お色気要素に使おうと思って設定したのが仇になるとは夢にも思わなかった。
「大丈夫だよ。
巡回の時間はまだ先だから誰にも見られないよ」
「君が居るだろ君が!」
「逆に僕しか居ないよ」
「君は見ないって約束出来るの?」
「もちろん見るよ」
「そう言うと思ったよ!」
「ガッツリと見るね」
「よくも堂々と言えるね!」
「世界一の美人のシャワータイムを見れるのに見ないとか逆に失礼でしょ?」
「そんな意味の無い気遣いは捨てたまえ!」
「わかったよ。
じゃあ気遣い無くガン見するからシャワーをどうぞ」
「ああ言ったらこう言うとは正にこの事だね」
本当に腹立つ後輩だよ。
カイ君の事だから本当にガン見されてしまいそうだ。
今日はシャワーを我慢するしか無さそうだ。
「人生最後の日になるかも知れないのにシャワーすら浴びれないなんて……」
「人生最後になるなら僕に見せてよ」
こいつ!
言わせておけば好き勝手言いやがって!
「死んだら化けて出てやるからな」
「死んだら僕に会いに来てくれるの。
やったー」
なんだその無駄なポジティブ思考。
こっちの気も知らないで。
「もういい。
私は寝る」
「先輩は今夜は冷えるから僕が温めてあげるね」
ベットに向かおうとしたらカイ君も立ち上がろうとした。
こいつ一緒に寝る気か!?
「何処に行く気だい?」
「ベットで先輩を温めてあげるんだよ」
「君はそこから動くな!
私が寝てる間に少しでも近づいたらぶん殴るからね!」
「はーい」
なんでそこは素直なんだよ!
私を温めてくれるんじゃなかったのか?
いや、ダメだダメだ。
なんか頭がこんがらがってきたよ。
私はどっと疲れを感じながらベットに潜り込んだ。
「おやすみ先輩」
カイ君の声を聞いた途端瞼が重くなる。
あれ?
そう言えばなんでカイ君は女牢にいるの?
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